「7月って、税金の通知がまとめて来るんですね」
予定納税と消費税の中間納付についてお話ししていた流れで、こう言われることがあります。所得税の予定納税、消費税の中間納付、少し前には住民税の通知も届いていて、夏は納付が続く季節です。
当ホームページでは、7/13に「予定納税の通知が届いたら」、7/20に「消費税の中間申告」と、それぞれの制度を個別に取り上げてきました。
今回はその総まとめとして、2つをいったん一枚にまとめ直し、さらに8月に控えている個人事業税まで含めて、「年間のどこで・何を・いくら納めるのか」を見渡せる形にしておきます。
個別の制度の細かい話は前2回に譲って、今回は“全体の地図”を持つための話です。
7月に通知が重なるのは、なぜか——2つの「前払い」を並べて見る
所得税の予定納税(第1期・7月31日期限)と、消費税の中間納付。名前も時期も似ているので混同されやすいのですが、これは別々の税金の前払いです。
共通しているのは、どちらも「前年の実績」をもとに、税務署のほうで金額を計算して通知してくる仕組みだということ。
だから、去年売上が伸びた方ほど、今年の夏に通知が重なります。「急に税金が高くなった」のではなく、去年の結果が今年の夏に反映されている、という順番です。
そしてもう一点、前2回でもお伝えしたことを改めて。これらは「二重に取られている」わけではありません。
どちらも来年の確定申告で精算される前払いです。納めすぎていれば還付されますし、足りなければそのときに差額を納めることになります。
まずやっていただきたいのは、手元の通知書を並べて、「自分にはどちらが・いくつ来ているのか」を確認することです。ここが出発点になります。
「減らせる・見直せる」選択肢を、まとめて確認する
前払いといっても、状況によっては金額を見直せる余地があります。制度ごとに整理しておきます。
- 所得税の予定納税:今年の所得が前年より減る見込みであれば、減額申請ができます。第1期分の期限は過ぎていますが、第2期分については11月に申請の機会があります。
- 消費税の中間納付:前年より売上が大きく下がっているなら、実際の期間の数字で計算し直す「仮決算」という選択肢があります。
どちらにも共通するのは、「多めに前払いしても、最終的には確定申告で精算される」という点です。
つまり、見直しをしなかったからといって損をするわけではありません。あくまで、資金繰りを楽にするための微調整と考えてください。
ですので、手間をかけて無理に自分で見直す必要はありません。
大事なのは「見直せる余地があること自体を知っておく」ことで、今年は売上の落ち込みが大きい、という自覚があるときだけ検討すれば十分です。判断に迷うようであれば、税務署か税理士にご相談ください。
次に来るのは8月——「個人事業税」という、もう一つの納付
7月の2つを片づけたところで、もう一つ触れておきたいのが個人事業税です。所得税や消費税と違って自分で計算して申告するものではないため、通知が届いて初めて存在を知る方も少なくありません。
都道府県から課される地方税で、8月末と11月末の年2回
個人事業税は、国ではなく都道府県が課す地方税です。事業所の所在地を管轄する都道府県税事務所から、8月ごろに納税通知書が届きます。
納付は原則として8月末(第1期)と11月末(第2期)の年2回。8月に届く通知書に、2回分の納付書が同封されている都道府県もあります(年税額が1万円以下の場合は、8月に一括で納めます)。
確定申告をしていれば、個人事業税のために別途申告をする必要はありません。届いた通知書に沿って納めるだけです。
そしてもう一つ、実務上おさえておきたいのが、納めた個人事業税は事業の必要経費になるという点です。
所得税や住民税は経費になりませんが、個人事業税は「租税公課」として経費に計上できます。この違いは意外と知られていないので、記帳のときに落とさないようにしてください。
計算式は、ざっくり言えばこうなります
(事業所得の金額 + 青色申告特別控除額 - 事業主控除290万円)× 税率
ポイントは2つあります。
1つ目は、青色申告特別控除を足し戻すこと。所得税では最大65万円を差し引けますが、個人事業税にこの控除の適用はありません。そのため、所得税の申告書上の所得金額に、いったん控除額を戻して計算します。
2つ目は、事業主控除290万円です。誰にでも一律で差し引ける控除で、事業を1年間営んだ場合は290万円(年の途中で開業・廃業した場合は月割り)。
裏を返すと、所得が290万円以下であれば個人事業税はかかりません。フリーランスの方で「通知が来たことがない」という場合、この範囲に収まっていたか、次に説明する業種の問題のどちらかであることが多いです。
