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建物を建てて貸しに出すと相続税は下がるけど

建物を建てて貸す

こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

地主さんとお話をしていますと、アパートを建てませんか?という提案がきていてどうしようか迷っている、というご相談をいただくことがあります。

建物を建てると相続税が下がる理由とそれに伴い考えておきたいことを解説します。

提案内容を否定するわけではありませんが、よく考えて試算などをしてから実行した方がいいですよとお伝えしています。

 

目次

建物を買うと相続税が下がる理由

相続税対策の現場ではよく聞くお話で、地主さんがいらっしゃって未利用の土地がある場合に建物を建ててアパート経営をしませんか?という提案があります。

 

この提案そのものは以前からよく見かけるものですが、自分が持っている土地に建物を建てる、買うとなぜ相続税が下がるかという理屈をまずは解説します。

 

何も建物が立っていなくて更地の状態の土地のことと自用地(じようち)と言います。

 

この自用地にまずは建物を建てるわけですが、建物の相続税の評価額は現預金で支払った金額の概ね60%前後だと言われています。建物の構造や使っている資材の種類(木造とか鉄筋コンクリートとか)にも左右されます。

 

1億円で建物を建てた場合に建物の相続税評価額(=固定資産税評価額)は6,000万円ぐらいになる、そういうイメージです。

 

建物を建てると40%減なわけですから、相続税もその分目減りします。

 

その建物がアパートだとして貸している場合にはいわゆる貸家ということになります。

不動産を貸しに出すと借りている人の権利が関係して評価額が下がります。借家権というのですがこれは30%とされています。

 

つまり建物を建ててそれを人に貸すと建てた瞬間に40%減って、貸した瞬間に30%減る、ということです。

 

1億円の現預金で建物を建てた場合には
建物を建てた瞬間に1億円✖️60%=6,000万円
建物を貸した瞬間に6,000万円✖️70%=4,200万円
になります。(貸付割合などを考慮せずに大まかに計算しています。)

 

半分以下になっているわけですから現預金で持っているより建物を建てた方が相続税が下がりますよ、というのは建物の部分だけ見てもこうなります。

 

続いて土地の評価額についても変化がないか見ておきます。

 

自分が所有している更地の土地の上に建物を建てて貸している状態です。

自分の土地に自分が所有する建物があってその建物を貸している場合には貸家建付地(かしやたてつけち)と呼びます。

 

この貸家建付地と呼ばれる土地になると自用地の時とは少し違って、これにも貸していることの権利関係が反映されます。

 

不動産を貸していると貸し借りの権利関係が発生するのでその部分を評価額に反映させましょうという趣旨によるものです。

 

自分が持っている土地が貸家建付地だった場合の評価額の計算は
自用地評価額✖️(1−借地権割合✖️借家権割合✖️賃貸割合)
という計算式で計算をします。

 

貸していることを考慮するために借地権割合、借家権割合、賃貸割合が出てきます。

 

仮に自用地評価額が5,000万円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%だとすると

5,000万円✖️(1−60%✖️30%✖️100%)=5,000万円✖️(1−18%)=4,100万円になります。

建物を建てて貸せば土地の評価額も下がる、ということがわかりました。

 

上記のケースを整理すると
建物を建てて貸す前 現預金1億円 自用地5,000万円
建物を建てて貸した後 建物4,200万円 貸家建付地4,100万円

 

財産の合計額が半分ぐらいにになりました。財産の価額が下がるのですから当然相続税も下がります。いいことばかりか、そういうわけではありません。

 

相続税は下がるけれど

現預金が下がるのは上記の例で考えてみるとよくわかりますが、現預金1億円があった場合にはそれを建物に注ぎ込むと当然現預金はなくなります。

 

現預金がなくなっても大丈夫か?というのはチェックしておいた方がいい項目です。

 

相続税を支払うのは建物を建てたご本人ではなく配偶者やお子さんなど相続人ですので相続税が支払えなくなってしまうと遺された方が困ることになります。

 

じゃあ借入をして、ということも選択肢の一つに入りますが、建物を建てるときに借りた借入金はいわば借金ですのでそれも相続してもらうことになります。

 

相続人の方が借金を相続したいかどうか、賃貸不動産を相続したいかどうか、この辺りはもう少し家族会議で検討した方がいいでしょう。

 

借金を相続するくらいなら相続税を遺してもらった現預金で相続税を納めたほうがいい、と言われるかもしれません。

 

別の相続人の方からは、相続税が減るならそれで良いし賃貸不動産を相続したい、と言われるかもしれません。

 

家族でお金や相続の話をする機会というのはあまりなく、むしろタブーに取り扱われることもありますが、大事な話なのでしないよりした方がいいと私は考えています。

 

どういったご意向があるのか、それを元にじゃあ遺言を書いておきましょうか、となるかもしれませんし、賃貸不動産の方向性はなしで、未利用の土地も売って現預金にしておこう、とかいろんな選択肢があります。

 

遺したいように遺してもらうのはもちろんですが引き継ぐご家族の意向も確認しておきたいところです。

 

借入をして建物を建ててそれを貸すということそのものは相続税に対しての効果がかなり高いですが効果の高さに比例してその分リスクがあります。

 

あくまで不動産投資ですし、借入を仮に30年でした場合には答え合わせは30年後です。その答え合わせを自分で見られないかもしれない、というのはアタマの片隅に置いておきましょう。

 

まとめ

建物を自分の所有する土地に建ててそれを貸すと相続税を計算する際の不動産の価額は下がりますのでそれにより相続税が下がることを解説しました。

それと同時に本当にそれでいいのか、という判断についてはいろんな要素がありますのでいきなり家族や専門家に相談せずに実行するとあとで後悔することになりかねません。

大きな買い物ですしその点だけでも慎重に判断することをお勧めします。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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