確定申告は毎年2月から3月。ですが、その時期に慌てる原因の多くは、申告そのものではなく、それまでに溜めてしまった記帳のほうにあります。
9月は下半期のまだ入り口に近い時期です。上半期の記憶がまだ残っていて、年末までにはまだ時間がある。記帳を整え直すには、ちょうどいい時期だと思います。
今日は、年末の自分を助ける「9月点検」と、青色申告特別控除を落とさないための準備を整理します。難しい話ではありません。今のうちにやっておくと後がラクになる、という実務の話です。
なぜ「9月」なのか
申告直前にまとめて記帳しようとすると、ミスが増えます。理由は単純で、記憶も資料も薄れているからです。
通帳に3月の入金があって、金額は分かるけれど何の仕事だったか思い出せない。レシートは残っているが、誰と会った打ち合わせか分からない。
半年以上前のことを確定申告時期に思い出そうとするのは、想像以上に骨が折れます。
9月であれば、1月から6月の分を、まだ記憶が残っているうちに点検できます。分からない入金があっても、メールやDMの履歴をさかのぼれば追えます。
そして、ここで一度整えておけば、年末から申告期にかけて「溜まったものを一気に片付ける」状況を避けられます。
もうひとつ、期の途中で自分の数字が見えるという利点があります。上半期の売上と経費が分かれば、今年の利益と納税額の見込みが立ちます。
機材を買うか、外注を増やすか、下半期の動き方も判断しやすくなります。申告のためだけの記帳ではもったいない、というのが正直なところです。
「調査を呼ばない帳簿」は、ふだんの積み重ね
先週は税務調査のあとの話を書きました。今回はそれを、日々の記帳のレベルに落としてみます。
売上を漏らさない。入金経路が複数ある方ほど、ここが穴になります。銀行振込、イベントでの現金売上、DL販売サイト、支援サイト、電子マネー。
まずは自分の入金経路を紙に書き出して、一覧にしてしまうのが早いです。経路そのものを把握できていれば、あとは各サイトの明細を落とすだけになります。
経費は「何のためか」を残す。領収書だけでは、あとから説明できません。日付の横に用途を一言書いておく。それだけで十分です。
自宅兼仕事場の家賃や通信費を按分している場合は、その割合をどう決めたのかを残しておきます。根拠があるかどうかはとても重要な要素です。
在庫を期中から数える。同人誌やグッズの売れ残りは、年末にゼロから思い出そうとすると相当に苦しい作業になります。イベントが終わったタイミングで残数をメモしておくだけで、確定申告時期の自分がかなり助かります。
通帳・カードと突き合わせる。帳簿と実際の入出金がずれていないか。9月に見つけたズレは、まだ直せます。2月に見つけたズレは、そのまま申告書に乗ります。
特別なことは何もしていません。淡々と、正確に。結局のところ、それがいちばん調査を呼ばない帳簿だと思っています。
青色申告特別控除を「落とさない」ための準備
8月3日の記事で、青色申告特別控除が最大75万円になる改正を取り上げました。ここでもう一度、今やるべきことに絞って整理します。
2026年分(来年3月の申告)までは現行どおりで、複式簿記+e-Taxなら65万円、紙で提出すると55万円、簡易簿記なら10万円です。
変わるのは2027年分からです。控除は75万円・65万円・10万円の3段階になります。複式簿記でe-Taxなら65万円、そこに「優良な電子帳簿」または「請求書データ等の自動連携」が加わって75万円。
一方、紙で提出している方は最大10万円まで下がります。簡易簿記のまま前々年の収入が1,000万円を超えている場合は、控除がなくなります。
ここで9月の話とつながります。優良な電子帳簿は、その年の1月1日時点で要件を満たしている必要があります。年の途中でソフトを変えても、その年には間に合いません。
さらに、優良な電子帳簿対応後の記帳は最長2か月の業務処理サイクルで進めることが前提とされていますから、申告の時期に一年分をまとめて入力するやり方では要件を満たせません。
つまり、年末に慌てて要件を満たすことは、制度上そもそもできない仕組みになっています。
今から確認しておきたいのは3つです。使っている会計ソフトが優良な電子帳簿に対応しているか(手書きやExcelでは対象外です)。その設定が有効になっているか。そして、e-Taxの環境が整っているか。マイナンバーカードは申請から発行まで1か月ほどかかります。
制度の脅しをしたいわけではありません。今のうちに整えておけば、来年以降の控除を守れる、という話です。
まとめ
- 9月は、上半期分を記憶が残るうちに点検できる、記帳の整え直しの好機です
- 調査を呼ばない帳簿は特別なものではなく、売上を漏らさず、経費の根拠を残し、在庫を把握する、その積み重ねです
- 青色申告特別控除は要件を満たさないと下がります。最大控除を守るなら、電子帳簿とe-Taxの準備は今から始めてください
まずは、上半期の通帳と帳簿を突き合わせてみるところから。それが、年末の自分を助ける現実的な第一歩です。
記帳が溜まっている、青色申告の要件が不安、という方は、スポット相談もご利用ください。
