京都の税理士ジンノです。
相続税の申告書を作成する際には預金口座の移動状況を確認します。なぜ確認するかというと、おカネの流れを整理しておくことで万が一税務調査があっても対応しやすいからです。
また、財産の計上漏れチェック、贈与の確認など必要に応じて行う必要があります。預金の履歴調査のやり方と注意点をお伝えします。
預金の履歴をどんな風にチェックするするか
亡くなった方の預金についてはその流れをチェックしておくことが大切です。
古いお通帳が残されていれば一旦お預かりしますし、なければ金融機関から履歴を取り寄せて確認をします。
主な目的としては
- おカネの流れを把握して不明な出金等がないか確認する
- 贈与の有無を確認する
- 財産の計上漏れ(直前出金)や債務計上を確認する
この3つがメインになってきます。
相続税の申告書を提出した後には税務署内で同様に亡くなった方はもとより、相続人や親族の預金の動きについてもチェックされていますので、同じことをしていると言えば同じです。
事前に状況を把握しておくというのはとても大切で、何か不明なことが確認しておけます。
相続税の税務調査は申告書を提出してから概ね2~3年以内に連絡が来ることが多く、その時になっていざ確認しても忘れてしまっていることがあります。
備忘の意味も込めて記憶が鮮明なうちに説明できることを整理しておく姿勢が大切です。
実際に私がお客様の資料からこのようなExcelシートを作って、おカネの流れを確認しています。
それぞれのやり方があるとは思いますが、横のおカネの流れ(口座間の振り替え、定期預金との行き来)と、縦のおカネの流れ(確認すべき支出、計上すべき収入・支出)などを色分けしています。
相続開始前後で分かりやすくするために、相続開始日で横線を引き、直前出金・直後出金などを確認しています。
金額としては私はいつも30万円以上の支出についてはチェックをしていますがこのあたりは亡くなった方のおカネの使い方を通帳を見ながら、また相続人の方に確認しながら柔軟に対応しています。
30万円未満ならOKというワケではないです。あくまで目安として、です。
期間としてはお通帳が残っていれば残っている分だけ遡って確認し、お通帳が残っていなければまずは5年分を取り寄せて確認。中身を見て追加でさらに5年を確認するようにしています。動きが全くない預金口座もありますし、そのあたりも亡くなった方の預金の履歴を実際に見ながら決めることが多いです。
注意して見るべき点
特に注意して見るべき点としては支出です。
何に使ったのか、生活費なのか贈与なのかそういうことは今の段階で整理しておくにこしたことはありません。
大きな支出金額があれば相続人の方に確認をしましょう。
以下のようにご存知のことを確認しています。
贈与じゃなかったですか?
→贈与なら生前贈与加算の対象者かどうか確認
何に使ったか聞いておられますか?
→モノとして残っていれば財産として計上すべきものか検討
家の修繕とかは聞いていますか?
→増築などの場合は計上を検討
直前出金がありますが残っていませんでしたか?
→亡くなった時点で残っていた現金は手許現金として計上
相続開始後の支出についても、相続開始前に物品を買っていたりサービスを受けているものがあれば未払金として債務計上しますのでチェックしておきます。
有価証券や投資信託を財産としてお持ちの場合には、未収配当・未収分配金がないかどうかを確認します。
上場株式の場合は配当の支払い通知が届きますのでそれをもとに確認し、証券代行部(株式を管理している)に問い合わせをします。
未収分配金の場合は、亡くなった時点の直前に分配金の支払基準日(決算日)があって、相続開始後に入金になる場合がありますので要注意です。(決済の関係で基準日から入金まで時間がかかるケースがあります)
この場合は分配金をもらう権利は発生していて、たまたまタイムラグで入金が亡くなってから後になりますので、投資信託の未収分配金として計上する必要があります。
おカネの動きを確認することがメインですが、亡くなった方の生活を想像することも心掛けています。
介護を受けていたのならばサービス利用料はどこから支払ったのか、普段よく行っていたATMや銀行はどこなのか、病院の支払いはどこからしているのか、そういうことは亡くなった方から話を聞けない分、想像しておくと流れを追いやすくなります。
まとめ
[box03 title=”本記事のまとめ”]- おカネの流れをチェックして整理しておくために移動履歴をつくる
- ヨコの動きとタテの動きをチェックする
- 支出・収入、相続開始前後で見るべき点が異なるので注意する
- 亡くなった方の生活を想像することも大切
税務署も同じことをしているであろうことを考えると事前に対策を練ったり準備をしたりするために預金の移動履歴調査はかかせません。
可能な限りで何に使ったのかを確認しておきましょう。