中小企業の場合、役員に役員報酬を払うケースや、役員の親族が役員になっているケースは往々にしてあります。
一方で、役員ではいかないけれど従業員として勤務するというケースもあり、そういった場合には「特殊関係使用人」と呼ばれます。今回は特殊関係使用人に対する給与について整理しておきます。
特殊関係使用人とは
まずは特殊関係使用人の整理からしておきましょう。
個人事業主の場合は青色申告で配偶者や親族に対して給与を支払うことができます。この場合には青色事業専従者給与と呼ばれるのですが、それの中小企業版と考えてもらっても良いでしょう。
役員の配偶者や子供、親族が役員になっているケースもあれば、従業員として勤務をするというケースもあります。
こうした役員の親族が従業員として法人に関わっている場合には特殊関係使用人と呼ばれます。
いわゆる「みなし役員」とは異なり、従業員の身分で役員としては経営に参加していないという形になりますので、みなし役員とは違うということは意識しておいた方が良いです。
特殊関係使用人に該当する場合には、通常の従業員と同じような処理で税務会計処理を行うことになります。ただし、税務調査においてはチェックされるので注意が必要です。
税務調査で指摘されがちな内容
税務調査で特殊関係使用人への給与の支払いが問題になるケースがあります。それについても整理しておきましょう。
① 勤務実態の確認
例えば、タイムカードなどで勤務実態を確認されることがあります。
これは青色事業専従者給与の支払いと同じく、仕事をしているかどうかというのは、給与を支払う前提になりますので、必ずチェックされます。
タイムカードや業務日報など、仕事の内容を証明できるものがない場合には、勤務実態の確認がさらにされる可能性があります。基本的に仕事をしていないと給与を払うことはおかしい状態です。
② 給与額の妥当性
もう一つチェックされる内容としては、給与額の妥当性です。
一般的な役員であれば、高額な役員報酬を取るに値するかどうかというのはチェックされがちですが、特殊関係使用人に対する給与も同じです。
第三者が同じ役職や仕事をしている場合でも、同じような給与を支払えるかどうかというのはポイントになります。
つまり、親族だから給与が高くなっているのではないか、もっと言えば、赤字の場合だとこの給与を払う妥当性はあるかということをチェックされるわけです。
そういった部分が否認されると、結構な税額への影響がありますので、注意が必要です。
実務上の注意点
意外と特殊関係使用人に対する給与は税務調査で意識していない部分もあるかと思いますので、もし特殊関係使用人が中小企業の中にいる場合には、勤務実態や利益操作の可能性について慎重に判断しておいた方が良いでしょう。
例えば、金額が少なく所得税もほぼかかっていないようなケースであれば、金額そのものが問題になるケースはあまりありません。
いわゆる過大給与としてチェックされる内容がないと言えます。ただし、これは勤務実態がある場合に限ります。
反対に、勤務実態が全くない場合には、そもそも仕事をしていない人に給与を払っているわけですので、そのこと自体がおかしいということになります。
これは非常勤役員などとは違い、従業員である以上は仕事が必要で、業務をしている実態が必要と言えますので、その部分が説明できないのであればかなりリスキーな処理をしていると言わざるを得ません。
このあたりは整理して対応しておいた方が望ましいでしょう。
まとめ
特殊関係使用人への給与支払いについては、以下の点に注意が必要です:
- 勤務実態の明確化: タイムカードや業務日報など、実際に仕事をしている証拠を残しておくことが重要です。
- 給与額の妥当性: 第三者と比較して妥当な給与水準であることを説明できるようにしておきましょう。親族だからという理由で高額になっていないか、慎重に検討する必要があります。
- みなし役員との違いを理解: 特殊関係使用人は従業員であり、みなし役員とは異なります。従業員である以上、労働実態が必須です。
- 税務調査への備え: 特殊関係使用人への給与は税務調査で厳しくチェックされるポイントです。事前に証拠書類を整備し、説明できる体制を整えておくことが大切です。
中小企業において親族が従業員として働くケースは珍しくありませんが、適切な処理を行うことで税務リスクを回避することができます。
