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義理の親の介護をしたら相続財産を請求できるようになるけど、お勧めはしません

交渉

京都の相続に強い税理士ジンノです。

[chat face=”komatta_woman2.png” name=”” align=”left” border=”yellow” bg=”none”] 夫の両親の介護をしたら相続財産を請求できるようになるって聞いたけどホントにそんなことできるのかしら [/chat]

2019年7月から民法の相続法改正に伴い、義理の両親の介護を担っていた相続人以外の親族が遺産について相続する権利を主張できるようになります。

権利としてはもちろんいいのでしょうけど、日々相続に携わるものとしては「そんなことしたら揉めるだけ」というのが強い懸念です。

どうすれば揉めないようにできるか、提案を考えてみます。

目次

寄与分の認定はハードルが高い

民法の相続法においては、今までも寄与分について規定がありました。

亡くなった方の療養看護等によりその方の財産の維持または増加について特別の寄与をした者については、その貢献を「寄与分」として、その相続財産に加えることができます。(民法904条の2)

 

この規定においては寄与(ざっくりというと療養看護への貢献ですね)が認められるのは相続人だけでした。

下記の図で言うところの、娘と息子が親の療養看護をしていて寄与分があった場合に認められる対象となります。

 

寄与分(今まで)

 

この範囲が広がり、義理の息子や娘も寄与分が認められる対象となります。

寄与分(これから)

この寄与分が認められる親族の範囲が「被相続人(亡くなったひと)の配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族」となり、息子や娘の配偶者が含まれます。

 

これまでにおいては、介護や看護を担ったこと、貢献したことについて義理の息子や娘については相続権がありませんでしたので、貢献という意味で権利が明確化され拡充されました。

 

ただし、寄与分の対象者が広がっただけで、請求したら相続できるかというと必ずしもそうではありません。

 

上記の寄与分の規定によると、遺産の維持または増加に対しての貢献であることの証明が難しく、改正されてもこの部分に変わりはありませんので寄与分を請求することについては依然としてハードルが高いと考えられます。

 

さらに、民法では一定の親族間でお互いに助け合い扶養しなさいという定めもあります。(民法877条他)

 

よって通常支えあう義務がある親族間の療養看護について、寄与分を主張しようと思うと民法上の扶養義務を超えた貢献が必要となります。

 

ちまたでは介護日誌をつけておけば寄与分を得られる可能性が高まるという論調がありますが、現実問題として介護日誌で介護の内容がわかっても扶養義務の範囲内という判断になると寄与分としては認められる可能性は低いです。

 

今回の改正では寄与分が認められる対象者が拡充されただけですから、寄与分が認められる可能性が高まったわけではないのでその点注意が必要です。

 

寄与分の主張は揉め事にしかならない

寄与分の主張については、相続人の協議によって決められない場合、遺産分割協議がまとまらないので家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることになります。

 

そうなると家族の話がおカネの話、ひいては権利の話になってしまうので穏やかな解決というのは難しくなるでしょう。

 

端的に言うと、寄与分を主張した親族とそれ以外の相続人たちとの間で溝ができ、親族間の信頼関係は崩れてしまうことになります。

 

寄与分の主張だけで済めばいいですが、遺産の使い込みや相続財産の内容にまで話が及ぶと収拾がつかなくなることが予想されます。

 

寄与分の主張は権利としては認められるようになりますが、慎重な判断が必要ですし揉め事のタネになるのであれば可能であればそのような主張はしないほうが賢明です。

 

では、税理士として依頼者から相談を受けた際に提案できることはないか、考えてみましょう。

義理の親の介護に報いが得られるか提案を考えてみます

そうはいっても、自分の両親ではなく配偶者の親の療養看護、介護を担うというケースも多くあります。

 

いつ終わるとも知れない介護をずっと続けることに対する精神的、肉体的な負担ももちろんあるでしょう。

 

遺産の維持または増加への貢献というと難しく感じますが、現実問題として時間もおカネも体力も介護には必要です。

 

その介護してくれたことに対する報いが得られないか、提案できることがないか考えてみましょう。

生前贈与

まずは財産を遺す方から、介護してくれている方への贈与はいかがでしょうか。

 

介護を受けている方の意思がはっきりしているのであれば贈与は可能です。

 

以前ご長男の配偶者の方が非常に良くしてくれているから何かしてあげたいというご相談があった際には、財産を遺される方の意思もハッキリ確認できましたので、生前贈与をご提案し適切な手順を踏んで贈与を行いました。

 

この場合には財産を遺す方の自由意思ですから、適切な手順を踏んで贈与しておけば後で贈与が無効だったと蒸し返されることもないでしょう。

 

贈与契約書に一言「介護をしてくれたお礼として」と文言を足しておくのはいかがでしょう。

遺言による遺産の分配

贈与よりもより意思をはっきりさせるのであれば遺言による遺産の分配はいかがでしょうか。

 

贈与税は一般的に相続税よりも高くなりますから、介護をしている方の状況(相続税の2割加算の対象者か否か)や贈与したい金額、相続財産の全体像などとの兼ね合いで、贈与ではなく遺贈(遺言による贈与)も検討してみましょう。

 

遺言を残す際にもやはりご本人の意思が明確であること必要です。

 

公正証書遺言の場合には公証人役場での作成が基本ですが、事情(体力的な問題など)があれば自宅や病院、老人ホームなどへ公証人の出張をお願いして、公正証書遺言を作成することができます。

 

遺言であればより明確にご自身の意思を表明できますから、遺留分などに配慮しつつ介護してくれた人に財産を分けることができます。

遺産の取り分の増加

現時点で財産を遺す方ご本人の意思が明確でないこともあるでしょう。

 

であれば、相続人(介護を担った方の配偶者=実の娘や息子)の取り分を増やしてもらえるような遺産分割協議を目指してはいかがでしょう。

 

家族間の話し合いで介護を担った方の相続人以外の方から「確かに介護を担ってくれて、その分の御礼がしたいからご自分が取得する遺産を少なくしてもらってその分をその相続人に」ということもありました。

 

介護に対する御礼をしたい気持ちが相続人にあるのであれば、自然発生的にそのような話になることもあります。

まとめ

[box03 title=”本記事のまとめ”]
  1. 寄与分の請求はハードルが高く、揉め事になる可能性がある
  2. 生前贈与、遺言の準備、遺産の取り分の増加の検討はいかがでしょう
  3. お元気なうちの事前相談がおすすめ
[/box03]

生前贈与と遺言の準備は事前相談でも最もよく実行する対策のひとつです。

いずれもお元気なうちに、意思がはっきり確認できるうちに、というのが大原則です。

意思が確認できないとたとえ税理士といえども出来ることと出来ないことがありますので、やはりお元気なうちに事前相談をしていただくのが最も有効です。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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