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同人ゲームクリエイター向け 海外プラットフォームの税務会計

同人ゲームクリエイターのかたの販売プラットフォームはいくつかあります。海外プラットフォームは、どれも同じように見えて、収益の性質もお金の流れ方も少しずつ違います。今日は3つを並べて整理します。

目次

まず押さえる大枠――「収益とお金の流れ」が違う

Steamは販売収益です。Valveが購入者から集金し、締めごとにまとめて支払われます。

Patreonは継続支援収益です。サブスク型で毎月の対価が発生します。国内のFANBOX・Fantiaの海外版というイメージが近いです。

itch.ioは販売収益ですが、支払い方式が特殊です。itch.ioが集金してから支払うモードと、購入者の支払いが自分のPayPal等へ直接入る「direct to you」モードがあります。

direct to youによる報酬の受け取りはVAT(付加価値税)の徴収と納付を開発者自身が行う必要があるとされているため、ご自身で税務まわりをやりきるのはかなりハードルが高いです。

そして共通点として、どれも事業の収入として確定申告に含めます。「支援だから」「海外だから」「少額だから」申告不要、という誤解が最も多いところです。まずここを潰しておいてください。

項目別の比較

米国源泉税とW-8BEN

3つとも米国系のプラットフォームです。ここが一番重要な論点で、特にゲーム周りでは米国源泉税の話が必ずついて回ります。

米国の税制上、非居住者への支払いには原則として源泉徴収がかかります。ただし日米租税条約により、W-8BENを提出すれば減免を受けられます。逆に言えば、提出していないと本来払わなくてよい源泉税を差し引かれた金額しか入金されません。

W-8BENは、必ず各プラットフォームの管理画面から提出してください。提出場所はプラットフォームごとに異なるため、アカウント開設時の税務情報設定(tax informationなど)の項目を確認してください。

もし提出が遅れていても、あきらめないでください。源泉徴収された分は、その年のうちであれば、W-8BENを提出した上でプラットフォーム側の調整によって取り戻せる可能性があります。

「もう引かれてしまったから仕方ない」と放置せず、気づいた時点ですぐ提出し、プラットフォームのサポートに問い合わせてください。年度をまたいだりすると手続きが格段に面倒になります。

米国源泉税は「外国税額控除の対象ではない」

ここが誤解の多いポイントです。

「海外で税金を引かれたのだから、日本の確定申告で外国税額控除を使えばいいのでは」と考える方がいます。しかし、W-8BENを出していれば本来課されなかったはずの米国源泉税は、外国税額控除の対象になりません。

外国税額控除は、条約上その国が正当に課税できる税について、日本と二重課税にならないよう調整する制度です。

租税条約で免除されるはずのものを、書類未提出という自分側の事情で払ってしまった場合、それは「条約により課されないこととされる税額」に該当し、控除の対象外です。

つまり、W-8BENを出さなかった源泉税は、単純に取り戻せない損失になり得ます。「後で控除できるから」という発想は成り立ちません。だからこそ、収益が発生する前に提出しておくことが決定的に重要です。

支払サイクルと為替

入金タイミングと、円換算に使うレートの基準日をそれぞれ確認しておいてください。プラットフォームごとに締めと支払いの間隔が違います。

レポート

どのプラットフォームからも支払調書は届きません。各管理画面のレポートを自分でダウンロードして保存する運用が前提です。

プラットフォーム別のつまずきどころと、保存すべき明細

「後から追えなくなる」のが海外収益の一番怖いところです。プラットフォームごとに、何を保存しておくべきかを整理します。

Steam

保存すべきは、Steamworksの管理画面から出せる売上レポートです。地域別・タイトル別の販売数と売上、手数料、そして源泉徴収があればその金額が確認できます。

税務上の注意点として、消費税の課税判定には海外売上も合算します。これは前回のSteam記事で詳しく書いていますので、そちらもご確認ください。

Patreon

保存すべきは、月次の支払いレポートと、パトロンからの支援明細です。

Patreonで最も多い失敗が、毎月の入金を記帳せず年末にまとめて処理しようとすることです。継続支援は毎月入金があるため、その都度のレート換算が必要になります。

itch.io

保存すべきは、itch.ioのアナリティクス/売上ページのレポートに加えて、PayPal側の取引履歴です。

itch.ioは、直接決済モード(direct to you)だと売上が1件ずつ自分のPayPalに入ります。この場合、itch.ioの画面だけを見ていても収入の全体像は把握できません。PayPalの取引履歴とセットで管理する必要があります。

さらに、任意価格(pay-what-you-want)やバンドル参加時の収益配分は、レポートを保存していないと後から追跡が困難になります。バンドルは特に、1本あたりの配分額が後から計算されるため、その時点のレポートを残しておくことが不可欠です。

共通して決めておくこと

海外収益は、円換算と入金管理が複雑になります。帳簿の管理方法を、収益が発生する前に決めておいてください。

具体的には、レポートを保存する場所、月次で記帳するタイミング、円換算に使うレートの基準を、最初にルール化しておくことです。

まとめ

  • 3つの違いは「収益とお金の流れ」――まとめて支払い(Steam)、毎月の継続支援(Patreon)、直接決済もある販売(itch.io)
  • W-8BENは必ずプラットフォーム経由で提出する。特にゲーム周りでは米国源泉税が必ず論点になります
  • 提出が遅れても、年内であれば取り戻せる可能性があります。あきらめずにすぐ提出してください
  • W-8BEN未提出で引かれた米国源泉税は、外国税額控除の対象になりません。
  • 総額計上・レポートの自主管理は3つ共通の基本です

始める前に税務の扱いを確認しておけば、確定申告で慌てることはありません。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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