中小企業の株式対策ができていない場合、相続が起こるたびに分散する可能性が高まります。
株式が分散しても大きな会社や上場会社ではない場合にはメリットはなくデメリットしかありません。
分散を防止する対策がまだの場合には導入を検討しましょう。
相続した株式の行方
相続が起きると株式が分散していく可能性が高まるというのはどういう状況か整理しておきます。
ずいぶん昔ではありますが株式会社設立には株主が7人以上必要などの制約がありました。
社歴の長い会社だとこの名残があって株式を親族など複数人で所有しているケースがいまでもあります。
最近に起業した会社だと経営者=株主というかたちでおひとりで100%ということも多いです。
仮に先代経営者から3人の子に株式を相続させたとしましょう。経営者である子は3,000株、他の2人は1,000株ずつとします。
経営者である子の後継者にはそのまま贈与や相続でスライドできる可能性がありますが、ほかの2人が持つ1,000株ずつは何もしないとどうなるでしょうか。
それぞれ配偶者がいて、子どもが2人、3人だと配偶者と子どもは法定相続人ですから、1,000株が400、200、200、200株などと分けることは実際に可能です。
こうなると1,000株がどんどん細かくなって相続人に分散されていきます。集約させるだけでも一苦労でしょう。
子がおらず配偶者だけの場合には経営者からみるときょうだいの配偶者になるわけでますます遠くなります。
その配偶者が株を相続するまではまだ収拾がつく可能性はありますが、問題はそのままその配偶者が亡くなると姻族側に財産が相続されますので、会ったことも見たこともない人に株が渡る可能性は無きにしも非ずです。
交渉すら難しくなる可能性もありますので、分散をまずは防止することから検討しましょう。
譲渡制限、買い取り請求
会社の状態でいうと公開会社と非公開会社にわかれますが、株式を譲渡制限株式というもののして非公開会社にしておくのがよいです。
定款の書き換えなども必要になってきますがまず自社の登記簿謄本を取ってもらえば譲渡制限株式かどうかわかります。
登記簿謄本に「株式の譲渡制限に関する規定」という文言が入っているか確認してみましょう。
譲渡制限株式になると文字通り株式を売ったり買ったりすることに制限がかかります。具体的には取締役会や株主総会で承認を受ける必要があり、好き勝手に売却することができないということです。
そのため株式の分散を防止するために有用です。
売ったり買ったりの制限がかかるだけだとまだ分散した状態ですからここからさらに一歩踏み込んで、その分散してしまっている株式を会社や経営者が買取できないかの交渉を検討しましょう。
親族であれば贈与でもよいでしょうしそのあたりは個別の状況に寄りますのでなんともいえません。
個人で買い取る場合や法人で買取する場合には価格計算が異なることがありますので必ず事前に税理士に相談しておくのがよいです。
ご存命の間に交渉が難しい、所有株式数が少ないという場合には相続が起きたときに買い取り請求をすることも選択肢にいれておきます。
これを行うためには別途定款に定めを置く必要がありますが、それにより相続人等に売り渡し請求、つまり会社に売り渡してくださいと請求することができます。
価格交渉も可能ですが折り合いがつかなければ裁判所で価格決定がなされますが、最終的には集約できるということは頭の片隅に置いておきましょう。
会社の資金的に問題なければ買い取るのが一番スムーズなこともあります。
まとめ
株式は分散していると意思決定などに影響を及ぼすことがあり、利害関係も対立することがあります。
中小企業が経営者=オーナーというのはやはり意思決定が早くできてやりたいこともできますので、分散対策ができていない場合には早めに動きましょう。