こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
相続税対策において贈与を活用することはシンプルですがとても有効です。ただ適切に行えていないとせっかくの贈与が無駄になったり、損してしまうこともあり得ます。
行き当たりばったりの無計画な贈与が危険な理由を3つお伝えしますので、お心当たりのあるかたはお近くの税理士にご相談ください。
結局税金が高くつく可能性
相続税を減らそうと考えて贈与をしている方がいらっしゃいます。
もちろん時間をかけて贈与をコツコツすることはシンプルですが相続税を減らす効果が高くなります。
小さくコツコツが贈与を実行する際のコツなのですが、相続税がいくらかかりそうな状態か把握していない場合はキケンです。
何が危険かというと、贈与税の支払いのほうが結局のところ高くついた、ということがあり得てしまうからです。
贈与税は相続税を補完する立場を取りますので、贈与税のほうが相続税よりも税率が高いです。
以下は贈与税(特例税率(親子間や祖父母から孫への贈与の場合 受贈者は20歳以上))の税額速算表です。
※基礎控除(110万円)後の課税価格
課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
200万円超400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
例えば510万円贈与した場合の計算は
510万円-110万円=400万円
400万円×15%-10万円=50万円
となります。
贈与税の基礎控除額110万円を超えて贈与をする場合には贈与税が課税されますが、相続税の基礎控除は少なくとも3,600万円(法定相続人1人と想定して、3,000万円+600万円×法定相続人1人と計算)です。
そうなると自然と、相続税と贈与税の有利不利のポイントがでてきます。保有している財産の金額と贈与を想定する年数、受贈者(財産を譲り受ける人)の立場にもよりますので一概にどことは言えないのですが、有利不利ポイントがある、ということはアタマの片隅に置きましょう。
この有利不利のポイントを理解せずに無計画に気の向くままに贈与を繰り返していると、結局のところ相続で財産を引き継いだほうが税金としては低く抑えられた、という結果になりかねません。
手元資金が減る
不動産の贈与よりも現預金で贈与する方が多いですが、現預金で贈与をする場合に気を付けておきたいポイントがあります。
これは当たり前ではあるのですが贈与をすると手許の現預金が減る、ということです。仮にお孫さんに110万円ずつ2人に贈与すれば110万円×2人=220万円、となります。
いまは高齢化社会で健康に長生きする方も増えていますが、同時に認知症などの介護のリスクは年齢を重ねていくにつれて上昇していきます。
もし老人ホームに入る、介護付き高齢者専用住宅に入居する、ということになった場合にはそれなりの手元資金が必要になります。
場合によっては3,000万円、5,000万円、1億円という物件もあり、ご希望の条件によってはどんどん高額になっていきます。
そんな時に手許現金が贈与のし過ぎでなくなってしまっていては本末転倒です。まさか贈与したおカネを戻してくれとも言えないでしょう。
手許現金のうちでも自分の財産として置いておきたい分の把握は必要です。無計画に贈与をしてしまうと結果的に贈与したことで自分の希望がかなえられなくなる可能性もあり得ます。
贈与した財産が意図せず使われる
贈与をする意図を受贈者の方にうまく伝えられていないことがあります。
何のための贈与なのか、ただ単純に贈与して自由に使って構わないということでしたら問題ないですが、相続税をその贈与した金銭で充当もしくは足しにしてほしい、ということだと具合が悪くなります。
相続税の前渡しのつもりであれば使ってしまって無くなってしまうという事態は避けなければいけません。
得てしてこの贈与したいけど使ってほしくない、という気持ちが名義預金を生んでしまう心情のひとつとなります。
名義預金に関する記事はこちら
贈与しているのに自分の財産のつもりだとそれも具合が悪いですし、どういう意図があって贈与をするのか伝えておくことが大切です。
無計画な状態だとこの意図さえも伝わっていないことがあり、そうなると目論見が外れてしまうことになりかねません。
ずっと贈与し続けるわけにもいきませんので、しっかり計画を立てて誰にいくら贈与し、その贈与されたものがどういう意図なのかを伝えておくことで贈与した財産を有効に使ってもらうのが一番です。
まとめ
その方に合った贈与プランを作り、計画を立てることでこれらのキケンを可能な限り排除していくことができます。
いま、贈与している場合でも遅くはありませんので心当たりのある方はお近くの資産税が得意な税理士に相談しましょう。