たとえば事業所得が400万円、青色申告特別控除が65万円、税率5%の業種であれば、(400万円+65万円-290万円)×5%=87,500円。これを8月末と11月末で分けて納めることになります。
税率は基本5%。一部の業種は4%・3%
税率は業種によって3%〜5%に分かれています。ほとんどの業種が5%で、それ以外は限られています。
| 区分 | 主な業種 | 税率 |
| 第1種事業(37業種) | 物品販売業、製造業、請負業、飲食店業、広告業、出版業、印刷業、不動産貸付業 など | 5% |
| 第2種事業(3業種) | 畜産業、水産業、薪炭製造業 | 4% |
| 第3種事業(30業種) | 医業、税理士業、デザイン業、コンサルタント業、理容業、美容業 など | 5% |
| 第3種事業のうち一部 | あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復、装蹄師業 | 3% |
もう一点、フリーランスの方に関わりが深いのが「そもそも課税されない業種がある」という話です。
個人事業税は地方税法に定められた70の法定業種にだけ課されるもので、この70業種に当てはまらない仕事は対象外になります。
たとえば文筆業(ライター)、翻訳業、画家や漫画家などの芸術家、プログラマーやシステムエンジニアといった職種は、法定業種に含まれないため課税されないケースが一般的です。
一方で、イラストレーターやWebデザイナーは第3種事業の「デザイン業」に該当するとされ、5%の課税対象になります。
ただし、この判定は開業届に書いた肩書きではなく、実際の仕事の中身で行われます。
「画家」と届け出ていても、依頼を受けて商業用のイラストを描く仕事が中心であればデザイン業と判断される、といったことが起こります。境目が微妙な方は、都道府県税事務所に確認するのが確実です。
一番効くのは、「年間カレンダー」を一枚持つこと
ここまで個別の制度を見てきましたが、実際に一番効くのは、テクニックよりも「年間の納付を一枚の表にしておくこと」だと感じています。フリーランスの1年を時系列に並べると、こうなります。
| 時期 | 納めるもの |
| 3月 | 所得税の確定申告・納付(3/15)/消費税の確定申告・納付(3/31) |
| 6月 | 住民税の通知が届く(普通徴収は6月・8月・10月・翌1月の年4回)/国民健康保険料の通知(6月〜翌3月で分割納付。自治体により異なる) |
| 7月 | 所得税の予定納税・第1期(7/31)/消費税の中間納付の通知が届く |
| 8月 | 消費税の中間納付(年1回の場合は8/31)/個人事業税・第1期(8月末)/住民税・第2期 |
| 10月 | 住民税・第3期 |
| 11月 | 所得税の予定納税・第2期(11/30)/個人事業税・第2期(11月末) |
| 翌1月 | 住民税・第4期 |
こうして並べると、6月から11月にかけて途切れなく納付が続いていることが分かります。7月だけが特別に重いのではなく、夏から秋にかけてずっと納付期があるというのが実際のところです。
そのうえで、ご相談を受けていて最も多い失敗が「税金の分を使ってしまっていた」というものです。
制度を知らなかったから困るのではなく、使わずに納付のためにお金を分けていなかったから困る、というケースがほとんどです。
対策としては、売上が入金された時点で一定割合を納税用の口座に移してしまうのが確実です。金額の目安は業種や所得によって変わりますが、まずは入金額の2〜3割を別口座に置く、というルールから始めてみてください。
会計ソフトで日々の数字が見える状態にしておけば年の途中でおおよその着地が読めるので、取り分ける割合の精度も上がります。
通知が来てから慌てるのではなく、「来ることが分かっている」状態にしておく。それだけで、夏の資金繰りはかなり楽になります。
なお、どうしても納付が難しいときは、放置せず早めに税務署や都道府県税事務所に相談してください。
分割などの相談に応じてもらえる場合がありますが、延滞税は待ってくれません。連絡が早いほど選択肢は多く残ります。
まとめ
7月に通知が重なるのは、所得税と消費税という2つの「前払い」が同じ時期に来るから。どちらも来年の確定申告で精算されます。
減額申請や仮決算という見直しの余地はありますが、あくまで資金繰りのための微調整。無理に使う必要はありません。
8月には個人事業税が控えています。都道府県が課す地方税で、8月末・11月末の年2回。所得290万円以下ならかからず、納めた分は経費になります。
現実的な第一歩は、年間の納付を一枚のカレンダーにして、入金のたびに納税分を取り分けておくこと。それだけで、来年の夏は怖くなくなります。
