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漫画家・同人作家の法人成りの検討ポイント

漫画家・同人作家の法人成りの検討ポイント

漫画家・同人作家のかたでも法人成りを検討することがあります。法人成りについて整理しておきましょう。

確定申告の時期ですから終わったら今後どうしていくのがよさそうかじっくり検討したいところです。

目次

社会保険料があがる

社会保険料については健康保険料と厚生年金の2つについて検討します。

まず健康保険料ですが、漫画家・同人作家の方ですと文芸美術国保がおすすめです。こちらは漫画協会などに加盟すると申込できます。

おすすめの理由としては所得に関わらず健康保険料が一定ということです。つまり所得が多くても、少なくても保険料が決まっていて組合員は24,800円/月(令和5年度の予定保険料)です。

国民健康保険の場合には年齢や収入も左右されますが仮に最高限度額だと102万円/年(月額で85,000円 京都市の場合)です。

なので漫画家・同人作家の方は文芸美術国保に加入するのがよいのですが、法人成りするとこれがどうかわるかみておきます。

法人成りをして自分宛てに役員報酬を支給する場合、40歳の方で月額報酬50万円だと29,000円ほど。月額報酬100万円だと58,000円ほどです。

国民健康保険と比べると安く見えるかもしれませんが社会保険料を法人が払うときには労使折半といって、報酬を受け取る方と会社で保険料をそれぞれほぼ同額を負担することになります。

よって、50万円の役員報酬を払う場合にはその50万円の役員報酬から引かれる29,000円と同額を法人が負担しているものとして見ておく必要があります、つまり倍額です。

これに基づくと、健康保険料は50万円の報酬について、法人と役員で合わせて58,000円の負担となり、100万円の報酬だと116,000円の負担という概算の計算をします。

  • 文芸美術国保:24,800円/月
  • 国民健康保険:85,000円/月(最大金額 京都市の場合)
  • 役員報酬50万円:58,000円/月(京都府の場合)
  • 役員報酬100万円:116,000円/月(京都府の場合)

という比較をすることがより実態に近い内容です。

続いて年金保険料をみておきます。

国民年金保険料は現状で16,590円/月です。文芸美術国保などの組合保険は年金についてはありませんのでこの国民年金と厚生年金との比較をします。

厚生年金保険料は役員報酬が50万円の場合には45,750円/月、100万円の場合には59,475円(上限到達)となります。

法人と役員報酬・給与を受け取る双方で労使折半と健康保険のところでお伝えしましたが厚生年金も同じです。つまり法人と役員で合わせての金額でみるのがおカネが出ていく、という点では正しくなります。

  • 国民年金保険料:16,590円/月
  • 役員報酬50万円:91,500円/月
  • 役員報酬100万円:118,950円/月

文芸美術国保と国民年金保険だと合わせて4万円ちょっとの社会保険料が、法人を作って自分宛てに役員報酬を出すと役員報酬によっては倍額以上の社会保険料が法人と役員報酬・給与から支払うことになります。

これを上回るような金銭面でのメリットを法人税率と所得税率の差などで見いだせるかどうかは個々の所得の内容に左右されますがよくよく考えておく必要があります。

消費税のメリットはなくなった?

以前は法人成りを検討するときには必ず検討課題というかメリットとして挙げられていたのが消費税の免税事業者期間です

個人で2年間免税事業者として活動して法人成りをすると、法人では個人での消費税の課税や免税の期間を引き継がずいったんリセットされます。

これにより法人でも2年間の免税事業者期間を取れる、というのが大きなメリットでした。事業をはじめてから4年間は消費税の免税事業者となれた、ということです。

なれた、という表現にしたのは理由があって、2023年10月から始まるインボイス制度がその理由です。

インボイス制度が始まって個人から法人に事業を移しても、インボイス登録を継続したい場合には法人でもすぐにインボイス登録をして課税事業者になる必要があります。

免税事業者のままでいいんだ、という場合にはそのままでよいでしょうが、取引先との関係を考えると個人事業主でインボイス登録をしていたら法人になってもインボイス登録を継続し課税事業者となるのは自然な流れです。

そう考えると法人成りで消費税の免税事業者の期間を2年取るということがが、ある程度の規模の個人事業で漫画家・同人作家をしている方の場合はメリットではなくなります。

ある程度の規模でというのはインボイス登録をしなくてもすでに消費税の課税事業者担っている規模以上の売上があるという意味です。

個人事業主でも法人でも消費税の計算方法自体に変わりはありませんので、法人成りしても免税事業者の期間を取らないのであれば、法人成りすることの消費税計算上のメリットはなくなったと考えられます。

自由に使えるお金はどうか

個人事業主だと自分宛てに給与、役員報酬が出せない分、入ってきたお金を比較的自由に使うことができます。

一方法人成りをすると法人にいったん収益として計上されて、そこから役員報酬で取るわけですが、プライベートな支出について法人から自由に引き出すことが難しくなります。

できることはできますが会社からすると役員に対する貸付金ということになります。

役員貸付金は会社におカネを入れてもらうしか解消する方法がないと思っておいた方がいいのです。

オーナーなんだからいいだろうと思うかもしれませんが役員貸付金は認定利息の問題などがあるため避けたほうがよいです。

大きな会社になるケースは少なく対外的な問題には発展しづらいですが、いわゆる会社のお金を私的に流用していることにほかなりません。

自由にお金を引き出して使いたい、というニーズがある場合には法人成りをするとルールが多くて「窮屈」に感じるケースもあります。

おカネの流れがかわりますのでその点は法人成りしたときに大きく変わる点ですから注意が必要です。

まとめ

法人成りをする場合にはいろんな視点から検討していきますが漫画家・同人作家の方の場合には文芸美術国保のメリットがかなり大きく感じる方が多い印象です。

金額面以外で法人成りすることの効果があればそちらももちろん検討していきます。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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