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漫画家のための確定申告のチェックポイント 売上編

漫画家のための

こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

漫画家・小説家などの職業の方の確定申告についてはいくつかチェックポイントがあります。売上、経費、平均課税制度について一つずつ確認していきます。ご自身で確定申告をする際の参考にしてください。

まずは売上についてみていきましょう。販売手数料、源泉所得税に注意が必要です。

 

目次

印税・原稿料の処理について

印税や原稿料としての売上がある場合には源泉所得税の金額に注意をしましょう。

 

源泉所得税とは一定の報酬等についてあらかじめ報酬を支払う側が所得税を納税者の代わりに納める制度です。

漫画家さんで言うと出版社が印税を支払うときには、源泉所得税を差し引いてから漫画家さんに印税を支払うという流れです。

 

本来であれば売上から経費を引いた利益に課税されるものが所得税であるにもかからわらず、売上に対して課税されるものですので前払いしている状態で確定申告では精算しないと損をすることになります。

 

売上は源泉所得税の控除前で計上し、源泉所得税は仮払いなどで金額を把握しておきましょう。

例として550,000円の印税だったとした場合には以下のような仕訳入力となります。

(現預金) 493,845円 (売上(印税))550,000円

(仮払税金)  56,155円

消費税込みの金額に源泉所得税が課税されているか、本体価格に源泉所得税が課税されているかは明細を見て確認をしましょう。

また明細や支払調書が来ない場合も源泉徴収されているかは逆算して確認しておきましょう。今回の例で言うと493,845円を89.79%(=1-10.21%)で割り戻すと計算できます。

493,845円÷89.79%=550,000円で入金額との差額が源泉所得税であることが分かります。

 

源泉所得税の計算は以下のような計算式になります。

報酬が100万円以下の場合

・報酬金額×10.21%

報酬が100万円超の場合

・(報酬金額-100万円)×20.42%+102,100円(※)

(※)100万円を超える部分は20.42%でそこに100万円×10.21%をプラス

 

受け取った金額に対して源泉所得税がいくらかかっていて徴収されているか明細を見ながら電卓をたたいてみましょう。

実際には出版社などが支払いをしてくれていますが、実質的には漫画家さんが自分の受け取れる報酬から前払いしている形式となっています。

 

通常だと仮払税金という項目ではなく事業主勘定(プライベート勘定)で処理することが多いです。(事業主貸(じぎょうぬしかし))

ただ他の項目も事業主貸の勘定科目で処理することがあるので税金部分を分けてみるためには別集計しておいたほうが後で確認するときに楽です。

 

事業主貸の項目を細分化して補助科目をつけることもできますし、勘定科目として仮払税金を項目として設けることも大方の会計ソフトでは出来ますのでトライしてみましょう。

私自身も税理士報酬にかかる源泉所得税については仮払税金という形で処理をして、決算の時に見直しをし、最後に事業主勘定に振り替えるようにしています。

 

販売手数料について

漫画家さんに多いのが委託販売をしているケースで手数料を徴収されているという場合です。

 

例えば同人誌などの場合には販売をその書店に委託し書籍を売ってもらう形を取りますので、源泉所得税のように入金時に販売数等に応じて手数料が天引きされます。

 

この手数料については委託販売により売上を上げるための経費となり、仕訳入力は以下のような形式となります。

(現預金)  750,000円 (売上(委託販売))880,000円

(販売手数料)130,000円

こちらも明細等で売上金額と販売手数料を確認しておきましょう。

 

印税・原稿料と同じく売上として計上する金額は総額主義、つまり差引される前のトータルで計上するルールが原則です。

 

支払調書だよりにならない

確定申告の際には年明け少しすると出版社から送られてくる印税・原稿料の支払調書を元に申告をしている方も多いかと思います。

 

この支払調書、金額を確認するにはとても便利ではあるのですがひとつ注意点があります。

それは支払調書は支払先に提出するものではなく、本来は税務署に提出するものだということです。

 

出版社が漫画家さんに支払った報酬からいくらの源泉徴収をしましたという報告を税務署にするための書類で、漫画家さん本人にこの支払調書を渡す義務は出版社側にはありません。

 

それゆえ、出版社などによっては漫画家さんに支払調書を出していないケースもあります。

支払調書がこないからといって売り上げに計上しなくてイイわけでは決してありませんので、お仕事で得た報酬は支払調書があろうとなかろうと売上です。

 

支払調書がもし手許にくるのであればご自分の集計結果と見比べてみて合っているかどうか確認をしましょう。もし違うのであれば問い合わせてみることもひとつ必要な作業です。

 

集計については会計ソフトで仮払税金として集計するか、Excelで帳簿を作っておいてもいいでしょう。

請求日 売上金額 消費税 売上相手 源泉所得税 入金日 入金額
1/10 165,000 10% ○○出版 16,846 2/28 148,154
2/20 220,000 10% 〇✕堂 22,462 3/15 197,538
3/30 550,000 10% ○○書店 なし 4/30 478,000
4/30 110,000 10% イベント なし 4/30 110,000

 

確定申告の時には必ずチェックしたいのが源泉所得税ですので、あとでチェックをしやすいようにご自身に合った方法で集計をしておきましょう。

ここをおろそかにすると確定申告で不要な税金を納めることになりかねません。

まとめ

印税・原稿料についての源泉所得税は漫画家さんの確定申告において一番ネックに感じられる部分だそうです。

ただ源泉所得税は前払い税金の性質があるので確定申告できちんと処理できないと損をする可能性が非常に高まります。

確定申告で精算をキチンとするために集計をする、源泉徴収されているか確認をする、そういう意識で取り組んでみてはどうでしょうか。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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