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同人ゲームをSteamで販売したら税務はどう変わるか

――著作権の使用料・変動所得・輸出免税・確定申告の基本

最近、Steamで同人ゲームを販売したい、あるいは始めたばかりという方からのご相談が増えています。

国内の同人販売(DLsite・Booth等)とは、税務上の扱いがいくつか根本的に違う点があります。

とくに『所得の種類』『消費税の扱い』『米国の源泉税』の三つは、直感的なイメージと実際の取り扱いがずれやすいところです。申告の前に知っておきたい基本を整理します。

目次

本編① Steam販売の中身

まず押さえておきたいのが、Steam(Valve社)を通じたゲームのダウンロード販売の性質です。

感覚としては「商品を売っている」ように見えますが、税務上は著作権の貸付(利用許諾)として捉えるのが基本です。これは国内販売でも国外販売でも同じ取扱いです。

  • 所得の種類は「著作権の使用料」。物販の売上ではなく、著作物をプラットフォーム側企業に貸与した対価としての性質を持ちます。
  • この使用料は「変動所得」に該当し、平均課税の対象になりうる。変動所得とは、年ごとの変動が大きい一定の所得のことで、原稿料・著作権使用料などが典型例です。当たり年と不作の年の税負担のブレを平準化する仕組みが使えます。

平均課税を使うと何が変わるか

累進課税では、収入が大きく跳ねた年に高い税率が一気にかかります。

平均課税は、その突出分を数年に均したものとして税率を計算し直す制度で、ヒット作が出た年の税負担を抑えられる可能性があります。

適用には要件(変動所得が総所得の一定割合以上であること等)と、確定申告書での計算明細の添付が必要です。Steamで急にヒットした年こそ、この制度の検討価値が高くなります。

本編② 消費税の取り扱い―「電気通信利用役務」ではなく輸出免税

Steam収益の消費税は、誤解が生じやすいところです。「国外事業者から受けるデジタルサービス=リバースチャージ」という話とは、立場が逆であることに注意してください。

ここで問題になるのは、海外に対して著作物の利用を許諾しその対価を受け取る側だという点です。

  • 著作権の貸付は「電気通信利用役務の提供」には該当しない。したがって、この収入をリバースチャージの文脈で捉えるのは適切ではありません。
  • 非居住者(Valve社)への著作権の貸付は、輸出免税取引(いわゆる0%売上)に該当する可能性が高い。消費税は課されないものの、取引自体は「課税売上」として扱われる点が肝心です。
  • 0%売上でも課税売上高には含まれる。そのため、課税事業者になるかどうかの判定(基準期間の課税売上高1,000万円の判定など)では、この輸出免税売上も合算して考える必要があります。国内販売が小さくても、Steam収益を含めると判定が変わることがあります。

ポイントは、「消費税がかからない=関係ない」ではないということです。

0%売上は課税売上の一種であり、課税事業者判定・インボイス登録の要否・還付の可能性のすべてに影響します。判定は慎重に行ってください。

本編③ 米国の源泉税――W-8BENと外国税額控除の落とし穴

Steamで受け取る対価は、米国から見ると「著作権の使用料(ロイヤリティ)」です。ここで登場するのが W-8BEN(米国の源泉徴収に関する届出書)です。

  • W-8BENを提出していれば、日米租税条約により、著作権の使用料に対する米国の源泉所得税は免税(税率0%)となります。
  • W-8BENを提出していないと、著作権の使用料として米国源泉所得税が徴収されたまま入金されます。

ここで見落としやすい重要な点

「米国で引かれた税金は、日本の確定申告で外国税額控除を使えば取り戻せる」と考えがちですが、この源泉税については外国税額控除は適用できません。

理由はシンプルで、この源泉税は本来、W-8BENを提出しさえすれば免税になるべきものだからです。

手続きを取れば課されなかったはずの税額は、外国税額控除の対象になりません。つまり、W-8BENの出し忘れによって引かれた米国源泉税は、日本では取り戻せず、米国での税務申告手続きが必要です。

ほったらかしにしているとそのまま持ち出し(コスト)になってしまう可能性が高いということです。

だからこそ、Steam販売を始める前にW-8BENを必ず提出しておくことが、最も確実で唯一の対策になります。

確定申告と日々の記録

  • 外貨(US$)収入の円換算:原則として、収入が確定した日のレートで円に換算します。継続適用を前提に換算方法を決め、毎期同じ基準で処理します。
  • Valveから日本での支払調書は発行されない:Steamのレポート(Payment Report等)を自分でダウンロードし、入金額・手数料・源泉税の有無を月次で記録・保管しておく必要があります。

まとめ

Steam販売は、国内の同人販売の延長ではなく、「著作権を海外企業に貸し付けて使用料を得る取引」として捉えると全体像がつかめます。最初に押さえるべきは次の三点です。

  • ① 所得は著作権の使用料=変動所得。ヒットした年は平均課税の検討を。
  • ② 消費税は輸出免税(0%売上)だが課税売上には含む。課税事業者判定は合算して慎重に。
  • ③ W-8BENは必ず提出。未提出で引かれた米国源泉税は外国税額控除でも取り戻せない。

販売を始めるタイミングでここを整理しておけば、確定申告の直前に慌てずに済みます。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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