3週にわたって税務調査の話を書いてきました。狙われやすい論点、当日より前の準備、実際に指摘されるポイント。今日はその締めとして、「調査が終わったあと」の話をします。
調査は、当日で終わりではありません。何をどう直すか、いくら払うことになるか、そして来年以降どうするか。
むしろ、ここからが本番です。この部分を知らないまま調査を迎えると、終わってから慌てることになります。
終わり方は3つある——是認・修正申告・更正
税務調査の終わり方は、大きく3つです。
申告是認は、問題なしという結論です。実地調査の結果、更正や決定をすべきと認められない場合には、その旨が書面で通知されます。件数としては多くありませんが、確かにあります。
修正申告は、指摘を受け入れて、自分で申告をやり直すものです。実務ではこれが最も多い終わり方です。
更正は、指摘に納得できず修正申告をしない場合に、税務署が処分として税額を直すものです。
この違いは、名前の違いにとどまりません。修正申告を出すと、その内容について不服申立てをすることが、原則としてできなくなります。自分で税額を確定させたことになるからです。
一方、更正という処分を受ければ、再調査の請求や審査請求で争う道が残ります。
これは調査官の側にも周知されている点で、修正申告をすすめる際には「修正申告書を提出した場合は不服申立てはできないが、更正の請求はできる」旨を説明し、その内容を書いた書面を渡すことが法律上義務づけられています。
つまり、あの書面は形式的な紙ではなく、選択の分かれ道を知らせるものです。
だからといって、争うことをおすすめするわけではありません。指摘の大半は、事実関係を確認すれば納得できるものです。
ただ、「早く終わらせたいから、とりあえず修正申告」は、後戻りのできない選択でもあります。納得できていない部分が残っているなら、そこは分けて考えてかまいません。内容を確認する時間をもらうことも、できます。
いくら払うことになるのか
追加で納めるのは、もともとの税金(本税)だけではありません。
過少申告加算税は、原則10%です。ただし、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分については15%になります。
ここで大きいのが、動いた時期による違いです。調査の通知を受ける前に、自分で気づいて修正申告をした場合、過少申告加算税はかかりません。
通知を受けたあとでも、調査で更正されることを予知する前に出したものであれば、5%(加重部分10%)に軽減されます。気づいた時点で早く動くほど、負担は小さくなる仕組みです。
重加算税は、仮装や隠蔽があったと認定された場合に、過少申告加算税に代えて課されるもので、税率は35%です。無申告加算税に代えて課される場合は40%になります。
さらに、過去5年以内に同じ税目で無申告加算税や重加算税を課されたことがあると、10%が上乗せされます。売上の除外は、この認定を受けやすい典型例です。
延滞税は、本来納めるべきだった日からの利息にあたるもので、日割りでかかります。
令和8年(2026年)は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を経過した日以後が年9.1%です。過去の年分をさかのぼって直すほど、じわじわ効いてきます。
そしてもうひとつ、見落とされがちな点があります。仮装・隠蔽があった年分や無申告の年分については、確定申告書に記載していなかった費用は、原則として必要経費に算入できません。
帳簿書類などから支払先や日付が明らかであるといった場合を除きます。「売上は抜いていたが、経費も使っていた」という主張が、そのままでは通らないことがある、ということです。
終わったあとにやること——3つ
1. 指摘された論点を、来年の帳簿の作り方に落とす
現金売上をどう記録するか、在庫をどう数えるか、按分の根拠をどこに残すか。受けた指摘は、そのまま次年度以降の「型」を作る材料になります。ここをやらないと、同じ指摘を数年後にもう一度受けることになります。
2. 納税資金の段取りをつける
一括で払えない場合、猶予の制度があります。認められれば分割で納めることができ、延滞税の一部が免除される場合もあります。いちばん重いのは、放置して滞納することです。早めに税務署か税理士に相談してください。
3. 書類の残し方を決める
何を、どこに、いつまで。調査で「出せなかった」ものが、そのまま指摘につながっているケースは少なくありません。終わった直後の記憶が新しいうちに、保管方法や置き場所を決めてしまうのが効率的です。
そして、調査を受けたこと自体を、必要以上に引きずらないこと。調査は罰ではなく手続きです。終わったあとの整え方のほうが、この先の何年かにずっと効いてきます。
まとめ
- 終わり方には是認・修正申告・更正の3つがある。修正申告を出すとその内容で争えなくなる点は、知ったうえで選ぶ
- 払うのは本税だけではない。加算税と延滞税が乗る。重加算税は35%と重く、売上除外は認定を受けやすい
- 気づいた時点で自分から動くほど負担は軽くなる。調査の通知前の自主的な修正申告なら、過少申告加算税はかからない
- 現実的な第一歩は、指摘された点を「来年の帳簿のルール」に一つずつ書き換えること
3週間の話をひとことでまとめるなら、事前も、当日も、その後も、知っていれば備えられる、ということです。
調査の連絡が来た方、終わったあとの手続きに迷っている方は、スポット相談もご利用ください。
