こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
士業さんの会計回りを先日から整理しています。
最後にクライアントからの預り金、事件費の処理について整理をしていきます。案件ごとに管理することが大切です。
実費立て替えを預かるとき
特に弁護士の方ですとお仕事をする際に実費立て替えが頻繁に発生することが多いです。
依頼人・相手方に書類を送付したり、裁判所とのやり取りで書類を送付したりといった形でやり取りのつど通信費等がかかります。
普通郵便でやり取りできる内容が少ないため、特定記録や書留、レターパックプラス、内容証明など通常の郵便代に付加しての利用が多いそうです。
事務所の負担を減らすという意味で、この立替実費について事前に依頼人からお預かりしておく弁護士さんは多いでしょう。
立替実費分などを預かる時には以下のような仕訳入力となります。
(普通預金)20,000 / (弁護士預り金)20,000
この預り金は最終的に事件・案件が終了した時には精算をすることが必要です。
余れば報酬に充当するのか返還するのか、足りなければ追加で実費分をいただくのか、ルールを決めておきましょう。
この精算をするためには依頼人ごとに預り金を管理することが必要です。
預り金の管理ができていないと最終的な精算が出来ませんので、紙媒体でもExcelデータでもよいので管理するツールを用意します。
帳面というほど難しいものではなく預り台帳として以下のような形式であれば十分です。
日付 | 入金 | 出金 | 残高 | 備考 |
2020/12/10 | 20,000 | 20,000 | ○○さん預り | |
2020/12/12 | 520 | 19,480 | 相手方への郵便代 | |
2020/12/16 | 660 | 18,820 | 裁判所への郵便代 | |
2020/12/30 | 880 | 17,940 | 依頼者への郵便代 |
こまめに記帳ができているのであれば台帳ではなく直接入力をしてもいいでしょう。ただし複数案件を抱えている場合には台帳につけておいてあとで記帳に起こすことでも全く問題ありません。
事件費の支出をしたとき
弁護士さんの場合には各依頼については〇〇事件といったかたちで管理をされている方が多いです。
この事件それぞれにかかった費用のことを事件費という勘定科目を設けて、預り金から支出するのか、立替するのかで処理が異なります。
預り金がある場合には以下のような処理になります。
(弁護士預り金)650 / (現預金)650 〇〇事件 郵便代
といった形です。
預り金があるときはそこから実費分を充当することになりますので経費としては計上しません。
おカネそれ自体を事件ごとに分けても構いませんが煩雑かつ複雑になりますし現金管理の観点からも望ましくはないので、おカネはまるまる一つで管理で大丈夫です。
むしろ事件費がきちんと整理して台帳に記載されていることのほうが重要です。
実費立て替えの場合は
(立替金)650 / (現預金)650 ○○事件 郵便代立替
となり弁護士預り金だった部分が立替金となっています。
立替金の場合には事務所の現預金が先行して出ていくことになりますので預り金方式よりも資金繰りの点では苦しくなります。
ただし預り金形式の場合は支出を充当する処理が期中で必要なのに対して、立替金方式の場合には最後の精算(報酬請求時)に集計をすればいいだけなので楽ではあります。
最後の精算をする
無事に事件が終了し案件として最後に報酬をいただく際には預り金、立替金の精算をする必要があります。
少しふれましたが、預り金形式の場合には残高を確認して残高がマイナスの場合には、預かっていた金額よりも多く支出をしている状態を意味します。
つまり事件費に充当するために預かった金額が足りなかったので、マイナス部分を報酬に追加していただく必要があります。
仮に弁護士預り金の〇〇事件の残高がマイナス2,500円である場合には、仕訳形式で示すと以下のようになります。
(未収金)502,500 /(弁護士報酬)500,000 ○○事件 弁護士報酬
(弁護士預り金) 2,500 ○○事件 追加事件費分
この処理で弁護士預り金が残高ゼロになります。
一方で事件費が想定以上に少なかった場合もあります。要は弁護士預り金が余っている状態です。預かり金が余っているのでそれをお返ししてもよいですが、依頼人からみると預けているものだからそれを報酬に充当してもらって差額を報酬にしてもよいでしょう。
依頼人と相談の上ですが、返してもらって払ってだと煩雑ではありますので充当形式を選択する方が多い印象です。
余った弁護士預り金が7,500円だとした場合に充当形式の仕訳は以下のようになります。
(未収金) 492,500 /(弁護士報酬)500,000 ○○事件 弁護士報酬
(弁護士預り金) 7,500 ○○事件 預かり金充当
立替金方式の場合も最後に確認しておきます。立替金の場合も基本は預り金方式と同じく最終で立て替えていた分を報酬請求時に合わせて請求をします。
仕訳入力は以下のような形です。
(未収金)512,500 /(弁護士報酬) 500,000 ○○事件 弁護士報酬
(弁護士立替金)12,500 ○○事件 事件費立替
まとめ
いずれの方法においても最終的に精算をしないと預り金・立替金が宙ぶらりんのままになってしまいます。
報酬請求時に必ず漏れなく請求、充当できるように台帳は記入しておきましょう。
また月次決算、確定申告時においても事件として終了しているのに残高が残っているものがないかあわせて確認することが大切です。