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中小企業の福利厚生費と注意点

中小企業の福利厚生費と税務上の注意点

近年の転職市場の活況を見ると、中小企業の福利厚生はその重要性を増しているように感じます。

もちろん従業員の給与や待遇、有給休暇の取りやすさなども、従業員に長く働いてもらう要素として重要です。そこにプラスして福利厚生で従業員向けにできることがないか、というのは経営者からもご相談をいただくことが多いです。

福利厚生費として考えられるものと注意点について整理しておきます。

目次

福利厚生費とは

福利厚生費とは簡単にいうと、従業員をメインとして仕事をしやすい環境を整えるための支出と考えましょう。

誰か特定の人だけに対するものだと給与ではないか、という指摘を税務調査で受ける可能性があります。従業員・スタッフに等しく機会を設けるというのは意識しておきましょう。

具体的な例

例えば従業員の健康維持は業務遂行上でとても大事ですし、健康診断を年に1回は受ける、業種によっては年2回以上というのが決まっているケースがあります。

法定の健康診断だけではなく、費用を負担して人間ドックでもう少し検査項目を増やすというのも福利厚生になります。希望する人が全員受けられるというのがポイントです。

ほかには例えば食事補助として会社側が費用負担をするというケースもあるかと思います。そういったものも一定金額までは会社負担でよいですが、それ以上の分は従業員本人負担となります。

最近は暑さ対策で熱中症対策グッズの支給なども増えていますが、こういったものを直接会社で購入して従業員に使ってもらうというのも福利厚生でしょう。

関西の企業では大阪万博にかかわっている事業者もいますので、従業員向けに大阪万博のチケットを購入して渡すというのもよく見かけます。

従業員が等しく機会を与えられるように配慮しつつ、必要に応じて会社側で費用負担をしていくのがよいでしょう。

注意点

会社が負担した福利厚生費は基本的には経費計上できますが、一部制限があるものがあります。

食事補助の制限

例えば前段で触れたものだと、会社が負担した従業員の食費です。役員や従業員に支給した食事(補助)については以下のような要件を満たした場合のみ福利厚生費として計上できます。

(1) 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること

(2) 次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます)以下であること

(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。

例えば1か月あたりの食事の金額が15,000円だとすると、3,500円を超える部分については給与として課税されますので、例えば年末調整時などに給与に加算する形で処理をすることになります。(給与支給時の処理でもかまいません)

永年勤続表彰等の取り扱い

永年勤続表彰などの場合に現金や商品券の支給をする場合には給与課税になりますが、記念品の授与や旅行・観劇の招待費用については一定要件を満たせば福利厚生費として計上できます。

役員への支給に関する注意

また税務調査でよく指摘されるのが、役員のみ、役員個人を対象として福利厚生費として支出しているものです。

従業員と役員のすべてに対するものであれば福利厚生費に該当する可能性が高いですが、役員のみが対象のものは役員賞与と指摘されることは念頭に置いておきましょう。

税務調査では役員に関する支出については特に厳しく見られる傾向があるため、その点にはより注意が必要です。

まとめ

福利厚生制度を導入する際は、税務上の要件を満たすよう設計し、従業員全体の満足度向上と税務リスクの回避を両立させることが重要です。

中小企業において福利厚生費は、従業員の定着と働きやすい環境作りの重要な要素です。適切に運用することで経費計上も可能ですが、以下の点に注意が必要です。

  • 公平性の確保: 特定の個人ではなく、従業員全体に等しく機会を提供する
  • 食事補助の制限: 従業員負担が半分以上、会社負担上限は月額3,500円
  • 役員への支給: 役員のみを対象とした支給は役員賞与とみなされるリスクがある
  • 給与課税の対応: 制限を超える部分は給与として適切に処理する
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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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