「延納にしようと思うのですが、何から準備すればいいですか?」――ご相談の中で、時折いただく質問です。近年は路線価や上場株式の価格上昇により納税資金が不足して延納を選択するケースが出てきているようです。
延納は、相続税を分割で納められる制度です。ただ、「払えないので分けてください」とお願いすれば認められる、というものではありません。条件があり、申告期限までに書類と担保をそろえる必要があります。
前回の記事で延納という選択肢を知った方に向けて、今回は延納を選んだあとの手続きの流れを順番に整理します。思っていたより準備に時間がかかる、と感じていただければ十分です。

延納できる条件――「払えない分」までが対象
相続税を延納するには、次の条件を満たす必要があります。
- 相続税額が10万円を超えていること
- 金銭で一括して納めるのが難しく、その難しい金額の範囲内であること
- 申告期限までに申請すること
- 原則として、担保を出すこと
「難しい」かどうかは、遺産だけではなく相続人自身の手元の現金や預貯金から、当面の生活費や事業の運転資金を差し引いて計算します。延納できるのは、その足りない分までです。預貯金がある程度ある場合は、思ったほど延納できる額が残らないこともあります。
もう一つ大切なのが遺産分割です。誰がどの財産を相続するかが決まっていないと、各人の納める税額も、担保に出す財産も決まりません。申告期限までに分割が確定していることが、延納の準備のスタートラインと考えておきましょう。

申請の流れと担保――期限までに何をそろえるか
延納は、相続税の申告書と一緒に、延納申請書、金銭納付を困難とする理由書(金銭で納めるのが難しい理由を書いた書類)、担保に関する書類を出して申請します。延納申請書は、相続人ごとに作成して提出します。
理由書には、預貯金の残高や今後の支出の見込みなどを細かく書き、根拠となる資料をそろえておきましょう。
相続人の預金通帳の写しなどは最初から一緒に出しておくと、あとから追加で求められずに済みます。
担保にできるのは、不動産、国債などの有価証券、保証人の保証などです。相続した財産でなくてもかまいません。なお、延納する税額が100万円以下で、延納期間が3年以下の場合は、担保は要りません。
不動産を担保に出す場合は、相続登記後の登記事項証明書(登記簿の内容を証明する書類)など、登記まわりの書類が必要です。
準備が申告期限に間に合わないときは、届出をすれば、担保提供関係書類の提出期限を延ばすことができます(1回3か月まで、最長6か月)。ただし、延納申請書そのものの期限は延びません。
担保の準備で時間がかかりやすいのは、共有名義の不動産や、すでに抵当権(借入れの担保として金融機関がつける権利)がついている不動産です。ほかの共有者や金融機関とのやりとりが必要になるためです。
申請のあとは、許可・却下の判断まで通常3か月ほどかかります。延納は国税局の専門部署の管轄となることが多く、相談や審査もそちらで対応となります。申請前に、税務署の担当者に一度相談して国税局の担当者に連絡して確認等をしておくのがおすすめです。
延納が始まってから――利子税、繰上げ、途中で変える
延納が認められると、原則として年1回の分割で納めていきます。期間は、相続財産のうち不動産などが占める割合で変わり、長い場合は最長20年です。
分割の期間中は、利子税(延納した税額にかかる利息のようなもの)がかかります。
法律上の割合は年3.6%〜6.0%などと高めに見えますが、実際には市中金利に合わせて引き下げた特例の割合が使われ、令和8年1月1日現在は年1%前後以下の水準です(参考:国税庁「No.4211 相続税の延納」)。
途中で余裕ができたら、繰り上げて納めることができます。前回触れた「延納でつなぎ、不動産が売れたら繰り上げる」は、この形です。
延納での支払いが続けられなくなった場合は、申告期限から10年以内であれば、物納(財産そのもので納めること)に切り替えられる場合があります。
一方、支払いが滞ると延納が取り消され、残りを一括で求められることがあります。
まとめ
- 延納できるのは、現金で納められない分まで。申告期限までに遺産分割を確定させておく
- 延納申請書は相続人ごと。理由書は細かく書き、通帳の写しなど根拠資料をそろえる
- 担保の書類は提出期限を延ばせるが、延納申請書の期限は延びない。事前に税務署へ相談を
- 利子税はかかるが、いまの割合は低い。余裕ができたら繰り上げて納められる
相続税の概算が出たら、担保に出せそうな不動産の登記簿を取り寄せて、名義や抵当権を確かめておきましょう。
延納の手続きに不安がある方は、申告期限に余裕のあるうちに早めに税理士にご相談をいただくのがおすすめです。
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