漫画家・同人作家が知っておきたい小規模企業共済、iDeCo、NISAの基本的な内容と使い方について解説します。ある程度収入が安定してきたときに検討してみてください。
小規模企業共済—自分で積み立てる「退職金」
会社員として勤めた経験があるクリエイターならご存知の通り、多くの会社では退職金が用意されています。
しかしフリーランスにはその仕組みがありません。自分で自分に給料を払うことができない以上、退職金も自分では準備できない—それが現実です。
ただし、対応策はあります。「小規模企業共済」という制度をご存知でしょうか? 簡単に言うと、クリエイターが自分で自分の退職金を積み立てるイメージの制度です。
積み立てた掛け金は「所得控除」の対象となるため、課税される所得を減らすことができます。月額最大70,000円、年間最大840,000円まで積み立て可能で、この金額が所得から控除されることで所得税・住民税が軽減されます。
注目されがちなのは節税効果ですが、もう一つの大きなメリットが「退職金として受け取れる」点です。
満期を迎えた際には、一括の退職金方式か年金方式かを選択して受け取ることできます。退職金方式で受け取った場合は退職所得として、年金方式で受け取った場合は雑所得(公的年金等)として計算されます。
退職所得には「退職所得控除」という有利に計算できる税金のしくみが現在はあるため、受け取り時の税負担を大幅に抑えられます。
加入期間が長いほど控除額も大きくなるため、少額でも早めに始めておくことが重要です。無理のない範囲で、自分の退職金を積み立てるつもりで小規模企業共済を始めておくことをおすすめします。
iDeCo—厚生年金のない分を自分で補う
次に考えておきたいのが「年金」です。
私はクリエイターへの法人化をあまり勧めていません。場合によっては法人化が有利なケースもありますが、社会保険料が高くなるため、慎重な立場をとっています。
そのため、フリーランスのクリエイターにおすすめしている社会保険は、「文芸美術国民健康保険組合(文美国保)」の健康保険と国民年金の組み合わせです。
国民年金のみの加入となると、会社員時代より将来の受給年金額が減ることはある程度意識しておく必要があります。会社員の場合、給与から厚生年金保険料が控除され、さらに同額を会社が折半負担してくれます。
年金は「老齢基礎年金(1階部分)」と「老齢厚生年金(2階部分)」の2階建て構造ですが、フリーランスには2階部分がありません。
その不足を自分で補う手段として有効なのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。
iDeCoは、自分で将来の年金を積み立てて運用する制度で、国が公的年金を運用して将来の受給額を増やそうとするのと同じ発想です。
国民年金加入者がiDeCoを活用することで、公的年金の上乗せとして将来の年金を増やすことができます。掛け金は小規模企業共済と同様に全額所得控除の対象となるため、積み立てた分だけ所得税・住民税が軽減されます。
なお、受け取り時は公的年金等として課税対象となりますが、元々の年金額が少ないフリーランスの場合、大きな税負担になるケースは少ないでしょう。
将来の年金を自分で上乗せしていく選択肢として、iDeCoは非常に有効です。
NISA—自由に引き出せる非課税の投資枠
クリエイターにとってNISAはどう位置づけるべきでしょうか。
NISAの最大のメリットは「運用益や配当が非課税になる」点です。また、iDeCoとの大きな違いとして「いつでも自由に引き出しができる」という点も挙げられます。
投資に関心がある方はiDeCoとNISAを両方活用していただくのが良いと思いますが、投資に苦手意識がある方は無理にNISAを始める必要はありません。
ただし、iDeCoは原則60歳になるまで引き出しができない点に注意が必要です。資金がロックされるとも言えますので、この点はNISAとの違いです。
またNISAには「損失が出た場合に他の口座との損益通算ができない」というデメリットもあります。
とはいえ非課税の枠は非常に大きく、配当性向の高い株式や、応援したい企業の株式を保有したい場合には、有力な投資の選択肢となります。
優先順位としては、小規模企業共済やiDeCoを先に活用したうえで、余裕があればNISAを活用するという順番がおすすめです。
NISAは積み立て金額が所得控除の対象にはならない(運用益が非課税になるだけ)という点は、必ず押さえておいてください。
■まとめ—稼げるようになったら「老後」も設計する
ある程度収入が増え、確定申告でできる節税に限界を感じてきたクリエイターは、次のステップとして「お金の運用・老後の備え」を考え始めるタイミングに来ています。
フリーランスは会社員より自由度が高い分、自分でさまざまなことをコントロールする自律性が求められます。老後の生活資金を誰も用意してくれない以上、自分で計画的に準備していくことが不可欠です。
まずは以下の3点から始めてみましょう。
・小規模企業共済:自分の退職金を積み立て、節税しながら老後資金を確保する
・iDeCo:厚生年金のない分を自分で補い、年金を上乗せする
・NISA:余裕資金を非課税で運用し、資産を育てる
稼げるようになってきたら、改めてこの3つが自分に合っているかどうかを確認することをおすすめします。
フリーランスクリエイターとして長く活動し続けるためにも、今のうちから老後を見据えたマネープランを意識しておきましょう。
