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相続税の申告が終わったあとに効いてくる税制—取得費加算と空き家譲渡の特例〈相続後シリーズ①〉

「相続税の申告が終わったので、これで一段落ですよね」——ご相談の場で、よくそう言われます。たしかに申告と納税は大きな山です。

ただ、実はその“あと”に、もう一つ税金の話が控えていることがあります。相続した不動産を売るときにかかる、譲渡所得税です。

しかも、相続した人だけが使える負担軽減の特例がいくつかあり、そのいずれにも期限があります。

今回は、申告後に覚えておきたい二つの特例——取得費加算と、空き家譲渡の3,000万円特別控除——を整理します。すぐ売る予定のない方も、選択肢を知っておくという意味で頭の片隅においておいていただければと思います。

目次

「申告して終わり」ではない——売れば譲渡所得税がかかる

相続税は、財産を受け継いだことにかかる税金です。これとは別に、相続した不動産を売却して利益が出れば、その利益に対して譲渡所得税と住民税がかかります。

「相続税を払ったのに、売ったらまた税金?」と驚かれる方は多いのですが、性格の異なる別の税金です。

譲渡所得は、おおまかに「売却額 −(取得費+譲渡費用)」で計算します。ここで大事なのが、取得費と取得時期は被相続人(亡くなった方)から引き継ぐ、という点です。

相続した時点の評価額で買ったことになるわけではありません。

そのため、親御さんが何十年も前に安く買った土地を相続して売ると、その間の値上がり分がまるごと利益として課税されうる、ということが起こります。

購入時の契約書が見つからず取得費が分からない場合は、売却額の5%を取得費とみなして計算することもあり、利益はさらに大きく出ます。だからこそ、負担を軽くする特例を知っておく価値があります。

取得費加算の特例——払った相続税を、売却の経費にできる

一つ目は、相続財産を譲渡した場合の「取得費加算の特例」です。相続した財産を一定期間内に売却したとき、支払った相続税のうちその財産に対応する部分を、取得費に上乗せできます。

取得費が増えれば譲渡の利益が圧縮され、譲渡所得税が軽くなる。払った相続税が、売るときの経費に化けるイメージです。

注意点は二つあります。一つ目は期限です。相続税の申告期限の翌日から3年以内、つまり相続開始の日からおおむね3年10か月以内の売却が要件とされています。

「いつか売ろう」と寝かせているうちに期限が過ぎ、使えなくなってしまうケースは実際にあります。

二つ目は、あくまで「実際に相続税を納めた人」の特例だということです。加算できるのは自分が負担した相続税ですから、その税額がゼロであれば加算するものがありません。

配偶者の税額軽減によって納付税額が出なかった相続人や、そもそも基礎控除の範囲内で相続税がかからなかったケースでは、この特例の出番はないことになります。

空き家譲渡の3,000万円特別控除——効果は大きいが、要件は多い

二つ目は、いわゆる「相続後空き家の3,000万円特別控除」です。被相続人が一人で住んでいた家(実家)を相続し、一定の要件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。効果は非常に大きい制度です。

ただし要件が細かく、率直に申し上げてハードルは高い部類に入ります。主なものだけでも、次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(マンションなどの区分所有建物は対象外)
  • 相続開始の直前に、被相続人がその家に一人で住んでいたこと
  • 相続してから売却するまで、空き家のままであること(貸したり事業に使ったりしていないこと)
  • 耐震基準を満たすよう改修して売るか、家屋を取り壊して売ること
  • 売却代金が1億円以下であること

そして、こちらにも期限があります。相続の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、が売却の期限です。控除額についても、家屋を取得した相続人の人数によって変わる場合があります。

使えれば効果は絶大ですが、「うちも実家を売るのだから使えるだろう」と当てにするのは危険で、要件を一つずつ確認する必要があります。

二つの特例は、同じ不動産には重ねられない

実務でよくご質問をいただくのが、この二つの関係です。同じ一つの不動産の売却について、取得費加算と空き家譲渡の特別控除を両方使うことはできません。どちらか有利なほうを選ぶことになります。

一方で、別々の財産についてであれば、それぞれ使えます。たとえば、相続した上場株式の売却には取得費加算を、実家の売却には空き家の3,000万円特別控除を、という組み合わせは可能です。

売る予定の財産が複数あるなら、どれにどの特例を当てるかという「設計」の問題になります。

売るなら、生前という選択肢もある

もう一つ、頭の片隅に置いていただきたいのが、生前に売るという選択肢です。

ご本人がお住まいの家をご存命のうちに売却するのであれば、マイホームを売ったときの「居住用財産の3,000万円特別控除」が使えます。

築年数の制限も、耐震改修や取壊しの要件もなく、空き家譲渡の特例と比べれば要件のハードルはかなり低い制度です。

もちろん、ご本人の意思や住まいの事情が最優先であることは言うまでもありません。

ただ、「いずれ空き家になり、相続後に売ることになりそうだ」という見通しがあるのなら、生前に動いたほうが結果として負担が軽く、手続きも簡単、ということは十分にあり得ます。

まとめ

  • 相続税の申告が済んでも、相続した不動産を売れば譲渡所得税という“もう一つの税金”がある。取得費と取得時期は被相続人から引き継ぐ
  • 取得費加算の特例は、払った相続税の一部を売却の経費にできる。期限は相続開始から3年10か月以内。相続税を納めていない相続人は使えない
  • 相続後空き家の3,000万円特別控除は効果が大きい一方で要件が多い。期限は相続の日から3年を経過する日の属する年の年末まで
  • 同じ不動産に両方は使えないが、別の財産・不動産であればそれぞれ使える
  • 生前に売れるのであれば、居住用財産の3,000万円特別控除のほうが要件は緩やか

どちらの特例も、期限が来てから気づいたのでは手遅れです。売る可能性があるのなら、寝かせてしまう前に一度、期限と要件を確認しておくことをおすすめします。

相続した不動産を売るか迷っている、特例が使えるか確認したい——そうした段階でのご相談も承っております。スポット相談もぜひご利用ください。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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