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ウチは相続税の申告をしなかったけど税務調査が来なかった、のカラクリ

考え方が黄色信号

京都の税理士ジンノです。

相続のご相談をいただいたとき、こんなことをおっしゃる方がいます。

[chat face=”komatta_woman2.png” name=”” align=”left” border=”yellow” bg=”none”] 「ウチは相続税の申告をしなかったけど税務調査なんか来なかった」と知り合いやお隣さんが言っているのを聞いたんですけど [/chat]

もしそうだとしても申告の必要がある方が申告をしなくてよい理由にはなりません。

このカラクリを解説してみたいと思います。

 

目次

申告をしなかったのか必要なかったのか

まず、各国税局から発表されている相続税申告の事績から申告の割合を確認してみましょう。

 

死亡者数 被相続人数 割合
全国平均 1,362,470 116,341 8.5%
(東京国税局管内)
東京都 119,253 19,876 16.7%
千葉県 59,561 5,291 8.9%
神奈川県 82,336 10,928 13.3%
山梨県 9,916 687 6.9%
(大阪国税局管内)
大阪府 89,494 7,748 8.7%
京都府 26,654 2,618 9.8%
兵庫県 57,452 5,306 9.2%
滋賀県 13,246 1,024 7.7%
奈良県 14,674 1,416 9.6%
和歌山県 13,062 909 7.0%
(名古屋国税局管内)
愛知県 68,833 9,838 14.3%
岐阜県 23,062 1,948 8.4%
静岡県 41,972 4,184 10.0%
三重県 20,900 1,510 7.2%
(札幌国税局管内)
北海道 64,187 2,734 4.3%
(仙台国税局管内)
宮城県 24,520 1,370 5.6%
青森県 17,936 481 2.7%
岩手県 17,390 736 4.2%
秋田県 15,434 401 2.6%
山形県 15,320 634 4.1%
福島県 24,747 1,232 5.0%
(関東信越国税局管内)
管内全域 200,965 15,707 7.8%
(金沢国税局管内)
石川県 12,723 2,115 7.3%
富山県 13,066 912 7.0%
福井県 9,221 744 8.1%
(広島国税局管内)
広島県 31,346 2,602 8.3%
鳥取県 7,309 321 4.4%
島根県 9,724 416 4.3%
岡山県 22,429 1,631 7.3%
山口県 18,836 1,098 5.8%
(高松国税局管内)
香川県 12,169 1,003 8.2%
愛媛県 18,207 1,173 6.4%
徳島県 10,011 676 6.8%
高知県 10,251 536 5.2%
(福岡国税局管内)
福岡県 53,309 3,156 5.9%
佐賀県 10,112 410 4.1%
長崎県 17,714 568 3.2%
(熊本国税局管内)
熊本県 21,380 948 4.4%
大分県 14,492 617 4.3%
宮﨑県 13,981 516 3.7%
鹿児島県 22,106 736 3.3%
(沖縄国税事務所管内)

※各国税局発表資料より抜粋

※関東信越国税局は管内全域分しか見当たらず、沖縄国税事務所は発表資料が見当たりませんでした。

 

「ウチは申告書を出していないけど」の部分を抜き出してみると、東京都でも100人亡くなった方がいらっしゃったらおよそ83人は相続税申告の必要がない方なわけです。

秋田県の場合では亡くなった方100人のうちおよそ97人の方が相続税の申告をしていない、ということになります。

 

つまり、そもそも申告書を提出する必要がない方が申告書を出していない、といっている可能性が高いということです。

さらに言うと、東京都で例えばお隣さんとかお向かいさんが申告書を出していないけどって言ってる場合には土地の価格が似た金額と仮定すると、金融資産がウチは少ないと言っているようなものです。

 

税金はかからないけれど申告書を出さないといけないパターンもあります。(小規模宅地等の課税価格の特例という特例の適用を受けるためには申告書を提出する必要があります)

ただしこの場合には申告書を出していないと受けられない特例があるので、「ウチは申告書を出していないけど」というのはおかしいことになります。

 

