こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
年末も見えてきていますが年が明けると本格的に確定申告のシーズンに税理士業界では突入します。お客様はもちろんですが、申告会場での相談業務も2月に入ると開始され、ご自身で申告書を作成している方の相談、サポートを税理士も担います。
そこでサポートする方以外にも私が税理士であることを知っている友人知人から、この時期に一番よく聞かれることが「医療費控除したらいくら還付されるのか」ということです。
支払った医療費がまるまる還付されるるわけではないのですが、医療費控除は納税者の方も関心が高いということでしょう。
医療費控除で税金がいくら返ってくるかというご質問へのアンサーをまとめてみます。
医療費控除の計算のしかた
まずは医療費控除の計算のしかたを確認しておきましょう。
その年の1月1日から12月31日までの間に、自分と生計一の親族(お財布が同じ家族)のために支払った医療費で一定額を超えている場合には医療費控除として所得から控除(引き算)することができます。
算式としては
実際に支払った医療費-保険などで補填される金額-10万円(※)
医療費は病院・クリニック・診療所などで支払ったもので治療のためのもの(美容のためのものは含まれません)という大きなイメージでよいです。
保険などで補填される金額というのは、通院や入院に対して民間保険で賄われる部分と健康保険などで支払われる高額療養費などです。
10万円については、その年の総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等に5%を乗じた金額となります。100万円の総所得金額だと100万円×5%=5万円という計算になります。(200万円以上だと一律10万円です)
計算におけるポイントとしては
・医療費控除の対象となるかどうか
・保険などで充当される部分がないか
この2点が大きなポイントです。
医療費ではなく税金が還付される
自分と家族の医療費をまとめられたとして、いざ計算をしてみると意外と還付されないんだなと思う方が結構多いです。
これは医療費そのものが税金から引かれる、と考えている方が多く、例えば医療費控除の金額が20万円になったら還付される金額も20万円になると考えてしまうからです。
前段で触れているのですがおさらいです。
医療費控除として所得から控除(引き算)する
と書きました。
この意味は税金から控除するのではなくて、所得控除の項目として計算をするという意味あいがあります。
計算の流れとしては
所得金額-所得控除金額=課税所得金額
課税所得金額に税率をかけて税金を求めます。所得税額−医療費控除額、ではないということです。
じゃあいったい自分は医療費控除を受けたらどれくらい所得税が還付されるんだろうと感じるかと思います。
医療費控除額にその方の所得税率(医療費控除をする前)をかけた金額と考えましょう。
例えば私の課税所得金額が400万円だったとしましょう。
医療費控除前の所得税の計算をしてみると、4,000,000円×20%-427,500円=372,500円となります。(所得税の速算表にて計算。復興特別所得税等は考慮していません)
仮に医療費控除額が50万円だったとしたら、課税所得金額は400万円-50万円=350万円となります。これに対して所得税を計算してみると、3,500,000円×20%-427,500円=272,500円となります。
差額はというと372,500円-272,500円=100,000円です。
この金額100,000円は医療費控除額500,000円に所得税率20%を乗じて計算したものと同じ金額となります。(500,000円×20%=100,000円)
税金そのものから控除されるわけではなくその前段階で控除されて所得税率を乗じて計算するので、医療費控除額そのものが還付されるわけではないというのがお分かりいただけたでしょうか。
つまりご自分の所得税率が何%なのか分かれば還付される金額も把握できるということです。ご自身の所得税率が何%かについては、源泉徴収票や去年分の確定申告を拝見すれば逆算できます。
よくある勘違い
ここからは医療費控除についてのよくある勘違いに一点触れておきます。
これは申告会場でよくお見掛けすることなのですが、特に年金を受け取っている方が医療費控除のために確定申告をしようとお見えになることがあります。
このこと自体は全く問題ありませんし、還付申告をして戻ってくる分があればぜひやっていただければと私も考えています。
この「還付申告をして税金が戻ってくる分があれば」というのがミソです。
というのも年金受給者の方は所得税がかかっていないことが多いので、そもそも医療費控除を受けて確定申告をしても返ってくる税金がありません。
医療費控除を受けて確定申告をする前に一度年金の源泉徴収票を見てみることをお勧めしていて、そこに所得税の金額が記載されていれば申告していただければよいのですが、金額の記載がない場合には骨折り損になってしまいます。
例年相談会場でお見掛けしますが、確かに自分がいくら所得税を払っているのかというのはサラリーマンであってもあまり意識しない点です。
まとめ
医療費控除は身近ではありますがそれゆえか勘違いが多い項目のひとつです。
相談会場でもやはりよく見かけますので、まずはご自分が所得税を課税されているのか、課税されているとしたら何%なのか調べてみましょう。