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もし相続で揉めて財産の分け方が決まらないとどうなるか。

ドロ沼の戦い

京都の税理士ジンノです。

私は基本的に相続対策からサポートさせていただく機会があれば、相続は節税よりもまず揉めない対策の方が優先ですとお伝えしています。

もし揉めたらどうなるか、あまりイメージできていない方も多いのではないでしょうか。

もし揉めたらどんな状態になってしまうのか、お伝えします。

本記事では揉めている状態を「遺産分割協議がまとまらず、調停又は裁判において分割協議を行う状態」として記事を構成をしています。

目次

財産は塩漬けに

亡くなった方がご自分の遺産について遺言を残していない場合、遺産を分けるために法定相続人全員で遺産分割協議を整える必要があります。

 

かみ砕くと財産の分け方を相続人で話し合って決める、ということです。

 

遺言があれば話し合いの余地は基本的にないのですが、分割協議になると話し合いでしか解決できないことになります。

分け方のイメージ

もし、遺産分割協議がまとまらない場合、財産はどうなんでしょうか?というご質問をいただくことがあります。

この場合、財産は塩漬けの状態になり、使ったりすることは原則できません。

2019年7月から預貯金の一部払い戻し制度が民法(相続法)の改正によりスタートしましたが、ひとつの金融機関から引き出せる金額に上限があり、また遺産が分割されないことの根本解決にはなりません。

 

当事者同士で話し合いがまとまらない(=分割協議が成立しない)ことは時々起こり得ます。それは何故かというと、相続人がそれぞれ欲しいモノも欲しい金額も異なると話し合いはまとまらないからです。

 

私は不動産がいらない、私も不動産はいらない、その分を金融資産で、とか。あなたは昔の相続でたくさん相続したから今回はこちらが多めで、とか。

色んな主張が繰り出されることで事態は収拾しなくなり、結果話がまとまらないことになります。

 

遺産分割協議がまとまらないうちはいつまでも財産は塩漬けになります。

 

分割できていない状態でも相続税申告は必要

また、分割協議がまとまらない状態でも相続税の申告期限は亡くなってから10ヵ月と決まっていますので、期限までに未分割の状態で申告をしなければいけません。

未分割の状態では、相続税の計算上、様々な特例を使用することができませんので相続税が高くなる可能性があります。

 

つまり、もし相続税を支払う必要があれば、遺産の中から支払うというのが困難になるケースもあるということです。相続人の方が元々所有している財産から相続税の支払いをしないといけないかもしれません。

未分割でも適切に申告や届け出をしていれば、話し合いがまとまった時点で申告書を出し直して、各種特例を受けることが可能です。ただし、一旦は相続税を払う必要はあります。

 

話し合いがまとまらないことで高くなった相続税を自分の財産から払うことの精神的ストレスはかなり大きくなります。

 

費用はどんどん膨らむ

分割協議が当事者間でまとまらない場合、家庭裁判所に調停又は審判の申し立てをすることになります。

 

当事者同士で話し合いがつかないので、第三者(この場合は裁判所の調停委員)に間に入ってもらうしか方法がなくなります。(当事者同士で話し合いで解決できない状態ですので)

 

調停の場合、相続人それぞれが自己の主張を仲裁者としての調停委員に聞いてもらい、お互いの妥協点を探っていくことになるのですが、この時には代理人として弁護士さんに依頼をする相続人の方が多いです。

 

弁護士さんは依頼人の利益を守ろうともちろんします(それが弁護士さんの仕事でもあります)ので、相続人がそれぞれ揉めていて弁護士さんを付けている場合には、やはり長期化します。

 

調停で話し合いがまとまらなければ審判や裁判に移行していきますがその分長期化しますので弁護士さんにお支払いする費用もかさんでいきます。長期化すればするほど費用が膨らんでいくということです。

 

遺産分割調停までもつれる前に散々、当事者同士で平行線の話し合いを重ねていることも多く、亡くなってからでカウントすると2~3年は経過していることもあります。

そうなるとそこからさらに審判や裁判へ移行するわけですから必然的に長くなっていくものです。

 

遺産分割で揉めている場合には、家族の話ですのでみなさん感情的になります。感情の整理を付けることが難しいこともあるのでしょうが、それも長期化の原因の一つと考えられます。

家族関係は崩壊する

もちろん家族だから言いたいことを言い合えるという面もあるでしょう。

 

ただし、それは同じ屋根の下に住んで、同じご飯を食べている家族同士であれば、という側面もあります。遺産分割協議で揉めると、家族同士の単なる口げんか程度では収まらないということです。

 

過去のことを蒸し返されたりということも頻繁に起こり得ます。財産を分けることについてお互いの利害が対立しているわけですから、これまでのように仲良く家族づきあいができるか、と聞かれるとまず難しいでしょう。

 

遺産分割で揉めてしまうと少なくとも揉める前の状態には戻れません。

 

よく相続対策の現場で耳にするのが「みんなで仲良く決めてくれたらいい」とか「うちに限って揉めたりしない」というお話です。

皆が仲がよく見えているだけかもしれませんし、そういう発言をする方がいるからこそ一応まとまっている、みたいな状況もよくあります。

 

ウチは財産が少ないから揉めないというお話も大変よく耳にしますが、財産の多い少ないではないというのが相続を多く経験している私の実感です。

3億円の総資産がある方の1,000万円と、5,000万円の総資産がある方の1,000万円では同じ額面でもその感じ方は異なるはずです。

 

金額の多い少ないで揉めるのではなくて、ご自分の相続について遺言を残したり、財産を整理したり、遺される家族のことを考えて対策をしていないと揉めやすくなります。

 

私はいつも相続対策のご相談があったら、遺言を残したり自分の身の回りのことを整理しておくのは家族に出来る最後の贈り物のつもりでやりませんかということ。

あの世に行ってまで恨まれるのはいくら自分が死んだあととはいえ忍びないと私は感じます。

 

まとめ

[box03 title=”本記事のまとめ”]

相続で揉めると

  1. 財産は分割協議が整うまで塩漬けに
  2. 長期化すればするほど費用が膨らむ
  3. 家族関係は崩壊する
[/box03]

遺言があればな、ちゃんと対策できていればなと感じることはこれまで相続業務に携わる中で幾度もありました。思い立ったらまずは専門家に相談するというのが安心です。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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