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エンディングノート、書いてもらう前に知っておきたい注意点—「書けば安心」ではないところ

昨日の動画では、「相続の話は切り出しづらいので、まずはエンディングノートだけお願いしてみましょう」というお話をしました。

実際に書いてもらえたのなら、それはとても大きな一歩です。

ただ、ひとつだけ気をつけておきたいことがあります。エンディングノートは「書けば全部安心」というものではない、ということです。

法的な効力はありませんし、書き方によっては、かえってご家族が困ってしまうこともあります。

今日は、書いてもらう前に、そして書き終えたあとに知っておきたい注意点を整理してみます。

目次

エンディングノートは遺言書ではありません

相続のご相談を伺っていると、「遺言はハードルが高いので、まずはエンディングノートから」とおっしゃる方は多くいらっしゃいます。

そのお気持ちはよく分かりますし、実際にとても有効です。

エンディングノートのいちばんの価値は、「情報の地図」になることだと思っています。

どこの銀行に口座があるのか。保険はどこと契約しているのか。もしものときに誰へ連絡すればいいのか。こうしたことは、ご本人にしか分からない場合がほとんどです。

それが一冊にまとまっているだけで、遺されたご家族の負担はずいぶん変わります。

一方で、はっきりさせておきたいのは、財産の分け方について書いても法的な効力はない、という点です。

「自宅は長男に」と書き残しても、それだけでは遺言としては成立しません。あくまで「ご本人の希望が書かれた文書」ですので、相続人全員がその内容に合意して初めて、そのとおりになります。

いちばん気をつけたいのは、「エンディングノートに書いたから遺言書はいらない」という受け取り方です。

ご本人は決めたつもりでいて、ご家族もそう思い込んでいる。ところが、いざ相続が始まってみると何も決まっていなかった、ということが起こります。

役割が違うもの、と割り切ってしまうのがよいでしょう。情報を残すのがエンディングノート、財産の行き先を決めるのが遺言書です。

書き方によっては、かえってご家族が困ることも

書いてもらったこと自体は、よいことです。ただ、書き方や扱い方によっては、ご家族が困る方向に働いてしまうこともあります。よくあるのは、次の四つです。

古い情報のまま置かれている

十年前に書いたきり、という状態は少なくありません。

すでに解約した口座、期限の切れた保険、変わってしまった連絡先。書いてあるのに実在しない情報は、ご家族を確認作業に振り回すことになります。

一度書いたら終わりではなく、定期的に見直すことが前提の書類だと考えておきましょう。

保管場所を誰も知らない

完璧に書き上げても、見つけてもらえなければ意味がありません。

しかも、この手のノートは「大切なもの」として、ご家族の目に触れない場所にしまわれがちです。

書いてもらったら、次にやりたいのは「どこにあるか」を信頼できるご家族に伝えておくこと。むしろこれが、書くこと自体と同じくらい大事だと思っています。

分け方の希望だけが強く書かれている

法的な効力はないのに、分割についての希望だけが強い言葉で書かれていると、ご家族の話し合いがかえってこじれてしまうことがあります。

「本人がこう望んでいたのだから」という主張と、「でも法的には決まっていない」という反論がぶつかる形になるからです。

決めておきたいのであれば、希望を書き連ねるよりも、遺言書という形にしたほうが、結果的に揉めずに済みます。

感情的な言葉が火種になる

特定のご家族への不満や、過去の出来事への恨みごと。

書いたご本人にとっては整理のつもりでも、遺された側にとっては消えない言葉になります。ご本人はもういらっしゃらないので、確認することも、話し合うこともできません。

エンディングノートは、感情を書き出す場としてはあまり向いていないように思います。

「地図」と「決定」を分けて考えてみましょう

では、どう扱うとよいのでしょうか。

おすすめしたいのは、「情報の地図」と「決定」を分けて考えることです。

エンディングノートには、地図としての役割に徹してもらいます。財産の在りか、契約している金融機関や保険、連絡してほしい人、医療や介護についての希望。このあたりは、書けば書くほどご家族が助かる部分です。

そのうえで、「誰に何を遺すか」という決定については、遺言書に委ねます。分け方を確実に実現させたいのであれば、公正証書遺言など、効力のある形をご検討ください。

順番としては、こう考えると分かりやすいかと思います。

  1. まずエンディングノートで「情報」を書き出してもらう
  2. 保管場所をご家族で共有する
  3. 分け方に希望や不安が出てきたら、そこで初めて遺言書や専門家の出番

大事なのは、「書いてもらったこと」をゴールにしないことです。

更新する、保管場所を共有する、必要なら遺言につなぐ。ここまでで、ようやくワンセットになります。

まとめ

  • エンディングノートは情報の地図としてとても有効ですが、遺言書ではなく、分け方に法的な効力はありません
  • 気をつけたいのは、古い情報の放置、保管場所の未共有、希望だけ書いて揉める、の三点です
  • 現実的な第一歩は、書いてもらったら「保管場所をご家族で共有する」こと。そのうえで、分け方に踏み込みたくなったら、そこで遺言書や専門家をご検討ください

お盆の帰省は、こうした話を切り出しやすい数少ない機会でもあります。

書いてもらうところまで進んだのなら、ぜひ「どこにしまっておくか」まで、その場で話しておいてくださいね。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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