2021/7/22 生産緑地の2022年問題にあたって確認しておきたいこと③ 譲渡所得税
こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
生産緑地の2022年問題に関係する内容を2回に渡ってお伝えしました。
最後に生産緑地を売却する際の譲渡所得税について確認しておきます。
譲渡所得税の計算
譲渡所得税については以前に他の記事でも触れていますが大まかにおさらいしておきます。
不動産を売った価額-不動産を買った価額(※1)-売るための費用
=譲渡所得(利益)
譲渡所得×譲渡所得税率(※2)=譲渡所得税
(※1 建物があれば減価償却後の価額、相続による取得の場合には一番最初に買ってきたときの価額)
(※2 不動産を所有している期間に応じて税率が変わります)
という流れです。
所有している生産緑地を8,000万円で売却した場合を考えてみましょう。
その生産緑地は先代から相続したもので先代は500万円で購入してきたことがその際の売買契約書で確認しています。
売却に要した費用は仲介手数料などを考慮して300万円としてみますと以下の算式となります。
8,000万円−500万円−300万円=7,200万円
これが生産緑地を売ったことにより得られた利益部分となります。これに税率を乗じますが、今回は先代からの相続をしてきた農地ということで長期譲渡所得として計算をします。(譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物を売ったときは長期譲渡所得税の区分となります)
7,200万円×15%=1,080万円(所得税)と計算できました。
さらに長期譲渡所得の場合には所得税とは別で住民税が課されます(5%)。
7,200万円×5%=360万円(住民税)です。
今回の例では生産緑地を売却したことで合計で1,440万円(復興特別所得税は考慮していません)の税金となりました。
譲渡所得税は分離課税といって、給与や年金とは別の税率を用いて計算する所得に区分されています。
譲渡したことによる所得以外のものがあれば、給与や年金にかかる税金にプラスアルファされて譲渡所得税を支払うこととなります。
各種税金のシミュレーション
生産緑地を売却して指定を解除した際には農地の納税猶予を受けている場合にはその納税猶予も解除される、ということを前回お伝えしました。
この場合には譲渡することにあたって各種税金が発生します。
売却した利益に対する譲渡所得税と住民税
農地の納税猶予を受けていたことにより猶予されていた相続税
猶予されていた相続税に対する利子税
この3つが支払えるかどうかが譲渡をする際にはキーポイントになり、シミュレーションが必要となります。
前回の記事では1,000万円の納税猶予だった場合で25年の猶予を受けていた場合には1,908万円の相続税と利子税を支払うという試算をしました。
前段で試算した譲渡所得税等と合わせると
1,440万円+1,908万円=3,348万円と高額な税金になりました。あくまで例として取り扱いましたが売却価額は8,000万円の想定ですが、これに近い数字になる可能性は十分にあります。
譲渡所得税はいくらで売れたかに大きく影響されますが、相続税の納税猶予と利子税はいくらで売れたかには影響されませんのでその点に注意が必要です。もし安く売ってしまっても1,908万円の金額は変わりません。
このようにもし売却したらどういった税金がいくらぐらいかかり、また納税することになるかのシミュレーションは生産緑地で納税猶予を受けている場合には必要となります。
ある程度シミュレーションしていて覚悟ができている状態とそうではない状態では精神的な負担も違うと考えています。心の準備という意味で、です。
判断をする材料を揃えていく
生産緑地を続けるか、売却するか、他の用途に変更するか、といった選択肢を考えていくタイミングが近づいています。
生産緑地の2022年問題については生産緑地として指定された農地のおよそ8割が該当すると言われています。
ご自身の保有する農地が生産緑地の場合にはそろそろ考え始めるタイミングになっているということです。
農業を続けるのか、続けないのか。生産緑地指定を10年延長することも可能なわけですのでその要件も確認しておくのが良いでしょう。
続けるとしたらどういうことが課題になるのか、また続けないとしたらどれくらいの税金がかかってくるのか(生産緑地指定を解除すると納税猶予を受けている場合には売却に関わらず猶予されている分と利子の分を納める必要があります)。
納税猶予の分が支払えないのであれば売却等を検討する必要がありますが、ではいくらぐらいで売却できそうか。売却にあたっての税金はいくらぐらいなのか。
固定資産税も農地であれば優遇されていますのでその辺りも確認しておきたいところです。
生産緑地をお持ちで納税猶予を受けている場合には判断をするための材料を一つずつ揃えていきましょう。
まとめ
生産緑地の2022年問題について3回に渡って解説をしました。
先祖代々の土地の場合には手放しにくいということもよく分かります。それぞれの所有者の方に個別の事情があるかと思います。
ただ2022年は待ってはくれませんので、納得できる判断をするために情報を一つずつ収集し整理していくのがおすすめです。