決算や税務調査において問題になることがあるのが「期ズレ」です。期ズレが発生する理由と対策について整理しておきます。
そもそも期ズレとは
まず、期ズレとはどういう状態かを改めて整理しておきましょう。
期ズレ=期間のズレだと考えてください。
企業会計においては事業年度というものが設定されています。この期間は1年のことが多いですが、1年でなくてもよいとされています。
法人であれば、その会社が定款で定めた期間になりますし、個人事業主は定款がありませんので、暦年=1月1日から12月31日となります。
企業会計のルールとして「期間対応の原則」「費用収益対応の原則」というものがあり、その期間の売上に対応する仕入れや経費を計上するという内容です。
例えば、わかりやすくするために1月1日から12月31日が事業年度の法人で考えてみましょう。
期中の、たとえば10月の売上に対する仕入れが9月である状態は、さほど問題にはなりません。あくまで決算上は一年間の売上と経費・仕入れから利益を計算するので、途中経過については問題にならないことが多いです。
では、期間対応が問題になるのはどういうシーンかというと、事業年度が切り替わるタイミング、つまり決算のタイミングです。
期間対応のズレが生じると正しい利益計算ができませんので、計上タイミングのズレ=期ズレは避けたいポイントになります。
12月に仕入れをしているものに対して、12月に売上が計上できず翌年1月に売上計上となった場合で見てみます。
- 12月:仕入れ / 12月:売上 → 両方計上できていれば問題なし
- 12月:仕入れ / 翌1月:売上 → 仕入れに対応する売上が翌年なので期間対応にズレが生じる
そのため、12月に仕入れたものについては棚卸資産として計上して繰り越し、翌年1月に計上した売上と期間を合わせる必要が出てくるわけです。
特に製造業やモノをやり取りする小売り・卸売りの業種だと、棚卸資産に関する期ズレが生じる可能性が高まります。
期ズレが問題になる理由
期ズレが問題になるのは、正しい利益計算ができていない状態になるからです。
前段の例で利益を確認してみましょう。
- 12月:仕入れ50 / 12月:売上100 → 利益計算は単純に50
- 12月:仕入れ50 / 12月:売上0 / 翌1月:売上100 → 12月の仕入れは売上とタイミングがズレているため、このままだと利益計算は△50になる
本来は売上と同じタイミングで計上する必要がありますので、12月の仕入れ50を棚卸資産に振り替えて、仕入れとしてではなく商品・原材料などとして計上します。
- 12月:仕入れ50→棚卸資産50に振り替え / 12月:売上0→利益計算ゼロ
- 翌1月:棚卸資産→仕入れ50に振り替え / 売上100 → 利益計算50
税金は利益に対して税率を乗じて計算しますので、利益計算そのものに違いがあると、当然に税金計算も間違っている可能性が出てきます。
期ズレが生じてしまうと利益計算に影響するので、税務調査でも問題になるわけです。
ただし、税務調査で仮に棚卸資産の計上金額に期ズレが生じていたとして過去の年度の修正申告をしても、今現在の事業年度でそのズレが解消することになります(ここは少しややこしいので、そういうものなんだという認識で大丈夫です)。
税務調査では、特にこの期ズレについては確認される項目のひとつになっていますので、できれば指摘事項にならないように対策して減らしておきたいところです。
期ズレへの対策
期ズレへの対策は、ある意味でとてもシンプルです。
通常通りの決算整理で確認する事項が主な内容になっていますので、例えば期末の処理と同じく、帳票書類できちんと棚卸資産の対象になるものを把握するのが対策になります。
税務調査でよく見られる形なのが、事業年度末あたりの請求書関係をひとつずつ確認していき、その支払いや仕入れ明細と紐づく売上がどれか、というのを確認する流れです。
例えば12月15日の仕入れ明細を見て、その仕入れに対応する売上を確認するというのが、シンプルかつ効果的な対応になります。
ほかにも事業年度末で実地棚卸しをして、帳簿上の棚卸資産と差異がないかを確認したり、仕入れ計上しているけれども実際の商品などが輸送中のものがないか、というのも期ズレの原因になりますので確認しておくのが望ましいです。
架空の仕入れや棚卸資産の計上は問題になりますが、期間対応のズレであれば前段で触れたようにどこかのタイミングでそのズレが解消されることになりますので、規模が大きい場合などは、どこまで確認するかなども税理士と打ち合わせしておくのがよいでしょう。
決算整理事項には未収や未払、前受・前払など期間対応を合わせるための処理がたくさんありますので、項目ごとに確認しながらズレが生じないようにチェックしていきましょう。
まとめ
期ズレは、売上と仕入れの計上タイミングが事業年度をまたいでズレてしまうことで、正しい利益計算ができなくなる状態を指します。特に決算時には、棚卸資産の適切な計上によって期間対応の原則を守ることが重要です。
税務調査でも重点的にチェックされる項目ですので、決算時には期末前後の請求書や仕入れ明細を丁寧に確認し、実地棚卸しとの照合を行うなど、基本的な決算整理を確実に実施することが最善の対策となります。