京都の若ハゲ税理士ジンノです。
相続対策のご相談があると「とにかく税金を何とかしたい」というご要望をお持ちの相談者の方がいらっしゃいます。
いわゆる節税対策は最後にしましょうとご説明するのですが、その理由を解説します。
分け方が決まって税金が決まる
相続税は財産の分け方によって大きく税金の金額が変わるという特徴があります。
財産の分け方が決まって初めてそれぞれの方が相続した財産にかかる相続税というものが決まります。
もし財産の分け方が決まらなければ一旦は法定相続分(民法において定められる割合)によって、財産が未分割の状態として申告をする必要があります。
未分割申告の場合には納めるべき税金について相続税の計算上みとめられている各種の特例が使えませんので、税金が大きくなる傾向があります。
また相続財産を実際に分けるというのは分け方が決まってからですので、実質的に相続財産は分け方が決まるまで塩漬けの状態です。
また分け方が決まらないことで家族関係がぎくしゃくすることはよくあり、結果的に揉め事がこじれてしまうケースも見かけます。
相続税は財産を相続することについて相続財産全体から計算した相続税を、その相続人等が財産を取得した割合で按分することで各人の負担額が決まります。
つまり、分け方が決まってから各人の負担が決まることになるので、相続税の計算の構造上分け方を考えずに税金を減らすということが難しいのです。
相続対策の順番として、
- 現状で納税資金があるかどうか
- 財産の分け方が決まっているか
- 節税ができるかどうか
という順番をお勧めしているのはそういう理由があるからです。
節税対策を逆戻しするのは難しい
では例えば現預金を贈与をする場合を考えてみましょう。
とりあえずなんとなくで贈与をしている場合と計画がある場合ではそのゴールに大きな違いが生まれます。
無計画な状態で贈与をしすぎて結果的に財産が大きく減ってしまい、贈与したものを戻してもらうというケースは意外とあります。
ご自分の手元に置いておきたい金銭の額や相続税との比較なしで贈与をすると、気が付くと生活資金を圧迫している状態はあまり心が落ち着きません。
また、現預金をする立場になって考えると、相続税対策のために贈与をしている場合、贈与はしたいが贈与された金銭を使ってほしくはない、と感じる方も多いようです。
端的に言うと贈与したいけど無駄遣いを許容する為ではない、ということです。
ひょっとするとその贈与は相続税をその贈与された金銭で納めてね、という意図があるかもしれません。そういった場合には、贈与された金銭をもらったからといって無計画に使われることは避けたいと考えます。
相続税よりも贈与税は高いので、無計画すぎると贈与税のほうが高くついた、ということも可能性として発生し得ます。
これは不動産の贈与などにおいても同じで、一度行った贈与を戻してもらってなかったことにするというのは非常に難しくなります。
つまり贈与をするときには取り消しや財産を戻してもらうことを想定して行わないほうがよいということです。
この贈与したいけどむやみに使ってほしくない、という感情は別問題を引き起こすことがあります。それは名義預金の問題です。
名義預金とはごく簡単にお伝えすると、名義だけ変わった預金という意味合いがあり、実質的な所有者は贈与した(つもりの)人と税務上みなされるものです。
こうなってしまうと贈与したのにその贈与は無効でしたということになるので、せっかくの贈与もその効果はなくなります。
贈与ひとつとっても注意しなければいけないことはたくさんあり、また税金の計算上も影響が大きくなります。
借入をして不動産を建築するなどのリスクが大きい節税対策はもっと検討すべき事項が多く、一朝一夕にできないものなのです。
手軽にできると考えられがちな現預金の贈与であっても慎重な判断と贈与プランが必要です。相続税の税務調査において最も指摘されるのが現預金について、という国税庁発表のデータもあります。(相続税の調査事績など)
まとめ
分け方が決まってから税金が決まるという特殊な一面があるのが相続税です。
この特徴は法人税や所得税にはないもので、相続税の試算をしてもらったことがないかたには想像がしづらい部分です。
まずは相続税の試算をし、分け方のイメージが付いた段階で、節税について考えるという方向性が非常に重要性を増しています。