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相続税の納税の選択肢 長いようで短い相続から申告期限まで

相続税の納税の選択肢 長いようで短い相続から申告期限まで

相続税を納める方法の選択肢はいくつかあります。メリット・デメリットありますので状況に合わせて選択肢を検討しましょう。

目次

納税の方法としては3つ

金は基本的にまとめてであろうと分割であろうと金銭による納付が原則です。むかしむかしだと年貢といってお米で納税をすることができましたが今は金銭、つまりお金で払うことが求められます。

税務署に農作物や工芸品を持っていっても怒られてしまいますね。

相続税も金銭一時納付といって、金銭による一括での納付が原則です。

ただ相続税は資産に課税されている性質から他に2つ納税の方法があります。延納と物納と呼ばれる方法です。

延納はその名の通り納税を延ばす、ということで分割による納付ができます。条件はいくつかあるのですが金銭一時納付できないぐらいしか現預金がない、ということが一番大きなポイントです。

お金があるならそれで納税してくださいということ。それを差し置いて延納することはできません。

メリットとしては支払い期間を延ばせるということですが、一方でデメリットもあります。本来納めるべき税金を待ってもらっている状態ですから利息がつくのです。

そうそう都合良くはいかないですね。

もうひとつの納税の方法が物納といって、字の通り物で納めます。なんでも良いというわけではなくて物納できる相続財産にも優先順位が決まっているのと、物納するにあたっての劣後財産といって後回しになるものがあります。

延納によっても納税することが難しい場合に検討される方法で、有名な話としては某政治家の方がなくなったときに土地で納めた、という話があります。

不動産や有価証券、国債などで納めることができますが、デメリットとしては財産を手放すことです。

先祖代々の土地を手放すことにもなりかねないですから、やはり納税資金をいかに確保しておくかは大事です。

納税資金の作り方

納税の資金の作り方もいくつか選択肢があります。

生前贈与をしていてそのお金が残っている場合は話が早くて、相続財産からではなく贈与された金銭から相続税を払えると事前にもらったものから支払うので納税の心理的負担は軽減されるでしょう。

ですので私は相続税対策のときに生前贈与をするときには相続税が払えるぐらいの金銭を第一目標にすることをお話ししたりします。

この辺りは考え方次第なのでご家族のお金の使いかたなどに合わせて決めていくのが望ましいでしょう。

死亡保険金は非課税枠がありますのでこちらを納税資金用に相続税を支払うであろう方を受取人に変更しておくことも検討しておきたいところです。

配偶者が死亡保険金の受取人になっているケースが多いのでそこを見直すだけでも納税による負担感が軽減することがあります。

死亡保険金は通常、亡くなってすぐに手続きをすれば審査を経て早急に支払われますので納税資金を確保しておける点と、分割協議を経由せずに手元に資金を確保できる点はメリットが大きいです。

死亡保険金や贈与されているものがなければ、相続財産からということになりますが換価つまり、お金に変えられるものがあればお金に変える、処分してその代金で納税をすることが選択肢になってきます。

この場合は不動産や有価証券を処分することになるのですが、売りたい価格で売りたいタイミングで売れるかというと不動産は特に難しいでしょう。

足元見られる可能性だってあるわけです。そうやって不動産を買い叩いて集めている不動産買取業者があるとかないとか。

これらの相続財産は取得時期と取得価額を引き継ぎますので譲渡所得税が多額にかかる可能性があります。損になっていたら譲渡所得税はかからないのですがそれはそれで寂しい気もします。

不動産や有価証券を換金して納税するときには「納税するために納税する」ということも起こり得ますのでその点はアタマの片隅においておきたいところです。出来れば回避したいですよね。

もしこれをするなら生前に財産整理をしてもらって納税の痛みを分かち合うこともアリなのではないでしょうか。

譲渡所得税は生前に譲渡した人が負担して、相続税は死後に相続人が負担して痛みわけとする、そういうことも選択肢になり得ます。

他に方法としては不動産があって担保がついてないのであれば担保設定して融資を受けられないか検討するのも一つです。

ただ今は延納の利率がそれほど高くないのでこの方法を取るなら延納した方が有利になることも考えられます。(相続財産に占める不動産の割合で返済年数や利率が変わります)

賃貸不動産があってその賃料が延納分に足るということであれば延納も選択肢としては有力になります。

長いようで短い、相続から申告期限まで

有価証券にしても不動産にしても分け方が決まって、それを引き継いでから売却という流れです。

また物納を選択する場合にも分け方が決まっていることが要件のひとつです。(未分割の財産については管理処分不適格財産として物納財産の対象とならないため)

分け方を決める方法としては遺言がある場合は遺言に従って分ける、遺言がない場合には遺産分割協議をして相続人のうちだれが何を相続するか話し合いで決める、大まかにこの2パターンです。

遺言の場合には相続手続きそのものもかなりスムーズですが遺産分割協議の場合には分け方を話し合いで決める過程を手続きの中にはさみます。

仮に相続財産にある有価証券を売却して納税をしよう、と考えている場合のプロセスとしては以下のような手続きの流れが想定されます。

  • 遺産分割協議により財産の分け方が決まる
  • 有価証券のある証券会社で相続人名義の口座を作る
  • 相続人名義の口座に有価証券を分割協議の内容に従って移管する
  • 移管された有価証券を売却換金する

相続人の証券口座を作ることや株式の移管は早くてもひと月ぐらいはかかると考えておきましょう。

そのあと売却するわけですから申告期限の2か月前ぐらいには分割協議が終わっておきたいところです。

税理士として税務申告に携わっていますと、法人税の申告は事業年度末から2か月(または3カ月)、個人事業主の所得税の申告は年末から3月15日まで、という期間があります。

相続税の申告は亡くなってから10カ月以内となっており、税務申告を仕事にしている立場としては長く感じますが、家族を亡くされたご家族にとっては短く感じることが多いと聞きます。

一周忌が終わるまでに相続税の申告を済ませて納税をすることになりますし、遺品の整理や葬儀法要とは別に申告のために揃えていただく資料もあります。

それと同時並行で遺産分割のことも考えていくことになると確かにあっという間に感じるでしょう。

そこに納税の問題が重なってくるとそれだけでも精神的な負荷が増すことが考えられます。

納税できないかもしれない、というプレッシャーは相続税の場合は特に強く感じる方が多いので相続人のためにも財産の整理、納税の道筋はつけておかれてはどうでしょうか?と相続税対策の時には提案内容に添えています。

まとめ

納税資金の選択肢についてお伝えしました。納税資金がない、足りない場合の精神的な負担や心配はかなり大きいです。

相続税が多額にかかりそうだ、という場合には納税資金の確保、どうやって納めるかも考えておくと相続人のかたも安心されるでしょう。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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