不動産の譲渡所得税の計算時には取得価額(買ってきたときの値段)がわかるかどうかで税金の計算が大きく変わります。取得価額の確認方法を整理しておきましょう。
取得価額不明のケース
よくご質問をいただくのが相続した不動産の価額についてはどれを使うのか?ということです。
相続のときの評価額が使えると考えるかたがとても多いのですが、相続で引き継いできた不動産についてはその不動産が最初に買われたときの価額を引き継ぎます。
おばあさんからお母さんが相続して、その相続した不動産を売却した場合は、おばあさんが買ったときの価額を引き継ぐということです。
相続税計算上の評価額はあくまで相続や贈与のときの税金計算のための評価額であって取得した価額としては使えません。
相続した不動産の取得時期がとても古く価額が分からない場合には売却の価額の5%を概算取得費として使うことができます。
とても古い土地の場合などは5%のほうが有利になるケースもあります。(貨幣価値の推移は考慮しません)
昭和10年代に1000円で購入した場合でも購入価額は1,000円です。現在の貨幣価値になおす、という処理はできません。
そのためとても古くに購入した不動産を相続して売却をした場合には税金計算上は利益部分が大きくなることが多いと考えておきましょう。
ただし取得した時期も引き継ぐため、長期に保有していたとみなして税率を適用します。(いわゆる長期一般などの税率適用が可能なケースが多い)
昭和40年代以降ぐらいに取得した不動産の価額はできれば確認しておきたいところです。
取得価額を探す
一番確実な方法としては取得当時の契約書を何としても探すということです。
出てきたらそれが一番確実ですので、まずはそれを探します。相続の場合は亡くなった方の物持ちの良さが大きく影響します。
契約書を捨ててしまうことなんかないでしょうと思うかもしれませんが意外と「取得時の契約書が見つからない」状態はあるものです。
亡くなった方が大事に保管していることが多いのですが、保管場所を忘れたり長年の生活でモノが増えて見つけられなかったり、認知症の症状が進んでしまってほかのものと廃棄していたり。
亡くなったかたに話は聞けませんので相続人が探す必要があります。
契約書がでてきても印字が薄く判読不明なケースもありますが、先日は貼付されている印紙から売買価額を推定(印紙税の金額から不動産の対価のレンジを確認し仮に下限だとしてもと価額計算)して譲渡損を確認したこともあります。
契約書があれば何とかなることが多いのでまずは探してみることです。
そのほか、売買当時の住宅ローンの契約書や登記の内容から融資金額を見つけて推定したり、契約書がなかったけれど購入時の不動産の広告チラシを見つけたり。
中古取得の場合は取引相手にアプローチするというのも方法ではあります。不動産の売買は売主、買主双方で契約書を持つのが一般的ですので相手方(要は売主)に契約書が残っていないか賭けたわけです。
実際、私は以前に担当した不動産の譲渡所得の案件で中古取得の相手方に登記情報から把握して手紙を出し契約書の写しをいただいたことがあります。
それにより譲渡損が確認できたので相続人の方からも大変感謝されましたし、中古取得の相手の方にも御礼を送りました。
売買仲介した不動産業者が契約書の写しを保管しているケースもありますので仲介業者がわかるのであればアプローチする方法もあります。
新興住宅地域であれば隣や向かいのかたと購入時期はほぼ同じはずですから、参考に契約書を拝見できないかディベロッパーの売り出し時資料なども残っていないか聞いてみるのもひとつです。
まとめ
不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する方法もありますし、路線価等から価額推定をするケースもありますが一番確かなのはやはり「取得したときの契約書がある状態」です。
もし契約書棟がどうしても見つからない場合にはその次のステップとして検討していくことになりますが、まずは探してみることからスタートしましょう。