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税制改正大綱の相続と贈与の一体化を目指す、とは

一体化

こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

毎年年末ごろに税制改正大綱という税金の法律について改正をする内容が公表されます。その中に今後の傾向、課題のような文言が入ることがあるのですが、昨年の税制改正大綱の中の文言が注目されています。

「相続税・贈与税のあり方」と題された部分において今後の検討課題が示されていますので今日はそこを少し解きほぐしてみます。

 

目次

相続税・贈与税のあり方

まずはどういうことが税制改正大綱にかかれているか見てみましょう。

少し長いですがそのまま抜粋します。

(3)相続税・贈与税のあり方

① 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、孫等が受贈者である場合に贈与者死亡時の残高に係る相続税額の2割加算が適用されないこと等が節税的な利用につながっているとの指摘を踏まえ、格差の固定化の防止等の観点から所要の見直しを行った上で、適用期限を2年延長する。

なお、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、贈与の多くが扶養義務者による生活費等の都度の贈与や基礎控除の適用により課税対象とならない水準にあること、利用件数が極めて少ないこと等を踏まえ、次の適用期限の到来時に、制度の廃止も含め、改めて検討する。

② 資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討

高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。

高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。

わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。

諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。

今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。

という内容になっていますが少し固い表現になっていますので解きほぐします。

 

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し

教育資金一括贈与、結婚子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置という特例があります。

 

ザックリとした説明ですが教育資金の一括贈与は子や孫がいる場合に1,500万円まで教育資金という使途に限って贈与税を非課税とする制度です。

 

結婚子育て資金も同様の考え方で、1,000万円まで結婚・子育ての資金に限って贈与税を非課税とする特例措置です。

 

いずれも通常の贈与をすると課税されるところが要件を満たした贈与を行った場合には贈与税が課税されないことから、相続財産からの切り離し効果があるとされています。

 

特に教育資金贈与についてはその効果が強く、簡単に言うと23歳未満または在学中のお孫さんが複数いらっしゃる場合には1,500万円×お孫さんの人数分が相続財産から切り離せます。

 

相続財産から切り離すというのは相続税の課税対象外になるという意味合いがあり、節税効果により格差が固定化しているという指摘があります。

 

そのため以前から期限を区切った特例ではありますが今回2年延長されて、令和5年3月31日を期限とするけれど今後は見直しますよ、というのが上記の①の内容です。

 

結婚・子育て資金の一括贈与はその利用がかなり低調ですので今後は廃止の方向になることが予想されます。

 

教育資金の一括贈与も創設当初より制限や要件が増えていますがそれでも切り離し効果は高いのでその点において見直しがなされるとのことです。ひょっとするとこちらも廃止になるかもしれません。

 

資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討

近年、高齢が進んでいる状況において、亡くなる方また財産を引き継ぐ方の年齢が双方ともに上がってきています。

 

100歳近くでなくなる方の相続人が70歳代ということも珍しくありません。

より若年層に資産の移転が進んでいないのではないかということを一番最初の段落で指摘しています。

 

資産をより若年層に移転し経済を活性化(高齢者の保有資産が依然として高く、若年層=おカネをよく使う層に移転して使ってもらおうという趣旨)を目指したいというのがアチラ側の主張です。

 

資産を早めに動かせるような税金の制度の構築が課題となっている、というのが第二段落の内容です。

 

相続税と贈与税は補完する立場にあるとよく説明がなされるのですが、お互いを補い合うようになっています。

 

その点から贈与税は高い税率が設定されているのですが、一方で生前贈与については亡くなる前3年間についてのみ相続財産に足し戻して相続税を計算する生前贈与加算の規程があり、その制度により特に富裕層の税負担が回避されている、というのが第三段落です。

 

確かに相続税対策においては早く贈与を始めるのが良いとされていて、3年以内の生前贈与加算から外れる範囲が広くなれば広くなるほど前述のように相続財産からの切り離しが可能となります。

 

その点について富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界があると指摘しています。

 

諸外国では相続税や贈与税の一体的な制度設計により意図的な税負担の回避が防止されているというのが第四段落です。

 

そして最後の段落において、「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」という文言が記載されています。

 

ここの部分をもって相続税、贈与税に近々大きな改正が入るのではないか、という見方がなされているというわけです。はたしてどういう風な動きになりそうでしょうか。

 

どんな動きになりそうか

資産税や租税法を専門としている方は生涯にわたる精算課税になるのでは、ということを予想として述べておられる方が多い印象です。

 

現行においても相続時精算課税制度という贈与の一形態があります。

 

読んで字のごとくなのですが選択したそのときから亡くなるまでの贈与について相続においてすべて足し戻して計算し精算する、相続時において精算する贈与です。

 

この相続時精算課税贈与は一度選択すると解除ができないという点などからあまりおすすめできないのですが、すべての贈与が精算課税と同様の制度になれば「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税」できるということです。

 

「一体として課税をする」の文言を実現しようとおもうと暦年贈与がすべて相続時精算課税贈与になれば可能だと思いますが実務的にはどうでしょうか。

 

生まれてから亡くなるまでの贈与を実務的に補足できるかと言われるとかなりハードルが高いと考えています。

 

そうではなくても名義預金の問題が相続税の税務調査時には顕在化していますが、贈与があったかなかったかを証明、判断するというのはかなり難しいことがあります。

 

実務的にどうか、というラインで考えると生前贈与加算の期間が3年間から伸びて例えば10年になる、というのはどうでしょうか?

 

よく資産税の現場で言われるのが暦年贈与するなら3年以内の生前贈与加算から外れるようにしたい、ということなのですがそれはやはり効果が高いからです。

 

ここの部分が問題になっているということであれば年数を伸ばすのが一体課税について効果が出やすく実現しやすいように個人的には考えています。

 

まとめ

どのような方向性になるかはまだ分からないのですが、相続税と贈与税を一体的に捉えて課税する方向で見直しをすると大綱には書かれていますので何かしらの動きがあると考えられます。

 

保険にまつわる税務上の取り扱いが変わったりと何かと動きがありますが、本質に戻ってどのような対策をしていくかがより重要性を増してきます。

今後も情報が出てきましたら解説していきます。

 

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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