「これ、経費になりますか?」という質問は、クリエイターの方からよくいただきます。誰かに教わるわけでもなく何となく経費、たぶん経費じゃないみたいな感じで判断しているかたも多いのではないでしょうか。今日は、漫画家・同人作家の経費について、整理してみます。
経費とは何か—「事業に関連する支出」かどうかが基準
税務上の経費は、「事業に関連する支出」と「個人の支出(家事費)」の境界線が重要です。その線引きが曖昧だから、判断に迷う場面が生まれます。
基本的なルールは、「事業をするうえで必要な支出」であれば経費になる可能性がある、ということです。逆に言えば、事業と無関係な支出—いわゆる「生活費」は経費になりません。
そして、「衣・食・住」に関わる支出は、仕事をしていなくてもかかるもの。だからこそ、より高い業務関連性・必要性が求められます。
漫画家・同人作家が経費にできるもの(具体例)
① 画材・ソフト代
ペンタブ、Clip Studio、Photoshopなど、実際に作品制作に使う道具やツールのサブスクなども経費になります。
ただし、10万円以上の高額な機材は「固定資産」として減価償却の対象です。(※青色申告の場合は30万円未満の少額減価償却資産の特例を使える場合も。改正で40万円未満になりました。)
② 資料代
漫画の背景資料、建築関連の本、衣装の参考書など、制作のために購入した本や資料は経費です。
ポイントは「趣味・プライベートで読んでいる本」と「制作に必要な本」を区分できるかどうか。同じ本でも、「この作品の〇〇シーンを描くために必要だった」と説明できれば、経費として計上しやすいです。
③ イベント参加費
コミケ参加費、各種即売会のブース代は経費です。作品を販売する目的で参加しているなら、交通費・宿泊費・印刷費もあわせて漏れがないようにしましょう。
領収書がない場合でもレシートがあればよいですし、請求書+支払ったことが分かる振込明細などを保管しておくのが望ましいです。
現金払いでレシートもない場合はメモでも構いませんので記録を残しておきましょう。日付、金額、支払相手、内容を記録しておきます。
④ 交通費・宿泊費
全国のイベントに参加するための交通費・宿泊費は経費になります。ただし「友人に会いがてら」という側面がある場合は、旅行費用とイベント参加費を按分する必要があります。
⑤ 通信費・データ通信費
SNSでのファン交流、プラットフォームでの販売など、事業に関連する通信費は経費になります。プライベートと混在している場合は、使用割合に応じて按分します。
経費にならないもの・グレーゾーン
衣服代
基本的には個人の支出として扱われます。「キャラクターの衣装を完全再現するための衣装一式」のような明確な制作目的がある場合は、その部分だけ経費になる可能性はありますが、判断が難しいケースが多いです。
食事代
一人で作業中の食事は、税務上「生活費」として扱われるのが一般的で、経費にはなりません。打ち合わせでの飲食代は「会議費」として計上できますが、一人作業中の食事は対象外です。
「仕事中の食事だから経費にしたい」という気持ちはよくわかります。ただ、食費は「仕事をしていなくてもかかるもの」。税務上はより厳しく見られます。
カフェなどでの作業も打ち合わせで相手がいる場合は食事の代金も経費に含まれますが、一人で作業している場合には飲み物の代金だけにしておくのが安全です。
健康器具・清涼飲料水など
ステッパーや健康グッズ、清涼飲料水なども、よくご質問をいただく項目です。
「創作効率が上がる」「健康を維持して仕事を続けるために必要」という理由はわかりますが、税務上の判断は厳しいです。
所得税法では、必要経費となる家事関連費は「業務の遂行上必要であり、かつその必要な部分を明らかに区分できる場合」が基本的な処理の基準です。
健康器具は業務そのものに直接使用するものではなく、「健康維持を通じて間接的に業務効率に寄与する」という位置づけになります。
また「健康管理」は業務上の必要性であると同時に、私生活における側面も強く、業務使用部分を明確に区分することが実質的に困難です。
たとえば昇降デスクは「執筆作業に直接使う什器・備品」として経費性が認められやすいのに対して、ステッパーやマッサージチェア、健康グッズは目的が「健康維持」になるため、税務上の取り扱いが異なります。
清涼飲料水なども同様です。「仕事中に飲むもの」という実態はあっても、飲食物は私生活でもかかるものであり、業務との区分が困難と判断されます。
趣味の活動との区分
「アニメや漫画を見るのは仕事の参考になる」という判断は、実際には「趣味と実益の混在」として判断が難しい案件です。「好きだから」と「必要だから」は違う——その線引きが重要です。
「これは経費か?」で迷ったときの3つの判断基準
迷ったときは、次の3点を確認してみてください。
・事業との関連をはっきり説明できるか
説明できれば、その内容を帳簿に記載しておく。説明できなければ、経費計上を避けるのが無難です。
・「個人の支出」と「事業の支出」が混在していないか
混在している場合は「按分」という方法で、事業に必要だった部分のみを計上します。
・領収書や証拠が残っているか
税務調査で指摘されたとき、説明できるだけの記録が必要です。
完璧を目指さず、「わかる範囲を整理する」ことから
ひとりで活動しているクリエイターだからこそ、経費管理がテキトーになりやすい面があります。でも「何が経費で、何がそうではないか」を一度整理しておくだけで、確定申告がずっとラクになります。
特に「衣・食・住」「健康」に関わる支出は、必要性の説明が難しいケースが多いです。迷ったときは、無理に経費計上するよりも、専門家に一度確認することをおすすめします。
