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上場株式の財産評価は株式数の確認を怠らない(税理士向け記事)

保有株式の数

こんにちは、京都の税理士ジンノです。

相続財産のなかに上場株式がある場合、その株式数の確認をどのように行っていますか?

証券会社の残高証明書だけで株式数を確認していると、ひょっとすると計上している株式数に漏れが生じる可能性があります。

何故そんなことが起きるのか、被相続人名義の上場株式の保有数を確認する方法を解説します。

目次

株式数の漏れが発生する原因

上場会社の株式はその発行会社が株主名簿を管理しているわけではありません。

 

上場株式の株主名簿を管理しているのは信託銀行などの証券代行部が担っています。

株式発行会社から委託を受けて、株主に関する事務を取り扱っているのが証券代行部となります。

 

2009年の株券電子化に伴い、証券保管振替機関(ほふり)に預託されなかった株式については株主の権利を保護するため、特別口座という口座が設定されてそこに保管されます。

 

特別口座においては売買が制限されており、いわゆる証券会社の証券口座への移管手続きが必要となります。(単元未満株式の買い取り請求は可能)

 

もちろん株主名簿上は特別口座の株式も、証券口座の株式も同じ取り扱いになりますが、特別口座のみで預かっている上場株式については証券口座への移管ができていない場合、証券会社の残高証明書に残高として記載されません。

 

仮に特別口座に株式が8株あって、証券口座に200株の株式がある場合。

証券会社の残高証明書上は特別口座の株式数は反映されないので、200株という形で記載されてしまい、特別口座内の8株については認識できません。

 

ということは証券会社発行の残高証明書にのみ基づいて財産評価をしてしまうと株式の漏れが生じる可能性があります。

 

株券電子化前から上場株式を保有している方の場合には特に注意が必要で、長年にわたる株式の保有(特別口座内での)により、特別口座内の株式が株式分割などに伴い株式数が証券会社の残高証明書と大きく異なることもあります。

 

2段階の確認方法

証券会社の残高証明書だけではなく、株式数を確認する方法はあります。

 

まず第一段階としては、配当通知書を確認してみましょう。

配当通知書が相続人の手元に残されている場合、その配当がある株式の発行数を把握することができます。

 

配当通知書には支払いをする配当の計算のために、一株当たりの配当金、保有株式数、源泉所得税額等が記載されています。

 

配当通知書は、株主名簿を管理し株式事務を担う証券代行部からの通知になりますので、株主名簿記載上の発行株式数が記載されることになります。

つまり、証券会社の証券口座にある株式数と証券代行部の特別口座にある株式数が合計された、株主名簿上の株式が記載されているので特別口座の株式の有無が確認できます。

 

前述の例でいうと、配当通知書には208株という記載がされています。

 

配当通知書がなく直接預金口座に配当が振り込まれている場合でも、決算短信などから配当金額を調べて、支払われた配当金から配当の対象となっている株式数を逆算することができます。

 

続いて第二段階として特別口座の株式については、残高証明書を証券代行部に依頼することができますのでより確実に株式数を把握することができます。

戸籍謄本等を準備して、証券代行部に連絡をすると相続人宛に株主名簿に記載されている株式数がわかる残高証明書を発行してもらえます。(委任状があれば代理人による請求も可能です)

 

プラスアルファで確認しておきたいこととしては未収配当金の有無と手続きの手配です。特別口座の株式数を把握する際には未収の配当金がないかも併せて確認しておきましょう。

証券代行部には未収配当金の確認をすることができます。

 

ご高齢になると配当を郵便局で現金化するのが億劫になって放置してしまったり、失念してしまったりすることも考えられ、配当の引換ができていないことがあります。

 

特別口座の株式数と併せて確認し未収の配当金があれば相続財産として計上するとともに、受領の手続きも一緒に手配しましょう。

まとめ

たかが上場株式と考えていると思わぬところで足元をすくわれることがあります。

丁寧な確認と細かい配慮がなされた相続手続き、相続税申告は依頼者の信頼向上に役立つと私は考えています。

 

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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