事業を始めたら、やめるタイミングというものも出てきます。クリエイターの方であれば、完全にやめる・一部を止める・縮小する・売却するなど、さまざまなケースがあります。
また、個人の事業をすべて止めて法人に移すケースや、完全に停止してしまうケースも状況によっては考えられます。病気やモチベーション、生活環境の変化によって事業を続けるかどうかを判断することもあるでしょう。
活動をやめるとき、縮小するときの税務手続きについて整理しておきます。
廃業届について
事業をやめたいと思ったときには、「個人事業の廃業届」を提出します。これにより事業は終了となりますが、それで完全に終わりというわけではありません。
たとえば6月末で廃業届を提出した場合、1月1日から6月末までの所得があるため、その分の確定申告が必要になります。
基本的には年間の所得を合計して所得税を計算しますので、1月1日から6月30日までの所得についても、翌年の確定申告の際に事業所得として申告することになります。
消費税の課税事業者であった場合も、廃業したからといってすぐに課税事業者でなくなるわけではありません。該当期間の消費税の申告も必要になります。
一部縮小・活動を減らす場合
一部を止める・縮小するという場合には、廃業届は必要ありません。特別な届出も不要ですが、税務署に事情を知らせておきたい場合は、決算書の「特殊事情等」記載欄に記載しておくとよいでしょう。
青色申告から副業に戻すようなケースでは、「青色申告の取りやめの届出書」を提出しておくことが望ましいです。
会社勤めに戻る場合、事業としてではなく副業として申告した方が手間が大幅に減ります。副業での申告は雑所得になる場合が多いため、その際には青色申告の取りやめ届を出しておくとよいでしょう。
インボイス登録の取り消し
消費税の課税事業者でインボイス登録をしている場合には、取り消しの手続きをしておくことが望ましいです。
登録を残したままにしておくと、後に課税事業者に戻った際に意図しない影響が出る可能性があるためです。
活動中に持っていた資産・在庫はどう処理するか
機材・有形資産について
事業を完全に終了する場合、廃業時に資産をプライベート用に転用するか、廃棄処分することになります。売却する場合は譲渡所得の対象になる可能性があります。
またプライベートに転用する場合でも、いくらのものをいくらで移したかが税務上のポイントになりますので注意が必要です。廃棄する場合には、廃棄にかかった処分費用を経費として計上しておくとよいでしょう。
同人誌・グッズの在庫について
残った在庫やグッズはすべて廃棄するケースが多いと思われますが、廃棄処分にかかった費用は経費として計上しておきましょう。
デジタルコンテンツ(DLsite・FANBOXなど)
DLsiteなどで販売していたデジタルコンテンツは、サークルを停止しなければ引き続き販売・購入される可能性があります。
ダウンロードを停止するかどうかは各プラットフォームの方針に合わせてご検討ください。なお、プラットフォームから収入が入っている場合は申告義務が発生する可能性があるため、注意が必要です。
小規模企業共済・退職金について
小規模企業共済に加入している場合、廃業時には退職金として受け取れる可能性がありますので、手続きを忘れないようにしましょう。
受取時の税務については、退職金として受け取る場合は退職所得として課税され、年金方式の場合は年金所得として受け取ることになります。
届出が必要なケースもありますので、提出した際は書類を保管しておくことが望ましいです。
個人事業税の計上忘れに注意
確定申告は一通り必要なケースが多いですが、個人事業税の計上を忘れるケースが多く見受けられます。
通常、個人事業税は支払ったタイミングで計上するルールになっています。廃業時に支払ったものに加え、翌年の確定申告時に未確定のものが残る場合があります。
その未確定分については概算で計算し、申告書上で費用として計上しておくことが望ましいです。個人事業税に関する支払い書類は大切に保管しておきましょう。
まとめ
活動の縮小・廃業は、単に「やめる」だけでは終わりません。
廃業届の提出から始まり、その期間の確定申告・消費税申告、インボイス登録の取り消し、在庫や機材の処理、小規模企業共済の手続き、そして個人事業税の計上漏れへの注意まで、多くの税務手続きが発生します。
特に「やめたあとにも申告義務が残る」という点を忘れずに、余裕を持って各種手続きを進めることが重要です。迷ったときは税理士に相談しながら、後悔のない活動の締めくくりをしてください。
