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〈揉める相続〉調停・審判になったら——換価分割・代償分割で変わる税務

「当事者同士の話し合いでは、もう決まりそうにない」

遺産分割がこじれたとき、次に出てくるのが家庭裁判所の調停・審判です。

今回はその先、最終的にどう分けて、そのとき税金はどうなるのかを整理します。手続きの流れと、分け方による税務の違い。足元を確認する話として読んでいただければと思います。

目次

まとまらないと、どこへ進むのか

当事者だけの協議で決まらないとき、まず進むのが家庭裁判所の「遺産分割調停」です。調停委員を間に入れた話し合いであって、いきなり白黒をつける手続きではありません。

それでも合意できなければ「審判」に移り、裁判所が分割方法を決めます。

問題は時間です。調停は複数回の期日を重ねることが多く、決着まで年単位になることも珍しくありません。そしてその間も、相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月)は待ってはくれません。

以下の記事で触れたとおり、まとまらなければ法定相続分でいったん申告し、分割が決まってから修正申告や更正の請求で調整する、という二段構えになります。

手続きそのものは弁護士の領分ですが、税務の期限が別のスピードで進んでいるという点は、早い段階で意識しておきたいところです。

最終的な「分け方」で、税務が変わる

決着したときの分け方は、大きく3つです。

現物分割 — この土地は長男、預金は次男、というように財産を現物のまま分ける方法。シンプルですが、価値をきれいに揃えにくいのが難点です。

代償分割 — 一人(または一部)が財産を多めに取得し、他の相続人に「代償金」を支払って調整する方法。実家など「分けられない財産」を一人が継ぐときによく使われます。

ここで誤解が多いのが、代償金は原則として贈与ではないという点です。あくまで遺産分割の方法として支払うものなので、相続税の計算上、支払う側は取得額から差し引き、受け取る側は加算する形で調整されます。

換価分割 — 財産を売却して、その代金を分ける方法。「誰も土地は要らない」「きっちり公平に分けたい」というときの選択肢です。

この換価分割で見落とされやすいのが、売却は譲渡である以上、相続税とは別に譲渡所得税・住民税が各相続人にかかりうるということ。

しかも取得費と取得時期は被相続人から引き継ぎます。先代が古くから所有していた土地だと取得費が小さく、思ったより税額が膨らむこともあります。

「相続税を払って終わり」ではない。ここが今回いちばんお伝えしたい点です。

分け方を決める前に、確認しておきたいこと

  • 換価分割は、売った年に譲渡所得税がかかる。分けたお金がそのまま手元に残るわけではないと見込んでおく
  • 小規模宅地等の特例(②で触れた評価減)が使えるかは要件次第。未分割のままだと当初の申告では適用できず、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくといった手当てが要る
  • 相続後に売却するなら、「取得費加算の特例」(相続税の一部を取得費に加算できる)や空き家譲渡の特例が使える場合がある

どの分け方が有利かは、財産の種類と相続人それぞれの事情で変わります。感情だけで決めきらず、税額まで含めて比較する価値は十分にあります。

それでも、揉めないに越したことはない

3回にわたって「揉めた後」の話をしてきましたが、実務で繰り返し感じるのは、揉めること自体のコストの大きさです。

まず時間と費用。調停が年単位になれば、弁護士費用も、税務上の手戻り(いったん申告 → 修正申告・更正の請求)も、当初の想定を超えていきます。「そこまでかかるとは思わなかった」というのが、ほとんどの方の実感です。

そして精神的な負荷。これは金額には表れませんが、実際にはいちばん重い印象です。相手は他人ではなく親族ですし手続きが終わっても関係が元に戻らない、という例は少なくありません。

だからこそ、次のような心当たりがあるなら、生前からの対策を考える価値があります。

  • 財産の大半が自宅や事業用不動産で、そもそも分けづらい
  • 相続人のあいだに、すでに感情的な溝がある
  • 特定の相続人だけが親の介護や家業を担ってきた

遺言、生命保険を使った代償金の準備、生前贈与、不動産の組み替え。打てる手はいくつもありますが、いずれも相続が起きてからでは選べません。

まとめ

  • 協議がまとまらなければ調停・審判へ。ただし相続税の10ヶ月の期限は、それとは別に進む
  • 最終的な分け方(現物・代償・換価)で、かかる税金が変わる。とくに換価分割では譲渡所得税が別途出てくる
  • 代償金は原則として贈与ではない
  • こじれた後でも、分け方の工夫で負担を軽くできる余地はある。ただし時間・費用・精神的な負荷まで考えれば、分けづらい財産や関係の懸念があるなら、生前の対策のほうがはるかに現実的

分け方で税額がどう変わるか、決める前に一度整理しておきたいという方は、スポット相談もご利用ください。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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