こんにちは、京都の若ハゲ税理士ジンノです。
大きなモノを事業に必要なので購入しようと考えている場合には、一括で支払うのか分割(ローン含む)で払うのか悩むことがあります。
設備投資のための借入も同じで、キャッシュフローを思い浮かべてみましょう。
モノを買うときのおカネの流れ
モノを買うとき、大きなもの例えば500万円の設備を買う、ということを考えてみましょう。
手許のキャッシュが2,000万円、当期の利益が1,000万円、法人税の税率をおおまかに30%として考えます。
手許のキャッシュが2,000万円ありますから設備投資500万円は支払うことが可能です。
一括で払うのか分割・ローンで払うのか、というご相談を受けることがあるのですが、どちらで払っても本体価格が変わらないのであればローンで払う、ということも選択肢として有効です。
というのもローンで払うというのは利息分があっても手許のおカネが減らないようにするために有効だからです。
どれくらいのキャッシュが手許にあれば安全か、というご相談をいただくのですが目安としては月商の3ヶ月分あればひとまずは安全ですねとお伝えしています。
セーフティゾーンで言うと月商の6ヶ月分です。これだけあればもし売り上げが下がってしまったとしても立て直す時間が確保できます。
事業を運営するためには運転資金というものが必要で、売上の中から支払うことになりますが運転資金は売上に先行して支払うものが多いです。
手許のおカネがどれくらいあれば大丈夫だろうかというのは事業や業種、運転資金の毎月必要額にもよりますが目安として聞かれると3ヶ月から6ヶ月分あれば、という一応の目安があります。
現金一括で設備資金を買う場合には現金がどれくらい減ってしまうのか、その視点が必要です。
またキャッシュが手許にあることで安心できるというのは確かにそうで、それと同時に不測の事態があったときに時間を確保できるという効果もあります。
資金繰りを思い浮かべてみる
では上記の例で資金繰りを思い浮かべてみましょう。
手許は2,000万円、設備投資500万円、当期の利益が1,000万円、法人税率30%という想定でした。
現金一括で買うと、現金は1,500万円(=2,000万円-500万円)となりますが、当期の利益への影響として500万円を計上できるかと言うと税務上はそうはなりません。
会計上の利益計算と税務上の利益計算は違いますので会計上においては500万円を減価償却費として計上できますが税務上は減価償却期間が決まっていますのでその期間と償却方法に応じて経費として計上することになります。
ここでは計算を単純化するために会計上の減価償却費を税法上の減価償却費と同じ金額計上すると仮定します。
仮に5年、定額法での償却であれば一年間フルに稼働したとしても500万円×1/5=100万円。事業年度の半分の期間を使用できたとしたら100万円×6/12=50万円です。
500万円払っているけれど今期の経費として計上する金額は50万円となります。
資金繰りをここで整理しますと一括で支払った場合は
手許のおカネ:1,500万円(=2,000万円-500万円)
当期の利益:950万円(=1,000万円-50万円)
法人税:285万円(=950万円×30%)
1,500万円の手元のおカネから285万円の法人税を払うという資金繰り計算となりました。
では500万円の借入・ローンを組んで支払をする場合はどうなるでしょうか。利率が仮に5%、5年均等返済とします。事業に使った期間は6か月だとすると
手許のおカネ:1,937.5万円(=2,000万円-500万円×6/60-500万円×5%×6/12(単純計算))
当期の利益:937.5万円(=1,000万円-50万円(減価償却費)-12.5万円(利息))
法人税:281.25万円(=937.5万円×30%)
となり手許のおカネ1,937.5万円から281.25万円の法人税を払うという資金繰り計算となります。
どっちがより安心とおもうかはそれぞれにはなるのですが設備投資など大きなおカネが動くときには資金繰りを確認してみることをオススメしています。
おカネが出ていくタイミングと経費になるタイミングが違う
特に今回は設備投資の資金繰りについてみてみましたが、最も重要なのはおカネが出ていくタイミングと経費になるタイミングが違う、ということです。
500万円の設備投資をしたのに今期の税金が全然少なくなってない!みたいな話はよく耳にしますが、タイミングがずれているので当然と言えば当然です。
大きな支出がある場合には減価償却のシステムが付いて回ってきます。
おカネが出ていくタイミングと経費になるタイミングが違うことで資金繰りに大きく影響します。
その部分とは少し距離を置いてその設備投資でいくらの収益が見込めるのかも確認すべきことです。
資金繰り、投資金額の回収可能性、減価償却の特例が使えないかなど設備投資をする際にはいろんなことを考慮する必要があります。
まとめ
減価償却という計算のシステムには色んな特例があります。
そういったものを上手に活用することも必要ですが、おカネの流れ、資金繰りを日ごろから確認しておくことも事業運営においてはとても重要です。
おカネがないと次の一手を打つことすら困難になります。