税務調査があると調査官と意見の相違がある場合が想定されます。そういった場合に取れる対応と考え方などについてお伝えしておきます。
裁決や裁判になると分が悪いという現実
税務調査があり指摘事項があったときに、その内容について納得ができない場合にはいくつか取れる対応があります。
調査の内容が提示されて説明された後には、調査官から修正申告をするかどうかの確認があります。納得できない場合には修正申告をしないようにしましょう。
修正申告をすると調査内容について承諾したという状態になり、その後のステップを選択することができなくなるからです。
再調査の請求
そのうえで、どのように進んでいくか。まずは税務署長宛に再調査の請求をすることができます。
この再調査については請求してもしなくてもよく、その後の審査請求に進む場合でも必須ではないという手続きです。
ただし、税務調査を対応した調査官とは別の調査官が対応して再度処分の内容について検討等してくれますので、再調査の請求はやっておいたほうがチャンスは増えるとも言えます。
審査請求
再調査でも処分の内容が変わらない場合には、国税不服審判所というところに審査請求をします。
これが2つ目のステップで、納税者側と税務署側で根拠や主張などをして、審判所の審判官が審査を行います。
ここで処分内容が適切ではないと判断されると処分取り消し(納税者側の言い分が通る)になりますし、請求内容が妥当ではないと判断されると棄却(税務署側の言い分が通る)されます。
処分は一部取り消しの場合もあれば全部取り消しの場合もありますが、両方の結果を合わせても処分取り消しの割合はかなり少ない現状があります。(年度により変わりますが概ね7~10%程度)
税務訴訟
審査請求の結果にも納得できないという場合には、国を相手にした税務訴訟に進むことができます。これが3つ目のステップです。
税務訴訟は最大で3回(地裁、高裁、最高裁)の機会が得られます。
ただし、こちらも納税者側が勝訴(国が敗訴)する割合としては10%に満たない割合で推移しているという現状です。
そのため、審査請求、税務訴訟と進んでも納税者側の主張が通る可能性は低いと言わざるを得ず、分が悪いという言い方ができるでしょう。
ではどうするのがよいか
こういう状態であることを前提にすると、どうするのがよいでしょうか。
すべての税務調査官の対応を受け入れましょうということを言いたいのではなく、現場で収められるのであれば収めたほうが良いケースも多いということは考えておいたほうがよいです。
すべての課税処分が適切かというと確かにそういうわけではないのですが、現場レベル=税務署段階で終われる、納得できる内容にできないか、という意識は大事です。
役員退職金の功績倍率などを見ていると、裁決や裁判に移行すると、一般的に言われている創業者や社長の3倍という目安の倍率でさえも覆されてしまう可能性があります。
現場であれば3倍以内であれば形としては収まったのではと思う内容もあるわけで、やはり調査官も裁決や裁判を想定したときに税務署側が負けることはまず想定しないでしょう。
また、組織的な対応も税務署から国税局に対応が移るため、強固になると考えられます。
重加算税の処分について
重加算税の処分は現場の調査官が前のめりになりがちな内容ですから、そういう処分内容が想定される場合には、より調査官の言動を記録しておきましょう。(税務調査の録音録画はできませんが、手書きのメモを取ることは可能です)
こちらの主張を書面にして、調査官だけではなく統括調査官に相談するということも、必要があればやっておきたいところです。
そのうえで、現場で収められないかということを考えつつ、審査請求や裁判になったらどうなりそうか、事実認定の証拠集めなども重点的にやっておくのが望ましいです。
税理士側の対応としては、審査請求に詳しい国税OBや訴訟を担当していた訟務官経験のある税理士に相談してみるのも選択肢です。
なんでもあちらの話を飲むということではなく、落としどころを探すというのも時には必要ではないかと考えています。
まとめ
税務調査で意見の相違が生じた場合、再調査の請求、審査請求、税務訴訟という3つのステップを踏むことができます。しかし、現実として審査請求の処分取り消し割合は7~10%程度、税務訴訟での納税者側の勝訴率は10%未満という厳しい状況です。
そのため、すべてを受け入れるべきということではありませんが、現場レベルでの解決を第一に考えることが重要です。特に裁決や裁判に進むと、一般的な目安よりも厳しい判断がなされる傾向があり、組織的な対応も強固になります。
重加算税など重要な処分が想定される場合は、調査官の言動を記録し、書面での主張や統括調査官への相談を行い、証拠収集を徹底しましょう。必要に応じて国税OBや訟務官経験者への相談も検討し、合理的な落としどころを探る姿勢が大切です。
