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事業承継の会長ポジションの活用と注意点

事業承継の会長ポジションの活用と注意点

中小企業の事業承継をサポートしていると、現社長から後継者へのバトンタッチの際に「現社長はスパッと退かなければいけない」と考えているケースをよく見聞きします。

確かに完全に退任して会社に一切関わらないという社長もいらっしゃいますが、会長ポジションで残るという選択肢もあります。今回は会長職として残る場合のメリット・デメリット、そして税務上の注意点について詳しく解説いたします。

目次

会長ポジションのメリット・デメリット

メリット:後継者へのサポートが可能

会長職の最大のメリットは、後継者のサポートを継続できることです。ただし、ここで重要なのは「サポート」であり、より具体的には「見守り」に近い状態を保つことです。

後継者の立場で考えると、いつまでも会長(先代)が会社に残っていると「自分が信頼されていないのではないか」と感じるのも無理はありません。基本的には、後継者側からサポートを依頼された際に対応する程度の関わり方が理想的です。

後継者によって自信がある場合とない場合があり、また引き継ぎ期間ですべてを伝えきれるわけでもありません。必要に応じてサポートできる体制を整えておくという選択肢があることは、覚えておいて損はないでしょう。

デメリット:自立の妨げになるリスク

一方、デメリットとしては、いつまでも会社に残ることで後継者や従業員の自立が遅れる、または阻害される可能性があることです。

特に一代で会社を興し、最前線で引っ張ってきた社長によく見られるのですが、会長職に就いても今までと同じように仕事をしてしまうケースがあります。これでは事業承継として良い状態とは言えません。

後継者や従業員にとって適切なバランスで関われるよう、一歩、二歩引いて見守る姿勢を保つことが重要です。あれこれと口を出したくなる気持ちもあるでしょうが、後継者の成長の機会と捉え、質問された際に答える程度の関わり方をお勧めします。

社長を交代して会長になったら、勤務日数なども自主的に制限することも検討してください。会社に行ってしまうと、やはり様々なことが目に入り、つい口を出したくなってしまうものです。

会長職で残る場合の税務上の注意点

会長職で会社に関わる場合、税務上の注意点がいくつかありますので、詳しく説明いたします。

役員退職金支給時の注意点

社長を退任し、その時点で退職金を会社から支給される場合、会社の役員として重要な事項の決定に関与しないことが重要です。

税務上、「退職したから退職金の支給がある」というのが前提となっており、会社の重要事項に関与している場合、税務署から「実際には退職していないのではないか」という指摘を受ける可能性があります。

これは税務調査において役員退職金や役員報酬について重点的にチェックされる際によく問題となる内容です。

役員報酬の取り扱い

同様に、役員報酬についても注意が必要です。退職金を支給して会長職に就いた場合、役員報酬が支払われているのであれば「退職していないのではないか」という指摘を受ける要因となりかねません。

大幅に減額するか、ゼロ円にするなど慎重に検討することをお勧めします。

税務調査への対策

役員退職金関係は税務調査で指摘事項となり修正対象になると、税額への影響が非常に大きくなる可能性があります。社長から会長への移行時に退職金を支給する場合には、税務上のリスクについて顧問税理士とよく相談し、慎重に検討してください。

まとめ

事業承継における会長ポジションの活用は、適切に行えば後継者のサポートという重要な役割を果たすことができます。しかし、以下の点を十分に理解した上で検討することが重要です。

事業承継は企業の将来を左右する重要な局面です。会長ポジションの活用を検討される際は、これらの点を踏まえ、後継者の成長と会社の発展を第一に考えた判断をされることをお勧めいたします。

活用のポイント

  • 後継者の「サポート」に徹し、見守りの姿勢を保つ
  • 後継者から求められた際にアドバイスする程度の関わり方を心がける
  • 勤務日数を制限し、適度な距離を保つ

税務上の注意点

  • 退職金支給時は会社の重要事項の決定に関与しない
  • 役員報酬の大幅減額またはゼロ円への変更を検討する
  • 税務調査でのリスクを念頭に、顧問税理士との十分な相談が必要
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この記事を書いた人

京都市下京区で税理士をやっています、ジンノユーイチ(神野裕一)です。
相続や事業のお困りごとを丁寧に伺い、解決するサポートをしています。
フットワーク軽く、誠実に明るく元気に対応いたします。

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