ご自身で帳簿付けをされる事業者様が増える中、クラウド会計ソフトを活用される方も多くなっています。しかし、クラウド会計を使っているからといって完璧というわけではありません。帳簿の精度を上げるために最低限チェックしておきたい3つのポイントをお伝えします。
1. 請求書と売掛金の処理
クラウド会計での請求書システム連動の仕組み
最近はクラウド会計ソフトで帳簿付けをしている事業者様も増えてきました。多くの場合、そのクラウド会計ソフトで用意されている請求書システムを使用されています。他の請求書発行システムや販売管理システムを利用している場合でも、基本的な考え方は同じです。
クラウド会計ソフトの請求書発行システムは、基本的に会計と連動する仕組みになっており、以下のようなプロセスで処理されます:
業務完了 → 請求書発行 → 請求書金額の入金処理
請求書発行と入金処理を請求書システム側で行うことで、会計ソフトへ自動で連動します。
具体的な連動の流れ:
- 請求書発行時:請求書システムで作成・確定 → 会計ソフト側:売掛金/売上 の仕訳が自動登録(設定により異なります)
- 請求書金額入金時:請求書システムで入金処理 → 会計ソフト側:普通預金/売掛金 の仕訳が自動登録
注意すべき点
クラウド会計と連動するタイプの請求書システムでは、請求書発行や入金処理が連動して半自動的に仕訳登録される可能性があるため注意が必要です。どのような内容で連動するのかは各クラウド会計ソフトによって特徴がありますので、一度確認しておくことをおすすめします。
売掛金の残高照合の重要性
売掛金の残高照合も定期的に行うことをおすすめします。売掛金の残高が合わないケースをよく見かけますが、以下のような原因であることが多いです:
- 売掛金マイナス残高:売掛金を計上していないのに、入金時に売掛金として計上してしまった場合
- 売掛金プラス残高:売掛金の入金金額が何らかの理由で異なり、請求時との金額に差異がある場合
適切に処理できている場合、売掛金の残高は基本的にゼロ、もしくは未入金分のみが残っている状態です。売掛金の残高がマイナスになっているのは何かしら問題があるため、必ず確認して修正しておきましょう。
2. 給与・役員報酬の処理
クラウド給与システムとの連動
役員報酬や給与についても、クラウド会計ソフトに付属している給与計算システムで処理することができます。これは前述の請求書発行システムと同様に、給与計算の結果がクラウド会計ソフトへ連動する仕組みです。正しく計算して連動し、振込処理を行わないとズレが生じてしまいます。
役員報酬の注意点
役員報酬の場合、基本的には定期同額給与として毎月同額で支給することになります。そのため「金額は毎月変わらない」という先入観を持たれる方が多いのですが、実際には手取り金額に変更が生じるタイミングが年に何度かあります。
主な変更要因:
住民税の特別徴収
通常、給与や役員報酬からは住民税を会社側が預かり(天引き)、市区町村に納付します。この住民税額が6月分から変更になることがあり、また6月分と7月分は月割りの関係で端数処理により金額が異なることがあります。
具体例:
- 5月分住民税:15,000円
- 6月分住民税:20,000円
- 7月分住民税:19,500円
社会保険料率の変更
社会保険料率の変更は毎年9月に行われるため、計算金額に変更が生じる可能性があります。
「役員報酬だから一年間金額が変わらない」という先入観で前月と同様に処理してしまうと間違いの原因となります。毎月の振込金額を必ず確認することをおすすめします。
3. 銀行残高の照合
帳簿残高と実際残高の突合
銀行残高についても、帳簿上の金額と実際の口座残高(通帳やオンライン明細)に差がないか定期的に確認することが重要です。
クラウド会計ソフトで銀行口座とのデータ連携をしている場合、残高が合うことを前提に考えがちですが、実際には相違が発生することがあります。クラウド会計ソフト側は帳簿のため、自由に入力や削除ができてしまうことも要因の一つです。
残高照合機能の制限
クラウド会計ソフトによっては、残高照合機能が契約プランによって制限されている場合があります。こまめに確認する習慣がないと、ズレたまま期末を迎えることになってしまいます。
一年間の銀行口座残高の推移と実際の通帳(オンライン明細含む)との突合・修正作業は、かなりの時間と手間を要します。取引が多ければ多いほど時間と手間がかかるため、少なくとも毎月単位で銀行口座の残高を合わせる(帳簿と通帳・明細)作業をタスクとして組み込んでおくことが望ましいです。
まとめ
クラウド会計ソフトは大変便利なツールですが、完全自動ではありません。帳簿の精度を保つためには、以下の3点を定期的にチェックすることが重要です:
- 請求書と売掛金の処理:連動システムの仕組みを理解し、売掛金残高の照合を行う
- 給与・役員報酬の処理:住民税や社会保険料の変更により手取り額が変動することを認識し、毎月の振込金額を確認する
- 銀行残高の照合:帳簿残高と実際残高を定期的に突合し、差異があれば速やかに修正する
これらのポイントを押さえることで、決算時の修正作業を大幅に軽減でき、より正確な帳簿を維持することができます。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。