イベント当日は、とにかく慌ただしいものです。朝一番で搬入して、設営して、値札を貼って、開場したらお客さまの応対に追われ、気づけばもう撤収の時間——。
「今年こそ売上をきちんと記録しよう」と思っていたのに、終わってみればレシートは鞄の底でくしゃくしゃ、何がいくつ出たのかもあやふや。スポット相談でも、毎年この時期に必ず伺うお話です。
けれど当日の記録は、難しい税務の知識で解決するものではありません。その場でほんの少し手を動かしておくだけで、あとの作業がぐっと楽になります。
今回は8月の大型イベントを目前にしたこのタイミングで、「当日、その場でやっておく記録」だけに絞ってお伝えします。未来の自分を助けるための当日の段取りとして、読んでいただければ幸いです。
1. 開場前——「釣り銭準備金」を先に確定させておく
まず開場前にやることは、ひとつだけです。「釣り銭をいくら用意したか」を、先に確定させておくこと。
当日の現金売上は、最終的に「用意した釣り銭」と「手元に残った現金」の差額から逆算して求めます。
つまり出発点になるのは、最初にいくら持っていたかという数字です。ここが曖昧なままだと、あとからどれだけ丁寧に数え直しても、売上は確定しません。
あわせて鉄則がひとつ。釣り銭は、私物の現金と絶対に混ぜないことです。
財布やケースを分け、「この袋のお金はイベント用」と決めてしまいましょう。途中で自分の昼食代を同じ財布から出してしまうと、その時点で当日の売上計算は崩れます。
やること自体は簡単です。スマホのメモや紙に「つり銭準備金 ◯◯円」と一行残すだけ。
これが、当日の売上計算のスタート地点になります。余裕があれば、千円札が何枚、百円玉が何枚、といった内訳まで書いておくと、終了後に数え合わせる際の確認がぐっと早くなります。
2. 開催中—「頒布数」を数えられる形にしておく
売上は基本的に「頒布数 × 頒価」で計算します。ですから当日必要なのは、何がいくつ出たのかを後から数えられる状態にしておくことです。
おすすめは、1冊ずつ記録するのではなく、開始前の在庫数を控えておき、終了後の残部数から引き算する方法です。
売り子も会計もひとりでこなす個人参加なら、頒布のたびに正の字を書く余裕はまずありません。この方法なら、朝と夕方の2回数えるだけで成立します。
複数の種類・複数の価格帯を扱う場合は、種類ごとに在庫数と残数を分けて控えてください。合計だけを数えても、あとで金額に直せなくなってしまいます。
もうひとつ、見落としがちなのが、頒布以外で減った分です。見本誌として卓上に出したもの、知人に献本したもの、無料配布したノベルティ——これらは在庫からは減っていますが、売上にはなっていません。
引き算だけで計算すると、その分がまるごと売上として乗ってしまいます。数が少なくても、「見本1・献本2」と一行添えておけば十分です。
なお、電子頒布や後日の書店委託は、当日の現金売上とは別のルートで入ってくるお金です。
当日の記録には混ぜず、「これは別で考えるもの」という意識だけ持っておけば十分です。
3. その場で残す—「領収書が出ない支出」のメモの型を決めておく
最後は支出です。当日その場で払う設営備品、飲食や差し入れ、細かな買い物——これらは領収書が出ないことも珍しくありません。
ここで「出ないものは記録しない」としてしまうと、本来経費にできたはずの支出を、静かに取りこぼすことになります。
対策は、メモの型をあらかじめ決めておくことです。残すのは、日付・金額・何に使ったか、の3点だけ。
スマホのメモに一言打つ、レシートがあれば撮る。当日はそれ以上のことをしなくて構いません。
もらえた領収書については、イベント名を書いた封筒をひとつ用意して、その場で放り込む。鞄の中でバラけるのを防ぐだけで、後日の整理は別物になります。
そして何より大事なのは、「あとでまとめてやろう」を当てにしないことです。
撤収後の疲労を思い出せば想像がつくとおり、その「あとで」はほぼ流れます。その場で一手だけ打っておく。これが最大の対策です。
まとめ——当日やるのは、3つだけ
イベントの記録は、終わってから頑張るものではなく、その場で半分が決まります。当日やることは、次の3つだけです。
① 釣り銭準備金を、開場前に確定させる
② 在庫数を控えておき、終了後の残数から逆算する
③ 領収書が出ない支出は、その場で日付・金額・用途をメモする
現実的な第一歩は、当日の朝に「準備金 ◯◯円」とメモを一行残すこと。そこから、当日の記録は自然につながっていきます。なるべくタイムリーにできることをやっておきましょう。
後で思い出すというのは結構大変ですし覚えていないことも沢山あるものです。
