火曜日の記事では、確定申告や記帳のご依頼をいただいたときに、最初に確認する「売上」のポイントをお話ししました。今回はその経費編です。

経費を確認するとき、チェックしているのは金額の大きさよりも「説明できるかどうか」です。家事按分の割合に根拠があるか。その支出がなぜ仕事に必要だったのかを言えるか。同じ支出でも、説明の仕方と残っている記録によって判断は変わります。
今回は、経費で確認しているポイントを3つに分けて紹介します。
① 家事按分―割合に「根拠」があるか
自宅で制作している方の家賃、電気代、通信費などは、仕事とプライベートの両方に使う支出(家事関連費)です。経費にできるのは、仕事に使った部分だけです。
ここで確認しているのは、割合そのものよりも「その割合をどうやって決めたか」です。
「なんとなく50%」「自宅で仕事をしているから80%」では、税務調査で理由を聞かれたときに説明がつきません。根拠としては、たとえば次のようなものがあります。
- 家賃:住まい全体の面積のうち、仕事部屋や作業スペースが占める割合
- 電気代:作業時間や、パソコン・液晶タブレットなど仕事用機器の使用状況
- 通信費:インターネットやスマートフォンを仕事に使っている時間の割合
よくあるのは、生活スペースと作業スペースが分かれていないワンルームで、家賃の8割を経費にしているケースです。
この場合は、作業机や資料棚が占める面積、1日のうち作業に使っている時間などをもとに、割合を組み立て直すことになります。
結果として割合が下がることもありますが、根拠のある数字であれば、聞かれたときに落ち着いて説明できます。
また、一度決めた割合は、毎年同じ考え方でそろえておくことが大切です。引っ越しや作業部屋の変更といった理由がないのに、年によって割合が大きく動いていると、その理由を聞かれやすくなります。
なお、持ち家の場合は家賃の代わりに、建物の減価償却費、固定資産税、住宅ローンの利息部分などが按分の対象になります(ローンの元本の返済部分は経費になりません)。
▶ 経費になるかどうかの判定の流れは「必要経費の判断フロー」の記事で詳しく解説しています。

② 業務との関係―「なぜ必要だったか」を説明できるか
クリエイターの経費で判断が分かれやすいのは、資料代、取材を兼ねた旅行やイベント参加、衣装や小物など、趣味と仕事が重なりやすい支出です。
経費になるかどうかは、「好きで買ったかどうか」ではなく「仕事にどう使ったか」で決まります。好きなものが仕事の役に立つこと自体は、クリエイターにとってごく自然なことです。そのうえで、説明を支えるのが記録です。
- 取材のメモや写真
- どの作品の、どの場面に使ったか
- 打ち合わせの相手と目的
取材として作品に反映したのか、その記録が残っているかどうかで見られ方が変わります。実際の税務調査で確認されるのは、こうした記録です。
漫画・フィギュア・ゲームは、計上する前にひと呼吸
ご依頼をいただいた際に特に多いのが、漫画作品、フィギュア、ゲームなどを経費に入れているケースです。
これらは仕事の資料になることもありますが、本来は個人の楽しみのための「嗜好品」に近いものです。税務調査でも、仕事の経費ではなく私的な支出(家事費)ではないかと見られやすい分野です。
こうした支出を計上するかどうか検討するときは、次の点を確認しています。
- 具体的な仕事との結びつき:連載中・依頼中の作品の題材やジャンルと関係があるか。「いつか描くかもしれない」は根拠として弱くなります
- 使い方:フィギュアをポーズや立体感の参考として撮影・模写した、ゲームを受注案件の世界観確認のためにプレイしたなど、資料として使った形跡があるか
- 量と時期:購入量が仕事の規模に見合っているか、案件の時期と購入の時期が対応しているか
- 買い方:観賞用・保存用と同じものを複数買う、未開封のまま保管しているといった買い方は、資料というよりコレクションと見られやすくなる
特定の作品のファンアート・グッズイラストの依頼のように、仕事の内容と直結していれば説明はしやすくなります。一方で、日頃楽しんでいる作品をまとめて「資料代」に入れている場合は、経費にしないという選択肢も含めて見直すことをおすすめしています。
説明できないものは、無理に経費にしない。これも大切な判断の一つです。
③ 見落としやすい処理―漏れ・ダブり・計上のしかた
最後は、根拠や説明とは別に、処理の面で見落としやすいポイントです。
- 計上もれ:プライベートのクレジットカードや現金で払った経費、立て替えた経費が拾えていない
- ダブり:カードの明細と、口座からの引き落としの両方から計上している。売上編と同じく、会計ソフトの自動連携で起きやすいミスです
- 計上のしかた:一定額以上のパソコンやタブレットなどの機材は、原則として買った年に全額を経費にできず、何年かに分けて経費にします(減価償却)。青色申告の方は、少額の機材を一度に経費にできる特例が使える場合があります。この特例は令和8年度の税制改正で対象金額が見直されているため、最新の基準で確認しておきましょう
- 年をまたぐ支払い:翌年分の年会費やサブスクリプションをまとめて払った場合、その年の経費にしてよい範囲も確認します
まとめ
- 経費の確認で見ているのは、金額よりも「説明できるかどうか」
- 家事按分は割合の根拠を、趣味と重なる支出は仕事との関係を、記録で説明できるようにしておく
- 漫画・フィギュア・ゲームなど嗜好品に近いものは、計上する前に「どの仕事に、どう使ったか」を確認する
- プライベートのカードや現金で払った経費の漏れ、明細の二重取り込み、高額な機材の計上のしかたも点検する
現実的な第一歩として、家事按分の割合を「何を基準に決めたか」、一行で書き出してみてください。書けなければ、そこが見直しのポイントです。
