長く活動している中小企業の場合、売掛金の管理がうまくいっていないケースをよく見かけます。社歴が長くなればなるほど、代替わりを重ねれば重ねるほど「昔のことはよくわからない」となりがちです。
ここでは債権管理、つまり売掛債権(売上の未収金)=売掛金の管理について説明します。定期的に売掛金の回収状況を確認し、場合によっては適切な対応が必要であることをお伝えします。
売掛金の管理が重要な理由
事業主や会社経営をしていると、営業活動→サービスや商品の提供→売上計上→代金回収というサイクルがあることはよくご理解いただけると思います。むしろ、この繰り返しによって売上を積み重ねていくわけです。
一方で、何か物を購入したりサービス提供を受けたりすると支払いが発生しますが、相手方からの請求に基づいて支払いをする、その場で現金決済するなどを行います。
中小企業の経理を見ていると、支払いに関しては問題なく管理できているケースが多いです。というのも、支払いが滞ると信用問題になりかねず、継続的な取引も困難になることが予想されるからです。
しかし、支払いの管理は細かく行っているのに、売上の回収、つまり売掛金の管理はずさんというケースを往々にして見かけます。
売上は回収してこそ意味があります。きちんと仕事をしたのであれば、しっかりと請求をして入金があったかどうかを確認すべきです。入金チェックがおろそかだと、資金繰りが立ち行かなくなるケースが出てきます。
売掛金の入金チェックプロセス
売掛金管理の基本的な流れとして、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 決まったタイミングで請求書を発行すること
- 請求書に支払期日を記載しておくこと
- 期日に入金があったかを確認すること
- 期日に入金がなければ催促をすること
社歴が長い事業者の場合、売掛金の管理をしていたとしても、回収が滞っているものがちらほらあるものです。そういったものへの対応をどうするか、貸し倒れとして処理してよいものかは、よく検討してする必要があります。
回収が困難な場合の対応
先代から会社を引き継いだけれど、売掛金の中身を確認したら10年以上前の仕事に対する売掛金で入金がない、というものが出てきたりします。
税理士が交代したタイミングでチェックをすることもありますが、そういうときに会計上は残高が残っているものの、もう連絡も取れないし、請求書を送っても返送されてくる、といったケースもあります。
売掛金の管理をしていて回収が困難なものが出てきたときに検討したいのが貸し倒れの処理です。
貸し倒れとは、いわば「もう回収できないから、その分を損失として計上する」ということを意味します。これに備えて貸倒引当金などをきちんと計上しておくことも望ましい処理ですが、そもそも売掛金の回収状況の把握ができていないと、計上していても見せかけだけになる可能性が高まります。
貸し倒れ処理のタイミングが重要
売掛金管理をこまめに行うことをお勧めするのは、貸し倒れ処理による損失計上の税務上の要件が厳しいからです。
タイミングが非常に重要になります。ざっくりお伝えすると、貸し倒れになったタイミングで計上しないと、損失計上できない可能性が高まります。
現場でよく見かけるのですが、回収可能性がなくなってから数年、十数年経ってしまったというものがあります。こういったものは、その回収ができなくなったと思われるタイミングで計上しないと、タイミングを逸してしまって税務上の損失計上が困難になります。
貸倒損失の計上が問題になるのは、税務調査時においてです。
税理士とよく相談のうえで損失計上するのか、それとも会計帳簿をきれいにできるなら損失計上はしなくてもよいと考えるのであれば、貸倒損失の自己否認(税務申告上、貸倒がなかったものとして税金計算をする)ということも選択肢になります。
まとめ
売掛金管理は単なる事務作業ではありません。会社の資金繰りや信用力に直結する重要な業務として、経営者自身が関心を持って取り組むことが大切です。
特に社歴の長い企業や事業承継を行った企業では、過去の売掛金についても定期的に見直しを行い、適切な処理を心がけましょう。
中小企業における売掛金管理は、健全な経営を維持するために欠かせない要素です。以下のポイントを押さえて、適切な売掛金管理を行いましょう。
売掛金管理の重要ポイント
- 定期的な入金確認: 請求書発行から入金確認まで一連の流れを確立する
- 早期の催促: 支払期日を過ぎたら速やかに催促を行う
- 回収困難案件の早期判断: 長期間放置せず、適切なタイミングで対応を検討する
- 税務上の注意点: 貸し倒れ処理のタイミングは税務要件を満たすよう慎重に判断する
- 専門家との連携: 税理士などの専門家と連携して適切な処理を行う