漫画家や同人作家のお客様からも、「アシスタントを使いたいのですが、どう処理すればいいですか?」というご相談をいただくことがあります。
一人で仕事をしているスタイルの方にとって、「人にお金を払う」という行為がどのような義務を生むのかは、なかなかイメージがつかみにくいものです。ただ、ここを曖昧にしておくと、後から税務上の問題が発生することがあります。
まず最初に押さえておきたいのは、「外注か雇用か」という区分です。
これを間違えると、源泉徴収漏れや社会保険未加入といったミスにつながります。この記事では、外注と雇用それぞれに必要な手続きの全体像を整理していきます。
「外注費」と「給与」は何が違うのか——この区分が最重要
アシスタントへの報酬を「外注費」として処理するか「給与」として処理するかは、実態をもとに判断します。名目や契約書の書き方ではなく、実際の働き方を見て判断されるという点が重要です。
外注費として扱える条件
次のような場合は、外注費として処理できる可能性があります。
- 仕事の進め方や時間をアシスタント本人が自分で決めている
- 他の案件・他の依頼主の仕事も同時にこなしている
- こちらから細かい指揮命令は出していない
- 成果物に対して報酬を払っている
給与として扱うべきケース
一方、次のような実態があれば、「給与」として処理する必要があります。
- 毎日決まった時間に来てもらっている
- 作業の細かい指示をこちらが出している
- 実態として「うちの仕事専属」になっている
間違えるとどうなるか
外注費として処理していたものが「実態は給与だった」と税務調査で認定されると、源泉徴収漏れ・社会保険未加入として指摘されます。追加納付や加算税のリスクがあり、「気づいていなかった」では通らない点には注意が必要です。
実態を総合的に勘案しますのでこの処理をしているとアウトとかセーフというのは明確にはありません。減点方式とも言えるかと思います。契約書をキチンと実態に合わせ用意しておくというのも大切です。
スモールな規模だと口約束で何となくすーたとしてしまうこともあるでしょうし、それはそれできちんと形も整備しておくべきです。
そういった手続きを省きたいと思うのであればココナラなどの元々が外注形式でしか依頼できないプラットフォームを使うというのも選択肢になるでしょう。
より専門的に判断する際には以下の要点が判断において重要です。
- 作業を他人に任せてもOKか
- 時間的な拘束がないか
- 具体的な指示命令があるか
- 完成しなくても報酬の支払いがあるか
- 機材や用具の提供があるか
外注費として払う場合——源泉徴収が必要なケースを整理する
個人クリエイターへの外注費に源泉徴収が必要な場合
個人の方に原稿料・デザイン料・イラスト料などを支払う場合、源泉徴収が必要です。支払額の10.21%を差し引いて支払い、翌月10日までに税務署へ納付します。
ただし、その発注者が源泉徴収義務者でない(ごく簡便に言うと給与の支払者ではない)場合には、源泉徴収の必要はありません。
源泉徴収した金額の納付手続き
原則は毎月10日までの納付です。ただし、従業員が常時10人未満の事務所は、「納期の特例」を申請することで年2回(1〜6月分を7月10日、7〜12月分を1月20日)にまとめて納付できます。これはかなり便利な制度ですので、申請しておくことをおすすめします。
給与として雇用する場合——必要な手続きの全体像
労働保険(雇用保険・労災保険)の加入
1人でも雇用した時点で、労働保険への加入義務が生じます。手続き先は労働基準監督署とハローワークです。
ただし、週20時間未満の勤務や2か月以内の短期雇用については、加入が不要なケースもあります。
社会保険(健康保険・厚生年金)の加入
個人事業主の場合、社会保険の強制加入は原則として発生しません。ただし、常時5人以上を雇用する特定業種は個人事業主でも加入義務があります。
なお、文芸美術国保に加入されている場合は、法人化すると脱退が必要になるという点も覚えておいてください。
給与所得の源泉徴収と年末調整
給与を払う側は、毎月の給与から源泉徴収して納付する義務があります。また年末には年末調整の手続きと、給与支払報告書の市区町村への提出が必要です。
「自分が確定申告しているから年末調整は関係ない」と思っている方もいますが、雇っている人がいる場合は別の話です。雇う側の義務として、年末調整は必要な手続きになります。
まとめ
アシスタントへの報酬の処理は、「外注費と給与の区分」「源泉徴収の要否」「雇用保険・社会保険の加入義務」という3点を最初に整理しておくことが大切です。
間違えた処理を続けるほど、後から修正する際のコストと手間が増えます。事前に整理して正しい処理を続けられるようにしましょう。
