漫画家・同人作家の方にとって、確定申告で適用しておきたいのは平均課税です。印税や原稿料がある場合に所得税を有利に計算する特例です。
もし過去の分で5年以内の申告であれば、基本的に「更正の請求」という申告のやり直しで適用することができますので、申告のやり直しを検討したいところです。ただし、注意点もありますので少し解説しておきます。
更正の請求は、根拠資料を添えて行うのが良い
更正の請求という申告は、一度出した申告書について計算のやり直しを行うという内容です。
特に平均課税を適用して申告のやり直しをする場合には還付申告になります。還付というのは納めすぎていた税金を返還してもらうという内容です。
税務署としても計算のやり直し(更正の請求)をされると中身を確認してから行うというのが通常の流れになります。
修正申告であれば申告書を出し直して追加で納付するという形になりますので、あまり何も言われないケースが多いのですが、更正の請求はこちら側に立証責任があるため、その点が注意が必要ということです。
通常の税務調査においては、税務署側が基本的に立証責任を負いますが、更正の請求においては、納税者側が立証責任を負うと考えていただくと分かりやすいと思います。
なので、根拠になる資料を添えて申告のやり直しをするというのがまず第一です。それによって立証責任を果たすというのが、更正の請求をスムーズに行うポイントになるでしょう。
売上の計上期間のズレも一緒に修正しておく
また、更正の請求を行う場合には、他に間違っている部分がないかもチェックしておきましょう。
ご自身で申告をしている場合には、支払調書をベースに申告をしているケースを比較的よく見かけます。
なおかつ平均課税を受けていないということで、申告のやり直しをする場合には、この支払調書ベースで売上の金額を把握していたものも同時に直しておいた方が望ましいです。
どうせ直すのであれば一緒に直しておいた方が良いということと、同時に立証責任という点でも、本来の売上集計期間つまり正しい申告内容に直すということが必要ですので、売上の計上期間のズレも一緒に直しておくことをお勧めします。
実際にどういう手続きを行うか?
では、実際にどのように手続きを行うか少し確認しておきましょう。私の事務所でも顧問のご依頼をいただいて、過年度の申告書を確認すると平均課税の適用が抜けているというケースがあります。
こういった場合には申告のやり直しを検討するのですが、具体的にどういった形で行うか見ておきます。
前年・前々年の申告内容を確認する
まずは更正の請求をする(申告のやり直しをする)申告書の2年前までの申告をまずは内容の確認をします。
平均課税は適用できる金額に制限があり、前年及び前々年の変動所得(いわゆる平均課税を受ける金額)の2年分の平均を超える部分の金額しか受けることができません。
そのため、前年・前々年に変動所得がある場合には、調整計算が必要になります。
平均課税の適用を受けていなくても、その申告のやり直しをする事業年度の平均課税の申告書を作るために金額が必要になるということです。
例えば、2024年分の申告のやり直しをする場合には、2022年と2023年の申告書から平均課税の対象となる変動所得の金額を算定する必要があります。
売上の集計期間のズレを修正する
また前段でご自身で申告をしている場合には、支払調書をベースに申告をしているとお伝えしました。
この場合には売上の集計期間が1ヶ月分まるまるずれている計算になりますので、そこも同時に直す必要があります。
支払調書だと入金ベースになりますので、1月から12月までの売上と思っていても、その期間が1カ月分前にずれているというわけです。
1月に入金になるものは12月締めで12月分の売上というケースが大半ですので、その分を1月ずらして直すということになります。
つまり、2024年分の売上を直そうと思うと、2023年・2022年の集計も確認しておく必要があるということです。
立証資料を添付する
更正の請求の時には立証責任があるとお伝えしましたが、例えばFANZAやDLsiteで同人誌を販売している場合には、12月分の通知書(売上の明細)を添付しておくのが望ましいです。
「発生主義で売上がずれているので、それも一緒に修正した」という内容を添えて更正の請求を行います。
とりあえず申告のやり直しをすれば大丈夫というわけではないので、事前に準備してから行うようにしてください。
まとめ
漫画家・同人作家の方が平均課税を適用し忘れている場合、5年以内であれば更正の請求により申告のやり直しが可能です。
ただし、更正の請求には納税者側に立証責任がありますので、以下のポイントを押さえて手続きを行いましょう。
更正の請求のポイント
- 前年・前々年の申告内容を確認し、変動所得の金額を把握する
- 支払調書ベースで申告していた場合、売上の計上期間のズレも同時に修正する
- FANZAやDLsiteなどの売上明細など、根拠資料を添付して立証責任を果たす
- 他に間違っている部分がないか、事前に十分チェックしてから申告する
過去の申告で平均課税の適用が抜けていないか、一度確認されることをお勧めします
