相続

相続時精算課税贈与の概要と使いどころ

こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。

先日、税制改正大綱についてのこちらの記事で相続時精算課税制度について少しだけ触れました。

税制改正大綱の相続と贈与の一体化を目指す、とは

 

今日はその相続時精算課税について解説し、利用のしどころがあるかどうかを考えてみましょう。

 

相続時精算課税による贈与とは

相続時精算課税による贈与について概要をお伝えします。贈与の一形態ですが、相続時に精算をするという点が大きく異なります。通常の贈与との違いを軸に解説をします。

 

通常の贈与であれば相続・遺贈で財産を取得した人が相続開始から3年以内に受けた贈与については生前贈与加算をして相続財産に足し戻して計算をします。その3年以内の贈与について贈与税を支払っていれば贈与税額控除を受けて相続税から差し引くことができます。

 

相続時精算課税は選択届出を出したその時点の贈与からすべての贈与を相続時において足し戻して計算をします。

 

足し戻しの期間が違うのがまず一つ目の通常の贈与との違いです。

 

相続精算課税制度は届け出をするのですが贈与する人(贈与者)と贈与される人(受贈者)の制限があります。

 

通常の贈与の場合には誰でもがどなたにでも贈与することができますが、贈与者、受贈者に制限があります。

 

相続時精算課税による贈与についてはその贈与をした年の1月1日時点において贈与者は60歳以上である者、受贈者しゃ贈与者の推定相続人である子や孫で、贈与を受けた年の1月1日時点において20歳以上(令和4年1月1日以後の当該贈与については18歳以上 (成人年齢引き下げに伴う変更点))である者、という要件があります。

 

贈与者、受贈者の制限があるのが二つ目の違いです。

 

届出が必要と触れましたが相続時精算課税制度を選ぶ際には所轄の税務署に受贈者が贈与者ごとに「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

 

なおかつこの届出書は撤回することができません。途中で精算課税制度をやめたくなってもやめられないということです。

 

通常の贈与はいつでもできますし制度を選択する、撤回などがないです。これは大きな違いの3つ目。

 

贈与税額の計算も通常の贈与とは異なります。

相続時精算課税制度を選択した場合には特別控除額は2,500万円となり、贈与があればそこから減っていくことになります。2,500万円の枠があってそれを超えると贈与税がかかり始めるというイメージです。

 

トータルの贈与財産の合計額が2,500万円を超えると超えた部分について一律20%の贈与税率を乗じて贈与税額を計算します。

 

例えば年間1,000万円ずつ精算課税贈与をした場合を考えてみますと

1年目:1,000万円-1,000万円=0

(2,500万円>1,000万円 ∴1,000万円)

2年目:1,000万円-1,000万円=0

(2,500万円-1,000万円=1,500万円>1,000万円 ∴1,000万円)

3年目:(1,000万円-500万円)×20%=100万円

(1,500万円-1,000万円=500万円<1,000万円 ∴500万円)

4年目:(1,000万円-0万円)×20%=200万円

 

という計算になります。一年ごとに2,500万円の枠を使っていき、亡くなったらその時点で特別控除もなくなります。

 

通常の贈与ですと基礎控除は110万円で毎年一定です。贈与税の計算の仕方が異なるというのが違いの4つ目です。

 

通常の贈与と相続時精算課税制度との違いで大きな部分をピックアップしてみました。相続時精算課税贈与の概要をまとめると

・相続財産への足し戻しの期間が選択届出後から亡くなるまで
・60歳以上から20歳以上(令和4年から18歳以上)への子や孫
・選択には届出が必要で撤回できない
・贈与税の計算方法が異なる

となります。

 

利用のしどころ

注意点が多い相続時精算課税制度ですので利用は低調です。

 

令和元年分のデータではありますが国税庁から公表されている課税状況によるといわゆる暦年贈与(通常の贈与)の申告人員は44万6千人。対して相続時精算課税贈与の申告人員は4万2千人となっています。

 

10倍の申告人員の開きがありますので制度がとても活用されているとは言えない状況です。

 

理由として考えられるのがやはり途中で撤回できないこと、またメリットを感じられる人が少ないのではないかなと。

 

では利用のしどころはどういったところか最後に考えてみましょう。

贈与税率が20%で固定されるとともに、相続税計算上の足し戻しの際にはその贈与をした時点の価額を用いることができる、というのがポイントです。

 

財産額に対して贈与税率は相続税率よりも高く設定されています。

相続時精算課税制度による贈与は税率20%で財産を動かせるわけですので、相続税率が単純に20%を超えている人でないと税率の差を利用することができません。

 

仮に配偶者と子がひとりの場合には法定相続人が2人、相続税の基礎控除が4,200万円だとして相続税率が20%を超えるにはどのくらいの相続財産が必要か逆算してみましょう。

 

以下は細かい計算になりますので苦手な方は飛ばしてください。

法定相続分に応ずる各人の取得金額に相続税率を乗じますが、レンジで言うと3,000万円超5,000万円以下だと20%です。これを超えないと税率の差を利用できないので一段階レンジを上げてみます。

5,000万円超1億円以下の各人の取得金額の場合に30%の相続税率です。ここで仮に計算をしてみますと法定相続人それぞれ1/2の法定相続割合ですので5,000万円だとしてかけることの2で1億円。

相続税の基礎控除は4,200万円ですので足すことの1憶4,200万円。キリ良く1憶5千万円だとしますと相続税は1,840万円となります。(配偶者の税額軽減は受けていない状態で)

もし配偶者の税額軽減を受けたとしたら相続税額は920万円ですので、相続税の計算上は30%でも実効税率で見ると1億5千万円の相続財産に対して920万円の相続税になる可能性があり、20%を下回っています。

 

このように相続税率との差を相続時精算課税制度で活用しようと思うとかなり高額な財産をお持ちでなければメリットは得られないと考えます。

 

もう一つのポイントとして贈与時の価額で固定されるというものがあります。

こちらは相続がいつ発生したとしても足し戻しの財産はその贈与時の価額となりますので、もし贈与したときと相続したときの価額に差異があれば有利になると考えられます。

 

簡単に言うと贈与したときよりもその後値上がりするものであれば、ということが考えられますがこれは通常の贈与においても同じです。

 

贈与税率の有利不利はありますのでその点を加味したうえでもし現預金以外の財産を相続時精算課税制度で贈与するなら値上がりしそうなものを選びたいところです。

 

ただ現時点で値上がりするものの判断ができるかというとかなり難しいと言わざるを得ません。それが分かれば誰も苦労しない話だからです。

 

まとめ

相続時精算課税制度は途中で辞められないなどいくつも注意点があり選択適用に関しては慎重な判断が必要です。

他にも相続税対策、通常の贈与はありますので選択肢のひとつではあるのですが優先順位は下がると考えられます。

冒頭で触れた税制改正大綱のなかで贈与制度について見直すと言及していますので今後の動きには注意していきましょう。

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ジンノユーイチ
京都市南区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。 相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。 フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。