漫画家・同人作家の法人化について、私は事務所で勧めていないスタンスをとっており、昨年の末にKindle本も出しています。
一方で法人化にもいろいろあって、事業そのものを全部法人に移すパターンと、マイクロ法人を選択するケースがあります。
マイクロ法人についても、漫画家・同人作家の方にはあまりお勧めしていないので、今回はそのあたりについて少しお伝えしておきます。
法人じゃないとできないことがあるかどうか
法人化を選択するぐらいですので、もともと利益が出ているケースの方が多いと思います。ただ、一般的な事業との違いは、法人じゃないとできないことがあまりないということです。
漫画家・同人作家の方は個人事業主で継続していく方が多く、取引先、いわば出版社などから法人格を求められるケースというのはほとんどないと思います。
その上でマイクロ法人を選択するかどうかですが、マイクロ法人は社会保険料を削減するというのが第一の目的になっているケースが多く、その点で考えると、漫画家・同人作家は社会保険料を下げるという外部的な要因がほとんどありません。
というのも、文芸美術国保と国民年金であれば、年間50万円ほどの社会保険料で済んでいるケースが多いからです。
また、マイクロ法人を選択してしまうと、決算を会社の方でも組み、個人事業主でも決算が必要ということになります。
そうなると、経理の量は2倍になるわけですし、単純に法人の方は売上をどう立てていくかということも考える必要があります。
税理士側から見ると、個人の状態のお客様の申告決算もあり、法人の申告もありますので、税理士の顧問料としては増えることが見込まれます。
時々、マイクロ法人だから自分でできると思っている方もいらっしゃるようですが、一般的な事業の方の場合でも、法人で決算を組んで申告をすると相当な分量になりますので、一般の方には難しいと思います。
結局のところ、専門家報酬は2倍近くになる可能性が高く、それを考慮すると、社会保険料を下げる目的でやっていたとしても、専門家報酬の増加と社会保険料の削減額を比較してあまり効果が見込めないケースがあると思います。
面倒さが勝ってしまう印象
法人でも個人でも事務手続きは変わらず必要です。決算・申告があり、納税がありというのは変わりません。
法人は法人でお金の管理をしなければいけません。また、個人は個人で個人事業主とプライベートのお金を分けて管理するということも必要になってくるでしょう。
そういった事務手続きの煩雑さを考えて、あまり社会保険料が下がらなかったり、専門家報酬が増えることを考慮すると、面倒さの方が勝ってしまうことが多いような印象です。
最近ではマイクロ法人だと銀行口座が開けないケースなども出てきているようですので、その点も注意が必要です。
また、どういった売上を計上していくのか、別の事業を作っていくのかというのも気にしておいた方が良いでしょう。
結局法人化したとしても、社会保険料がそれほど下がらず、手間ばかり増えたという声は本当によく聞きますので、その点は考慮に入れておいた方が良いです。
せっかく文芸美術国保という有利に使える国民健康保険があるわけですので、その制度を使って最大限手元にお金が残るようにやっていく方が良いのではないかなと思います。
マイクロ法人ではない普通の法人化についても同じことが言えますので、いずれにしても法人化を選ぶ際には慎重な判断をしていただいた方が良いと思います。
まとめ
漫画家・同人作家の方がマイクロ法人を選択する際のポイントをまとめると:
- 出版社などから法人格を求められることはほとんどない
- 文芸美術国保を利用すれば、年間50万円程度の社会保険料で済むケースが多い
- マイクロ法人にすると経理作業が2倍、専門家報酬も増加する可能性が高い
- 社会保険料の削減効果より、手間や費用の増加が上回ることが多い
- 銀行口座開設の難しさなど、実務上の障壁も増えている
文芸美術国保という有利な制度を活用できる漫画家・同人作家の方にとっては、個人事業主のままで運営する方が、手元に残るお金を最大化できるケースが多いと言えます。
マイクロ法人化を検討する際は、これらの点を踏まえて慎重に判断することをお勧めします。
