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相続時精算課税の贈与が、相続税申告で漏れていたら——気づいたときの対応と、小規模宅地の特例が使えない落とし穴

相続税申告の準備でヒアリングをしていると、「そういえば昔、父から贈与を受けていた」と相続人の方が思い出すことがあります。

精算課税で受けた贈与は、何年前のものであっても相続税の計算に足し戻すのが原則です。忘れやすい一方で、税務署には選択届出書や贈与税の申告書が残っているため、税務調査では見つかりやすいポイントでもあります。

前回は名義預金を取り上げ、「誰のお金か」を説明できる形に整えることをお伝えしました。今回は「過去の贈与を申告に入れ忘れる」問題です。

なぜ漏れるのか、どう確かめるのか、漏れていたらどうするのか。不安をあおるためではなく、備えとして整理します。

目次

精算課税贈与は、何年前でも相続財産に足し戻す

相続時精算課税贈与者(たとえば父)が亡くなると、その人から精算課税で受けた贈与財産は、相続財産に加えて相続税を計算します。暦年贈与で足し戻すのは亡くなる前の一定期間(最長7年)の贈与に限られますが、精算課税には期間の制限がありません。20年前の贈与でも対象です。

加える金額は、相続のときではなく贈与を受けたときの価額です。その後に値上がりしても値下がりしても、すでに売却していても、贈与時の金額で計算します。

なお、2024年1月1日以降の精算課税贈与は、年110万円の基礎控除の範囲内の金額は足し戻しの対象ではありません。2023年までの贈与には基礎控除がないため、全額が対象です。

また、遺産を何も相続しなかった人でも、精算課税で贈与を受けていれば相続税の計算に加わります。「遺産はほかの相続人が継いだから、自分は関係ない」とはならない点に注意が必要です。

なぜ漏れるのか、どう確認するか

漏れやすい理由は、主に次の三つです。

  • 制度は2003年から続いており、20年近く前の贈与だと受贈されたご本人も忘れている・記憶があいまいになっている
  • 兄弟姉妹の誰かが受けていて、ほかの相続人が知らない
  • 親が手続きを進めたため、子ども本人は届出を出した自覚が薄い

確認の方法もいくつかあります。まずは手元にある贈与税の申告書や、精算課税の選択届出書の控えを探してみてください。見つからなければ、税務署で自分が過去に提出した申告書を閲覧することもできます。

ほかの相続人が受けた贈与については、相続税法49条の「開示請求」が使えます。相続が始まったあとに税務署へ請求すると、ほかの相続人が亡くなった人から受けた精算課税の贈与(と、足し戻しの対象になる暦年贈与)の金額を開示してもらえます。

分かるのは合計額だけですが、漏れの有無を確かめるには十分な手がかりになります。不動産であれば、登記簿で贈与による名義変更がないかを見るのも有効です。

漏れていたときの対応

申告前に気づいたのであれば、加算して申告すれば済みます。申告後に気づいた場合は、修正申告をします。税務調査の通知が来る前に自分から修正申告を出せば、過少申告加算税はかかりません。

通知のあとになると加算税がかかり、調査で指摘されてからではさらに重くなります。いずれの場合も、納付が遅れた分の延滞税はかかります。

相続税は遺産全体で計算してから各人に割り振るため、一人の漏れがほかの相続人の税額にも影響します。気づいた時点で相続人の間で共有し、まとめて対応するのが現実的です。

なお、精算課税の贈与のときに納めた贈与税があれば相続税から差し引け、引ききれない分は申告により還付を受けられます。

落とし穴:小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例は、自宅の土地などの評価を最大8割減らせる特例です。ただし対象は、相続や遺贈で取得した土地に限られます。精算課税で生前贈与で取得した土地は、相続税の計算に足し戻されるにもかかわらず、この特例は使えません。

架空のモデルケースで比べてみます。父の自宅の土地(240㎡、評価額4,000万円)を、同居している長男に引き継ぐ場合です。

 A:相続で長男が取得B:生前に精算課税で贈与
相続税で計算に入る金額800万円(4,000万円の8割減)3,890万円(贈与時4,000万円-基礎控除110万円)
小規模宅地等の特例使える使えない
その他の負担登録免許税0.4%、不動産取得税なし贈与時に贈与税278万円を納付(相続税から控除)、登録免許税2%、不動産取得税あり

相続まで待って特例の要件を満たせば800万円で済んだものが、贈与していたために3,890万円が計算に入ります。差は約3,000万円です。加えて、贈与は相続より登録免許税が高く、不動産取得税もかかります。

生前に土地の贈与を考えている方は、こうした比較を先に念のためにしておきたいところです。

まとめ

  • 精算課税の贈与は、期間の制限なく、贈与時の価額で相続税に足し戻す
  • 漏れやすいのは「昔のこと」「ほかの家族のこと」。開示請求など、確認する手段はある
  • 漏れていたら、調査の通知が来る前に自分から修正申告を
  • 土地の贈与は、小規模宅地の特例が使えなくなることまで考えて判断する

現実的な第一歩として、家族のなかに精算課税の届出を出した人がいないか、一度確認してみてください。それだけで、申告の安心感は大きく変わります。

今後はe-taxで贈与税申告の内容について確認できるようになりますのでより利便性は向上する見込みですが、贈与されていたかどうか贈与税申告をしていたかの確認がまずは必要ですのでそこから確認を進めましょう。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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