フリーランスのクリエイターはライフイベントに伴う税務会計の手続きを「自分で全部対応する」必要があります。
会社員であれば、年末調整で勤務先が税務対応の多くを肩代わりしてくれます。ところが漫画家・同人作家などフリーランスのクリエイターは、確定申告から社会保険の手続きまで、すべて自分でこなさなければなりません。
産休・育休という制度は会社員向けのものであり、フリーランスには活動を止めるか縮小するかの判断も自分に委ねられています。「何をいつまでに、どこへ手続きするか」がわからないまま乗り切ろうとするケースは少なくなく、後から「申請し忘れていた」と気づいても遅い手続きが出てくることもあります。
この記事では、結婚・出産・育児というライフイベントごとに、税務と社会保険の観点から確認しておくべき事柄を整理しています。
結婚したときに変わること・手続きすること
配偶者控除・配偶者特別控除の確認
配偶者の年収が一定額以下であれば、配偶者控除または配偶者特別控除を受けることができます。
フリーランス同士のカップルの場合は互いの収入が変動しやすいため、毎年「今年は控除が使えるか」を確定申告前に確認する習慣をつけておくことが大切です。
- 配偶者の年収(合計所得金額)が一定額以下なら配偶者控除・配偶者特別控除が使える
- フリーランス同士のカップルは互いの収入の変動で毎年控除額が変わる可能性がある
- 「今年は使えるか」を確定申告前に確認する習慣をつける
自分が配偶者の社会保険の扶養に入るかどうかの判断
収入が不安定なクリエイターが「扶養に入る・出る」を繰り返すことには一定のリスクがあります。
扶養から外れる基準としてよく知られる「130万円の壁」は、フリーランスの場合は経費控除後の所得で判断するケースと収入総額で判断するケースがあり、その配偶者が加入している健保組合などの基準を確認することが必要です。
また、年の途中で収入が大きく増えた場合は、扶養から外れる時期の判断を誤ると後から保険料の追納が発生することもありますので注意が必要です。
- 収入が不安定なクリエイターが「扶養に入る・出る」を繰り返すリスク
- 社会保険の扶養から外れる基準(130万円)とフリーランスの所得計算の考え方
- 年の途中で収入が大きく増えた場合の対処
姓が変わった場合の各種届出
屋号に本名を含めている場合や、各種プラットフォームのアカウント名が本名と一致している場合は、改姓後の変更手続きの漏れに注意が必要です。旧姓で仕事を続けるというのも選択肢になってきます。
確定申告書の氏名変更やマイナンバーとの整合性についても、早めに確認しておきましょう。
- 屋号・銀行口座・各プラットフォームへの変更手続きの漏れに注意
- 確定申告書の氏名変更・マイナンバーとの整合性を確認する
- 申告は基本的に新姓で行う、還付口座などが旧姓の場合に引き落としできないケースもあるので注意が必要
- 旧姓での申告やインボイス登録の継続には別途手続きが必要
出産したときに変わること・手続きすること
国民健康保険の産前産後保険料免除制度(2024年改正)
2024年の改正により、国民健康保険に加入しているフリーランスも、出産予定月の前月から4か月間、国民健康保険料が免除されるようになりました。ただし、申請しなければ自動で適用されるものではなく、市区町村への手続きが必要です。
所得が高いクリエイターほど免除される保険料の金額が大きくなりますので、見落とさずに手続きしておきたい制度です。
- 出産予定月の前月から4か月間、国民健康保険料が免除される
- 申請しないと自動適用されない・市区町村への手続きが必要
- 所得が高いクリエイターほど免除額が大きくなるため見落とし厳禁
- ※国民健康保険料が最高限度額に達している世帯について、当該制度の減額後、引き続き最高限度額を超える場合は、保険料が減額がされないことがあります。
- 文芸美術国保にも同様の免除制度があります
国民年金の産前産後免除
国民健康保険と同様に、出産前後4か月の国民年金保険料も免除の対象になります。
こちらも申請が必要ですが、免除された期間は「保険料を納めた期間」として扱われるため、将来の年金受給額には影響しない点が会社員の育休時の免除と異なるポイントです。
- 出産前後4か月の国民年金保険料が免除・追納不要
- 将来の年金受給額には影響しない(免除期間も納付済みとして扱われる)
出産育児一時金
国民健康保険に加入している方も出産育児一時金を受け取ることができます。
文芸美術国保など職域の健保組合に加入している場合は、組合への申請が必要になりますので、申請先がどこになるかを事前に確認しておきましょう。
- 国民健康保険加入者も受け取れる・文芸美術国保加入者は組合への申請
- 申請先が健保組合ごとに異なるため事前確認を
出産費用は医療費控除の対象になる
入院費・分娩費・通院交通費など、出産にかかった費用は医療費控除の対象になります。
年間の医療費の合計が10万円を超えた部分(または所得の5%を超えた部分)が控除対象になりますので、確定申告で計上し忘れないよう領収書の管理を徹底しましょう。
- 入院費・分娩費・通院交通費などが控除の対象
- 年間10万円超が控除の基準
- 出産費用は医療費控除の対象ですが、受け取った出産育児一時金(原則50万円)は支払った医療費から差し引く
育児期間中に変わること・注意すること
活動を縮小・休止した場合の事業所得の継続判断
育児期間中に活動を縮小・休止して収入がほぼゼロになっても、帳簿記帳と確定申告を継続していれば事業所得として申告し続けることができます。
青色申告特別控除65万円を維持するためには、複式簿記による記帳と期限内の申告、電子申告が必要です。
申告の継続を怠ると、税務署から「雑所得」に区分変更されるリスクがあります。
雑所得になると、青色申告特別控除が使えなくなるだけでなく、損失の繰越控除など事業所得ならではの有利な取り扱いも失われますので注意が必要です。
- 収入がほぼゼロでも事業所得として継続申告すべきかの判断基準を確認
- 青色申告特別控除を維持するための必要条件の確認(帳簿記帳・期限内申告の継続・電子申告)
- 「雑所得に区分変更」になると青色申告特別控除や損失繰越が使えなくなる
フリーランス向けの育児支援制度の現在地
フリーランス新法の施行や、育児期間中の社会保険料免除に関する制度整備が進んでいます。
ただし、この分野は改正の頻度が高く、情報が変わりやすいテーマです。自治体によっても支援制度の濃淡や独自制度があることがあり、お住いの自治体の最新情報をおさえておきましょう。
- フリーランス新法・育児期間中の社会保険免除に関する最新動向に注目
- 制度が変わりやすいテーマなので、利用前に最新情報の確認を
まとめ——ライフイベントのたびに「税務・社会保険の棚卸し」をする習慣を
結婚・出産・育児はそれぞれ、手続きと税務の変化が連動しています。「確定申告の時期にまとめて確認しよう」と思っていると、申請期限が過ぎてしまっている手続きが出てくることも少なくありません。
特に産前産後の保険料免除など、申請しなければ自動で適用されない制度については、ライフイベントが起きたタイミングで都度確認することが大切です。
