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財産を寄付すると、相続税はどうなる?――「遺言で寄付」と「相続人が寄付」2つのパターンと、見落としやすい所得税

「父が大事にしていた財産の一部を、お世話になった大学に寄付したい」「自分の財産を、遺言で少しだけ社会に返したい」。相続のご相談で、ときどきうかがうお話です。

財産の寄付には相続税の優遇があります。ただ、現金ではなく金や不動産などの「モノ」で寄付すると、思わぬところで所得税がかかることがあります。

今日は、寄付をしたいと思ったときに損をしないために、知っておきたい税金の話を整理します。

目次

寄付には2つのパターンがあります

亡くなった方の財産を寄付するには、大きく分けて次の2つの方法があります。

  • パターン① 遺言で、ご本人が寄付先と財産を決めておく(遺贈寄付)
  • パターン② 相続人が、相続した財産の中から寄付する

どちらも寄付であることに変わりはありませんが、税金の扱いや手続きの流れ、そして「誰の意思で寄付するのか」が違います。順に見ていきます。

パターン① 遺言で寄付する(遺贈寄付)

遺言で、公益法人や自治体などに財産を遺すことを「遺贈寄付」といいます。財産を受け取るのは法人ですので、その財産には原則として相続税がかかりません。

「相続税がかからない=税金がかからない」ではありません

注意したいのは所得税です。現金以外の財産(不動産、株式、金地金など)を法人に遺贈すると、亡くなった方がその財産を時価で売ったものとみなされます(みなし譲渡、所得税法59条)。

買ったときより値上がりしている財産であれば、その含み益に所得税がかかります。この所得税は亡くなった方の準確定申告で計算し、納めるのは相続人です。

寄付した財産は相続人の手元に残らないのに、税金だけが回ってくる、ということが起こりえます。

国や地方公共団体への寄付や、国税庁長官の承認を受けた公益法人などへの寄付には、この所得税を非課税にする仕組みがあります(租税特別措置法40条)。

ただし承認には要件と手続きがあり、時間もかかります。遺言を書く段階から、「どの財産を、どこに遺すか」を考えておくことが大切です。

公益法人等でも遺贈寄付を受け付けているところが多いですが可能であれば不動産や株式は避けてほしいという要望があるケースが多い印象です。

事前に相談ができる場合には遺贈寄付の意思を確実なものにするためにご相談をしておかれるのが望ましいです。

パターン② 相続人が相続財産から寄付する

相続人が、相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに国・地方公共団体・特定の公益法人・認定NPO法人などに寄付すると、その寄付した財産には相続税がかかりません(租税特別措置法70条)。

押さえておきたい注意点

  • 「申告期限までに」寄付すること。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割の話し合いが長引くと、間に合わないことがあります。
  • 寄付先が対象の法人かどうかを、寄付の前に確認すること。公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人、一定の学校法人などが対象で、どこでも良いわけではありません。
  • 寄付から2年以内に、寄付先が対象の法人でなくなったり、寄付した財産が公益目的の事業に使われていなかったりすると、非課税は受けられなくなります。
  • 相続人や親族の相続税・贈与税の負担を不当に減らす結果になる寄付は、対象外です。

手続きとしては、相続税の申告書に特例を受ける旨と、寄付した財産の明細を記載し、寄付先が発行する受領の証明書などを添付します。また、寄付をした相続人ご自身は、所得税の寄附金控除を受けられる場合もあります。

なお、相続人が相続した金や不動産を、現物のまま公益法人などに寄付する場合は、今度は相続人ご自身にみなし譲渡の所得税がかかることがあります。

相続税が非課税になっても、所得税は別に考える必要がある点はパターン①と同じです。

金(ゴールド)など値上がりした財産は「現物か、現金か」を比べてみるのも選択肢

金地金は、買ったときより値上がりしていることが多く、みなし譲渡で所得税がかかりやすい財産の代表です。

40条の非課税承認は、寄付先がその財産を公益目的の事業に直接使うことが前提になります。金地金のように「売って現金にして使う」財産は、承認のハードルが高くなりやすいと考えておいたほうがよいでしょう。

そこで、現物ではなく現金で寄付するという考え方もあります。

  • 相続財産に預金があれば、預金から寄付し、金は手元に残す。
  • 金を売って現金にする場合、譲渡所得の所得税はかかりますが、相続税の申告期限から3年以内の売却であれば、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例があります(租税特別措置法39条)。
  • 買ったときの金額が分からない場合は、売却額の5%を取得費とする扱いになります。購入時の記録が残っているか確認しておきましょう。
  • 相続した財産を売った代金で寄付する場合は、相続財産そのものの寄付ではないため、70条の非課税の対象にならないとされている点にも注意が必要です。

現物で寄付するか、現金で寄付するか。どちらが有利かは、含み益の大きさや寄付先によって変わりますので、寄付の前に試算されることをおすすめします。

ご本人の意思を確実に残すなら、遺言での寄付を

2つのパターンを比べると、ご本人の「この財産を、ここに寄付したい」という意思がより反映されやすいのは、遺言による寄付です。

相続人が寄付するパターンでは、寄付するかどうか、どこにいくら寄付するかを決めるのは相続人です。ご本人が生前に希望を伝えていても、相続人の間で考えが分かれたり、遺産分割が長引いて申告期限に間に合わなかったりすれば、その希望は実現しないこともあります。

遺言で寄付先と財産を決めておけば、ご本人の意思が形として残ります。遺言執行者を定めておくと、手続きもスムーズに進みます。遺言を書く前には、次の点を確認しておくと安心です。

  • 寄付先がその財産を受け取ってくれるか(不動産などは受け入れていない団体もあります)
  • 相続人の遺留分に配慮した内容になっているか
  • 現物で遺す場合、みなし譲渡の所得税がどのくらいになりそうか

遺贈だけでなく、生前の寄付も選択肢に

寄付は、亡くなった後だけのものではありません。ご興味があれば、生前の寄付もあわせて検討してみてください。

生前に寄付すると、寄付先の活動をご自身の目で見届けることができます。税金の面でも、寄付した年の所得税で寄附金控除を受けられる場合があり、寄付した分だけ将来の相続財産も減ります。

ただし、生前でも現物(金や不動産、株式など)を法人に寄付すると、みなし譲渡の考え方は同じです。生前の寄付と遺言による寄付をどう組み合わせるか、手元に残しておきたい財産とのバランスも含めて考えておくとよいでしょう。

まとめ

  • 財産の寄付には「遺言で寄付する」「相続人が寄付する」の2つのパターンがある
  • 相続人が申告期限までに対象の法人へ寄付すれば、その財産に相続税はかからない。寄付先が対象かどうかの確認が先
  • 遺言での寄付も相続人の寄付も、現物を法人に寄付すると、みなし譲渡で所得税がかかることがある
  • 金のように値上がりしやすい財産は、「現物で寄付」と「現金で寄付」を比べてから決める
  • ご本人の意思を確実に残したいなら遺言での寄付を。生前の寄付も選択肢に

参考:国税庁 タックスアンサー No.4141「相続財産を公益法人などに寄附したとき」

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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