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無申告が複数年にわたり続いたときの影響

近年、税務署が無申告者に対する調査を重点的に強化している関係で、無申告に関するご相談が増えつつあります。

お尋ね文書の提出前に無申告に気がついているケースや、ご自身で無申告であるということをご相談に来られるケースもあります。

ただし無申告の場合には特に複数年続くと税務にかなり大きな影響を及ぼします。

なるべく早くご自身で申告していただくというのが望ましいと考えていますので、今回はそのあたりを少し整理してお伝えします。

目次

無申告になってしまった事情は考慮されるか

無申告の方のお話を聞くと、申告の必要性がないと思っていた、税金や会計について不知、つまり知らなかったということを主張されるケースが多いです。

こういった場合にそうした税法の不知について考慮されるかというと、基本的に争いになった時には税法の不知は本人の責任と判断されます。

つまり不知で申告をしなかったことはやむを得ない事情や正当な理由はなかったと判断されるケースが圧倒的に多いです。

無申告の状態で税務調査を受けた場合には、ご自身の責任によって知らなかったでは済まされないということになります。

こういった場合に影響としては、意図的または仮装隠蔽とみなされるケースがあり、重加算税というより重たいペナルティの税金が課されるケースが多いです。

悪質な場合には税法違反で告発され、起訴されるという可能性もあります。よく報道で見られるのが、悪質な場合の告発や起訴の状態です。

こういった状況をなるべく避けようと思うと、自主申告しておいた方が望ましいと考えられます。

少なくともご自身である程度の根拠を持って申告をしているという状況は、隠そうとしたという意図を回避できると考えられるためです。

ただしそうした無申告の状態が複数年続いていて申告をする場合には、その後の影響も大きくなる傾向です。

また税務調査が来た場合に書類の保管がない場合にはかなり厳しく対応されるケースがあります。

推計課税という方法を用いられることもあるのですが、取引先や事業者に対して反面調査が行われます。

反面調査というのは、無申告で調査対象になっている人の取引先に税務調査を派生させて取引内容を確認することです。

気にしないという方ももしかしたらいるかもしれませんが、取引というのは信用に基づくものが大きいです。

そのため、取引先に反面調査が入ると、誰に税務調査が入っているかやはり分かるものですので、今後の取引を停止するという可能性もなきにしもあらずです。

取引先がきちんと税務申告をしていなかったという状況は望ましいものではないでしょう。取引先にとっては相手方のコンプライアンス違反とも言えますので。

税金だけではなく取引先への影響も考慮すると、自主的に申告をしておいて反面調査の可能性も少なくしておいた方が望ましいです。

また書類を破棄するという行為については、基本的に隠蔽・仮装行為と認定される可能性が高いです。

そうなった時には争いになって勝つ(納税者側の主張が通る)のは相当に難しいと言われていますので、可能な限り根拠資料を揃え、資料を破棄しないようにしたいところです。

無申告の状態だと所得税や法人税のみならず消費税についても課税される可能性が高いです。

ある程度の売上があるところに調査をかける可能性が高いため、複数の税目にわたって課税処分を受けるというケースはよく見かけます。

最近はAIによって税務調査がサポートされており、国税庁の方でAIによって調査先を選定していると言われています。

ただAIについては基本的に大量のデータからいわば外れ値や傾向を探るというのが得意なので、そういった税務調査への活用はあると思います。

無申告の案件についてはどのような検索がされているかと考えますと、お尋ね文書もその一つであると考えられます。

お尋ね文書とは、申告をしていない人に対して、申告が必要ではないですかと確認する書類による簡易な接触です。

こういった簡易な接触について、それを受けて自主的に申告しない、対応せずに無視している状態が続くと、そこから税務調査に移行する可能性が高いです。

無申告→自主申告の場合の影響

無申告の状態が続いていたけれど、申告をしなければいけないことを認識して、自主的に申告する場合の影響について整理しておきます。

この場合には自主的に申告をしますので、重加算税の対象にはなりづらいと考えられています。

ただし、本税に加えて無申告加算税や延滞税は課税されますので、金額によってはかなり大きな納税が必要になるケースがあります。

例えば、個人事業主の方で申告をしていなかった場合だと、所得税はもとより住民税が課税されるケースもあります。

また、消費税についても2年前の課税売上が1,000万円を超えてくるような事業者だと、無申告の間に消費税の課税事業者になっていたという可能性があります。

こうなると、そもそも納めていなかった消費税を納める可能性があり、かなり納税金額としては高くなるケースが多いです。

また、個人事業主の場合は特に健康保険料に影響するケースがあります。

申告書を出し直しや修正申告、自主的に期限後申告をすると、その情報が市区町村役場に自動的に回るようになっています。

こうなると、元々の住民税や国民健康保険料の計算のもととなっていた所得の相違を把握できるわけですので、後から住民税や国民健康保険料が追徴になります。

所得税だけではなく、住民税や国民健康保険料、消費税への影響も考慮して、事前に納税資金などを手当てしておくのが望ましいでしょう。

また、青色申告についても2年連続で期限後申告になると取り消されるという運用がなされています。

そうなると、複数年にわたって無申告が続いていると、そもそも期限後申告どころか当初の申告もできていないわけです。

自主的に申告をする場合に青色申告が適用できるかどうかはかなり微妙な状況です。取り消されている場合には白色申告として申告する必要が出てきます。

個人事業主の場合は所得税、住民税、国民健康保険料、消費税など複数の項目にわたって影響を及ぼす可能性が高いので、無申告を避けるようにしておくのがやはり望ましいです。

それでもどうしても無申告になってしまったのであれば、なるべく早く自主的に申告をすることで、重加算税の可能性を減らしておくというのも必要な対応です。

あくまで自主的に申告をするというのが国税における大原則ですので、税務調査が来てしまってからだと遅きに失する可能性が高いです。

根拠資料がどうしても見つからないという場合でも、なるべく経費や売上について資料を集めましょう。

売上については通帳などから入金の確認をして売上金額を集計することなど、必要に応じて他の根拠資料で補強していくことというのもやっておくのをおすすめします。

一番最悪なのは書類を破棄して「自分は申告が必要ないと思っていたし、調べられるなら調べてみろ」という開き直りの態度です。

こういうことをすると税務調査官も「それならば」ということで、調査官の強い権限でもって取引先や金融機関などに情報開示をさせ、前段で触れた反面調査なども通じて課税できる根拠を揃えていくことができます。

そういった影響があるため、やはり無申告は避けた方がいいですし、無申告の状態になっているのであれば、自主的に早めに申告をするというのをお勧めします。

まとめ

無申告の状態が続くと、税務調査時に重加算税などの重いペナルティが課される可能性が高くなります。

また、取引先への反面調査により、ビジネス上の信用にも影響を及ぼす恐れがあります。

「税法を知らなかった」という理由は基本的に申告しなかったことの事情としては考慮されず、書類の破棄は隠蔽行為とみなされるため、争いになってもほぼ勝てません。

自主申告をした場合、重加算税は回避できる可能性がありますが、無申告加算税や延滞税は課税されます。

また、所得税だけでなく、住民税、国民健康保険料、消費税など複数の税目に影響が及び、納税額が高額になるケースが多いです。さらに、青色申告が取り消されるリスクもあります。

最も重要なのは、無申告を避けること、そして万が一無申告になってしまった場合は、できるだけ早く自主的に申告することです。

税務調査が来てからでは遅く、様々な不利益を被る可能性が高まります。根拠資料を揃え、適切に保管し、期限内に申告をすることが、税務リスクを最小限に抑える最善の方法です。

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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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