相続税申告のヒアリングシリーズで、今回は小規模宅地等の課税価格の特例に該当するか、また該当する際の注意点についてお伝えします。
相続開始直前の状況は?
相続開始直前の双方の状況によって小規模宅地の特例が適用できるかどうかが決まってきます。
双方の状況というのは亡くなった方と相続される方です。
最も優遇されているのは配偶者が亡くなった方が住んでいた居宅を相続する場合です。取得者の要件はなく、民法上の婚姻関係にある配偶者であれば適用できます。
居住用の不動産について小規模宅地の特例を適用するために必要なヒアリングは、亡くなった方の状況として生活の本拠はどこで、そしてどこで亡くなったかです。
生活の本拠というのはどこに軸足を置いて生活をしておられたか。ご自宅なのか、老人ホームなどの施設なのか。
ご自宅でもご自身の持ち家なのか、お子さんの持ち家なのか、こういったことが特例適用を検討するにあたって必要な情報です。
老人ホームだとしても、どのタイミングで老人ホーム等の施設に入居されたのか、いわゆる終身利用が可能なものなのか。
終身利用が可能な施設ですと入居に際して一時金として比較的高額な金額を納めることがあり、一定年齢に至るまでにお亡くなりになったら遺族に返還される金額がある、ということもあります。
よって、施設に入っていたという場合にはヒアリングすべき事項が増えてきます。
ご自宅で亡くなられたとしても、どなたが同居していたのかも必要な情報になります。
同居といっても状況は様々あって、同居だと思っていたら実家の近くにワンルームを借りていた、ということもあり得ます。
ご本人が同居と考えていても税務上の特例適用にあたっては同居ではない、ということも発生しますので、同居でしたと言われてもどこにどういう風な形でという実態を確認することが大切です。
相続税申告業務でヒアリングを重視するのはまさにこのギャップがないようにするためです。
「同居」というキーワードひとつでもいろいろな状況があり得ますし、「貸し付けていた」というワードでも同じです。
家族に貸していることもあるでしょうし、賃料を取っていないケースでも状況としては「貸し付けていた」となります。
賃料が発生しているかどうか、それを申告しているかどうか(不動産収入として)、貸していたという状況にも大きなギャップが出来る余地があります。
ワードだけを切り取って確認するのではなく、どういう状況であったか、という一歩踏み込んだ対応が相続税申告が適切なものになるか、特例適用が適切かどうかの要です。
小規模宅地に該当する場合の注意点
相続税申告にあたってのヒアリングをしていると、小規模宅地の特例が適用できるかもしれない、と判断したとします。
確定までは各種資料なども必要ですので適用できるかどうかの判断を慎重に行いますのでその場では適用できるかもしれない、ということをお伝えします。
となると注意点があって、それは相続税の申告期限までは売却しないように、ということです。
配偶者が特例居住用宅地等(つまり亡くなったかたが住んでいた不動産)を取得する場合を除き、小規模宅地の特例には所有継続要件があります。
申告期限まではその対象となる不動産を所有してくださいというものです。
よくある勘違いとしては申告書を出すまでと考えている方がいますが、申告期限と申告書を提出した日は異なります。
申告期限まで所有を継続することで小規模宅地の特例が受けられますのでそれまでに売却してしまうと特例の適用が受けられなくなります。
この点を説明していないと小規模宅地の特例が受けられなくなって相続税が高くなり、損害を与えてしまうことになりかねません。
所有継続、居住継続、事業継続と特例を受ける宅地の種類によって要件があります(複数のものもあります)。
小規模宅地の特例の適用宅地の種類に応じて案内を忘れないように留意しています。
まとめ
身内に不動産屋さんがいる場合などは所有継続要件を知らずに売却を勧めてきたりするケースもあるので特に注意が必要です。
特例が受けられなくなると理解していて申告期限までに売却するのであればよいですが、小規模宅地の特例は相続税額への影響が大きいです。
この辺りはヒアリングの際に念を押して確認し説明しておきましょう。