昨年あたりから同人ゲームクリエイターのお客様が増えてきました。個人でゲーム開発をしてそれをいろんなプラットフォームで出すことができるようになりつつあるそうです。
個人事業主の方で同人ゲームクリエイターの方がSteamというアメリカの会社がリリースしているプラットフォームでゲームを販売した場合の税務関係について整理しておきます。

売り上げの種類
まず売り上げについては、Steam側から毎月送られてくる明細をベースに計上することが一番確実です。
この場合税務的にはどう取り扱うか整理しておくと、ゲームの販売はSteam側で行うのですが、ゲームという著作物を貸し付けていると考えるとよいです。
FANZAやDLsiteでゲームを販売している場合と同じような取り扱いで、特にDLsiteのほうは著作物を貸し付けで、その対価として著作権の使用料を収受しているという形で見れますのでゲームを入れるDLsiteで販売しているのと同じ効果と言えるでしょう。
ですので、Steamに対するゲームの貸し付け=著作物の貸付として著作権の使用料が売り上げだと整理しやすいです。
そうすると平均課税の対象かどうか気になるかと思いますが、著作権の使用料は平均課税の変動所得だと例示がありますので、平均課税の対象と考えて差し支えないでしょう。現状ではこの辺りの手続きについて専門的な書籍等や論文、裁決・裁判はまだありませんのでチャレンジする形にはなりますがその価値は十分にあるものと考えています。
消費税については電気通信利用役務提供と考えるかもしれませんが、著作権の使用料というのは著作権の貸付の対価になりますので、この場合は輸出免税取引になります。
また、Steamを運営しているValve社においてはインボイス登録していると確認をしていますので、やはり輸出免税の売上、いわゆる0%課税売上として処理をしています。
なのでSteamだけの売上だとしても1,000万円を年間で超えてくるようであれば課税売上判定で消費税の課税事業者になります。
この辺の税務関係についてはまた情報がないため手探りの部分もあるのですが、確認をして整理をしておくことをお勧めします。
アメリカの源泉徴収税額の取り扱い
Valve社はSteamを運営してゲームを販売していますが、アメリカに本社のある会社ですので、米国の取り扱いがまず基本となります。
著作権の貸し付けによる著作権の使用料については、米国で何も手続きをしていないと源泉所得税が徴収されます。
Steamでゲームを販売したことがある方わかるかと思うのですが、この辺りの取り扱いはDLsiteとFANZAと同じで米国の個人所得税にあたるものが源泉徴収されているということです。
ここからが少し難しいのですが、米国で源泉所得税を払っているわけですので、日本で外国税額控除できるのではと考えるかもしれません。
ただこうした税金の取り扱いについては、アメリカと日本で租税条約を結んでいますので、そちらを確認することになります。
日米の租税条約ではアメリカでの源泉所得税については、適切な処理を行っておくと還付される取り扱いになっています。
そのため著作権の使用料にたいして源泉徴収された米国の源泉所得税は日本の確定申告で外国税額控除とすることができません。
ではアメリカ側で何をするかというと、W-8BENという書類を提出することになります。
このW-8BEN(エイトベンと呼ぶそうです)は「米国源泉税に対する受益者の非居住証明書」と呼ばれる、米国の内国歳入庁(IRS)へ提出する書類です。
私は米国の非居住者なので米国源泉税を引かないでくださいという取り扱いの申請ですので、期限が間に合う場合はSteamを通じて提出します。
マイナンバーの情報などの必要な情報を記入して申請して受理されると、米国源泉税の徴収対象ではないという取り扱いになりますので、源泉税を引かれる前の金額が振り込まれます。
W-8BENの提出ができなかった場合などはForm 1040(テンフォーティーと呼ぶそうです)を提出することになります。
IRS Tax Form 1040 (米国の個人所得税申告書) は、米国の納税者が年間所得税申告書を米国の内国歳入庁(IRS)に提出する際に使用します。
日本のゲームクリエイターは米国では非居住者で日米租税条約により米国源泉税は非課税という取り扱いですので、日本の確定申告で言うと米国で提出する還付申告の内容になります。
まとめ
ご自身が作成したゲームをSteamを通じて販売する場合にはW-8BENを出しておくことが最もシンプルかつ便利です。
あとは米国の源泉税を外国税額控除の対象としないことも把握しておき適切な処理をしましょう。平均課税も検討してみてください。