反対にそもそも相続税の申告書を提出する必要があるにもかかわらず申告書を出していない場合はどうでしょうか。いわゆる無申告の状態ですからいつ税務署の調査があってもおかしくない状態です。

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こちらの記事に詳しく書きましたが、無申告への調査が強化されている現状があります。

 

続いて「税務調査なんか来なかった」という部分をピックアップしてみましょう。この場合にはまだ税務調査が来ていないだけ、という可能性があります。

 

相続税の場合、申告書を提出した後の流れでいうと、税務署内で机上で申告書の内容を精査、確認し実際の税務調査となるのは申告書を出してから1年ないし2年以内が多いです。税務調査が来るのは申告書を出してからしばらくたってからということになります。

 

亡くなってからで言うと3年間ぐらいは調査があってもおかしくない期間と考えることができると思います。

 

そうなると、「税務調査なんか来てない」という発言の内容を言い換えてみると「税務調査は今のところ来ていない」になる可能性はあります。

 

相続税は相続財産の総額と負債の額、あとは法定相続人という相続人の数で申告書の提出が必要か否かを判断します。

申告書を提出していないけど=必要がなかったということであれば財産が少なかったということを暗に意味している可能性が高いので、言いふらすのはやめておいたほうが賢明じゃないでしょうか。

もし税務調査が来ても言わない

もう少し踏み込んで考えてみます。

 

もしあなたが相続人の立場で、知り合いや友人に「イヤーこないだ相続税の税務調査が来ちゃってさ」と果たして言うでしょうか。

 

さらに言うと、相続税の税務調査ではその後に申告漏れ等が指摘される割合が高いのが特徴です。

相続税の税務調査における非違件数や金額というのも公表されています。非違というのは簡単にお伝えすると申告漏れなど、という意味です。

この非違割合(税務調査件数に占める非違件数)は平成30事務年度発表資料では85.7%というかなり高い割合になっています。

 

つまりこれが何を意味するかというと、税務調査があると相続の場合はおよそ85%に申告漏れ等が指摘されて修正申告をしているということです。

「相続税の税務調査が来ちゃっておまけに申告漏れを指摘されて修正申告したんだよね」というのは自慢にも何にもならないですし、可能であれば知られたくない情報だともし私が相続人の立場であれば考えるでしょう。

 

これが例えば中小企業の社長さん同士で、知り合いの社長さんとの酒の肴程度のお話ならまだわかります。あんたのとこ税務調査いつ来た?実は今年来ちゃってさ、という会話を想像することができます。

 

また税理士としては例えば新しくお客様になる際には最後の税務調査がいつ頃だったかというのは気になるものです。

法人絡みのはなしで社長さん同士、社長さんと税理士での会話で税務調査については話題になることはあるかもしれません。

 

ただ、相続の場合には完全に家族の話、身内の話になりますので、もし仮に相続税の税務調査が来たとしても、あまり言いふらすことではないですし、「ウチには税務調査が来た」と言う方はかなり少ないと想像します。というかほぼいないんじゃないかと。

 

相続のお仕事の現場では家族の仲の良さ悪さを伺うことがありますが、ここだけでも濁されることがあります。やはり家族間の仲が悪い場合には、オープンにされることがほとんどないのが現状です。

もちろん誰かに言いふらすわけではなく、業務をスムーズに円滑に進めるために私はご家族の仲を念のため確認しています。

 

ここまでを総合して考えてみると、税務調査がもし来ていても言わない人のほうが多い、と考えられます。

まとめ

[box03 title=”本記事のまとめ”]
  1. 申告書を出していないのと、出す必要がないのは意味が違う
  2. 多くの人が申告書を出す必要がない可能性が高い
  3. 税務調査がもし来ても言わない可能性も高い
[/box03]

よそはよそ、うちはうち、です。

相続税申告の必要があるか否かは財産の状況、ご家族の状況に大きく左右されます。ご心配な方は早めに専門家に相談しましょう。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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