こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
消費税の総額表示の徹底措置が始まり、メニューの価格を改定する方も多いと思います。そんなときに考えるのが税込価格据え置き。
メニュー価格を改定する手間を考えて税込価格として据置したいと考えるかもしれませんが、価格の据置が意味することを理解したうえ判断しましょう。
税込価格据え置きするとどうなるか
消費税率が10%のモノやサービスを取り扱っているとして価格を消費税込で価格据置とした場合を実際に数字で見てみましょう。
仮に10,000円本体価格のサービスを販売するとします。
今までは10,000円に消費税10%をオンして11,000円の請求でしたが、消費税込で10,000円で本体価格を算出すると
10,000円×100/110=9,090円(端数切捨て 税抜処理)となります。
本体価格10,000円のサービスのはずが税込価格据え置きにすると本体価格9,090円と算出されます。その差額910円、パーセントで表すと9.1%値引いて販売しているのと同じことになります。
普段の会計処理を税抜きで行っている場合はこの9.1%の値引きが利益にダイレクトに反映されることも意味しています。
例えば原価が5,000円だったとすると本体価格10,000円の場合は引き算で5,000円の売上総利益(いわゆる粗利益)です。
9,090円の本体価格なら9,090円-5,000円=4,090円の粗利益となりダイレクトに910円利益が減ります。
同じ粗利金額5,000円を確保しようと思うと原価も910円下げないと維持できません。(9,090円-4,090円=5,000円)
売上を下げるのはいくらで売るかこちらで決めるわけですから簡単ですが、原価を下げるのはかなり大変です。
5,000円の原価のモノを910円下げようと思うと18.2%の原価削減を考えなければなりません。(910/5,000=0.182=18.2%)
いつもギリギリの交渉をして原価を下げる努力をしているさらにそこから上記の例で言うと18.2%の原価削減を目指すわけです。
売上を税込価格据え置きにしてしまうと本体価格を値下げしていることに他なりませんので注意が必要です。
商品を分類してみる
対消費者への販売については総額表示義務の対象となりますが、対事業者への販売については対象外です。
まずは自分のビジネスが対消費者(BtoC)なのか対事業者(BtoB)なのかの判別をして、商品によってそれが異なるのであれば分類してみます。
そのうえで対消費者用の価格表と対事業者用の価格表を用意するか考えましょう。
混在している場合には価格表示形式を参考にすべての商品を税込価格に代えるほうが分かりやすさで言うと軍配が上がるかなと。
税込価格表示にすると価格が分かりにくいというのはそもそものメニュー表が複雑すぎる可能性もあります。本体価格から含めて税込価格で分かりやすくなるような価格設定も考えてみたいところです。
また前段でひとつの商品・サービスについて原価や粗利益の検討をしました。
取り扱うものがひとつであれば苦労はしませんが多くのモノやサービスを取り扱う場合にはひょっとすると原価割れしているものがあるかもしれません。
安いものをたくさん売るのか、高いものを少なく売るのかという視点もサービスや価格を決めるうえで重要ですが、原価割れしているものがないか、採算が合っていないものがないかひとつひとつ確認することも大事です。
特に商材が多くなってきた場合はこのあたりはおざなりになってしまって、利益が出ないものを一生懸命売る、という構造になっていることがあります。
そうなると利益を出すべく頑張っていたはずなのに売れば売るほどお金が残らないという本末転倒な結果が待っていますので早めに手を打ちましょう、
まとめ
何をいくらで売るかを決めるのは事業主として一番大事なことのひとつです。
適当に決めてしまったり、面倒に感じて税込価格据え置きなんかにしてしまうとダイレクトに利益に影響します。
売上をキチンと把握するためにも価格設定はとても重要ですので一度見直してみましょう。